28話 お兄ちゃん⑥
その翌日も、たむとデイビッドは私の部屋にに並んで昼寝をしています。
たむは変わらずフードを着たまま綿毛クッションに埋まっていて、デイビッドはウチワサボテンに座っています。
あ、よく見るとサボテンが半分ぐらいになっています。着々と食べ進めているようですね……。
トゲや皮のゴミを見ないのですが、トゲごと丸かじりしているのでしょうか……。
寝ているデイビッドにちょっちゃんがずりずりと近づいています。
何をするのかと思っていたら、眉毛を触っています。
やっぱり気になりますよねぇ、あの眉毛。
ちょっちゃんは触ってみても納得がいかないのか、首を傾げては眉毛を触っています。
「ちょっちゃん、あんまりやると起きちゃうよ」
「うん」
「お母さんは眉毛の触りすぎで、デイビッドに避けられてるよ」
「それは別にいいの」
「いいんだ……」
よくわかりませんが気が済んだのか、ちょっちゃんが定位置に戻るとデイビッドがパチリと目を覚ましました。
「ミサキ、明日には帰ろうと思う」
「あ、そうなの。突然だね」
「うむ、そろそろメアリーが寂しがっていると思う」
「へぇ……」
それからデイビッドはたむを起こして同じことを言っていました。
たむはクッションに埋まったままふごふご言っているので、イライラしたまる犬に体当たりされてクッションから転げ落ちています。
「お兄ちゃん、もう帰っちゃうんでしゅか?」
「そうだ」
「もっといましょうよー」
「そうはいかない」
「ミサキちゃん、お兄ちゃんもここで暮らしてもいいでしゅよね?」
「いいか悪いかと言われると悪いとは言えないから必然的にいいってことになるんだろうけどいいとも言ってないから勝手に住まれたと言う状況になってなし崩しに同居することになるんじゃないかと予想します」
「なにを言ってるのかわからないでしゅ!!」
うん、わざとだよ。
「たむ、お兄ちゃんはアメリカでメアリーさんと暮らしてるんだから、帰ってこないと心配しちゃうよ」
「そうでしゅか……」
「また来る」
「はい……」
たむはとっても寂しそうで、その後はずっとデイビッドにくっついていました。
翌日、綺麗になったボロマントとテンガロンハットを身につけたデイビッドは、窓から外の様子を窺っています。今日も風が強く、窓がガタガタいっています。
残ったチリビーンズや、念の為買い足しておいたチリビーンズをたくさんマントに収納してあります。アメリカに着くまでの食料は大丈夫でしょう。
いえ、デイビッドが缶詰を開けているところを見たことがありませんね。食べられないのではないでしょうか。
「デイビッド、帰るまでの食べ物は大丈夫なの? 缶詰しか持ってないよね」
「いや、サボテンがまだあるから大丈夫だ」
「あ、そう」
サボテン……。座ってよし、食べてよしの万能アイテムですね。私はいりませんが。
「よし、そろそろだ。ミサキ、窓を開けてくれ」
「はいはい」
「お兄ちゃん、また来てくだしゃいねー」
たむはマンガのように涙を迸らせています。かわいい。
もちろんこのお別れシーンはずっと動画を撮っていますので、たむのかわいい泣き顔もバッチリ収めてあります。
「うむ。では風よ、頼んだぞー!」
そう言ってデイビッドが窓から飛び出すと、一際強い風が吹いてデイビッドを空高く舞上げ、すぐに見えなくなってしまいました。
本当にあれで大丈夫なのでしょうか……。
「お兄ちゃーん!!」
それから数日は、たむがしょぼーんとして可哀想でした。かわいい。
いつも以上に私にベタベタしてくるので、夜も一緒に寝ていました。かわいい。
さらに数日経って、また葉っぱのお手紙が届き、デイビッドは無事にメアリーさんと再会できだようでした。めでたし、めでたし。
お兄ちゃんのお話はこれにて終了です!




