27話 お兄ちゃん⑤
今日はたむが母親作のフードみたいな服を着て、デイビッドに自慢しています。
デイビッドの好みではないようで、適当に聞いている温度差が愉快です。
最終的にたむはフードを着たまま綿毛クッションに埋まっていて、本体がほとんど見えない状態になっています。幸せそうですね。かわいい。
ちなみに私の両親ですが、ふたりとも問題なくデイビッドを受け入れています。私より順応性が高いぐらいです。
父はたむより男の子っぽく見えるデイビッドが妙に気に入ったようで、なぜか水鉄砲とかおもちゃの刀なんかを買ってきてはあげようとしています。
デイビッドはあまり興味がないようでうまくいっていませんが。
母は逆に、やたらと眉毛を触りすぎたせいでデイビッドに避けられています。
「ねえ、デイビッド。そのマントと帽子、洗濯したいんだけど」
本当は到着してすぐに洗うべきだったのでしょうが、混乱していて忘れていました。
「うむ、それは助かる。中身を出すから少し待ってくれ」
そう言ってデイビッドはボロマントをゴソゴソします。
すると、出るわ出るわ荷物が山のように出てきました。本当にあのマントはどんな仕組みになっているのでしょう。
「そのマントってどうやって手に入れたの?」
「むっ、これか。むむむ」
そう言ったきり黙ってしまうデイビッド。
そんなにややこしい経緯なのでしょうか。
いえ、きっと思い出せないのでしょう。だってたむのお兄ちゃんですもの。
ほら、考え込んでるのかと思いきや寝てますし。
よくわかりませんが、デイビッドにもたむ神様(仮)みたいな存在がいるのでしょう、きっと。
山のように積み上げられたチリビーンズの缶詰と、謎の白い粉や黄色い粉が入った袋と、ウチワサボテンは見ないでおきましょう。さあ、洗濯洗濯。
謎の粉なんて犯罪の匂いがするじゃないですか……。追求したくないです。
その夜、デイビッドが謎の粉が入った袋を持ってきました。
関わりたくないのに……。
「ミサキ、これも食事に使ってくれ」
「……それは食べたらハイになったり、幻覚が見えたりする粉じゃないよね」
「そんなことはないはずだ。これでトルティーヤを作ってくれ」
「トルティーヤ?」
名前は聞いたことありますが、なんでしたっけ?
調べたところ、とうもろこしの粉や小麦粉で作った薄焼きパンで、それで具材を巻いたものがタコスになるそうです。
オーブンじゃなくフライパンで焼いて作れるようですね。
「じゃあその白い粉は小麦粉で、黄色い粉はとうもろこしの粉なの?」
「…………そうだ」
謎の沈黙があったのでおそらくわかってなかったのでしょう。
適当に返事をしたのでしょう。
「メアリーはいつもこれでトルティーヤを作っていた」
名前しか知らないメアリーさんをどこまで信用するかは悩ましいですが、まあ私たちは食べなくてもいいですしね。
変な匂いや味がしたら全部デイビッドにあげましょう。




