26話 お兄ちゃん④
そんな日々が続いて次の週末になり、私はついに気になっていたことを聞いてみました。
「たむとデイビッドは、どういう意味できょうだいなの? 同じ工場で作られたってこと?」
そう言われたたむとデイビッドは揃って頭の上にでっかい「?」を浮かべています。そんなに変なこと言いましたかね……。
それからたむは、とてもかわいそうなものを見るような目で私を見てきます。
「お兄ちゃんだからきょうだいなんでしゅよ」
などと、私に言い聞かせるように言ってきます。
たむにそんな風に言われるって釈然としません。なんなら腹が立ちます。
しかも全く答えになっていません。余計に腹が立ちます。
聞くだけ無駄だと悟りました。
「デイビッドはサボテンの妖精でもやってるの?」
「いや、妖精の仕事はしていないな」
「じゃあサボテンに座ってなにしてるの?」
「宇宙の叡智とこの世の真理について思索している」
「ぶふぉっ」
「ミサキちゃん汚いでしゅ」
デイビッドがあんまりにもあんまりなことを言うので、飲みかけのお茶を吹いてしまいました。テーブルにしかかからなくてよかったです。
「お兄ちゃんは難しいことを考えていてしゅごいでしゅー」
「いや、たいしたことはない」
たむは呑気に感心していますが、それは何にもせずぼーっとしているのと同義ではないでしょうか?
なんとなく見た目からたむよりしっかりしているような気がしていましたが、そうでもないのかもしれません。
たむでさえ名前だけですが妖精の仕事をしているのに、無職なのですから。
そのメアリーという方のヒモみたいなものではありませんか?
まあペットとは飼い主に全面的に依存するものですから、普通と言えばそうなのですが。
たむとデイビッドは縁側に並んで座って、外を眺めながらぼーっとしています。
縁側の外は大して広くない庭なので、ほぼ洗濯物しか見えません。
今日もタオルが風に揺れていますが、タオルはたむの興味の外なので飛ばされても地面に落ちていても無反応でしょう。
デイビッドは相変わらずウチワサボテンに座っています。
あれは腐ってこないのでしょうか……。
腐っていてもデイビッドは気が付かなそうなので、私が注意して見ておかないといけませんね。
しかもよく見ると端っこが少し欠けています。まさか本当におやつとして食べているのでしょうか?
お腹を壊さなければなんでもいいですが……。
たむは小さい雲の塊のような、綿の塊のようなクッションに座っています。座っていますというか、半分埋まっています。
そういえば、最近よくあのクッションに座って……いえ、埋まっていますね。
口まで埋まっているので、何かを喋ってもふごふごとしか聞こえないクッション。デイビッドはふごふごに対して普通に返しているので、やはり心の耳で聞いているのでしょうか。
どうでもいいですが……。
「ふごふごふごふご」
「そうか」
「ふごふごふごふご」
「なるほど」
「ふごふごふごふご」
「うむ」
……訂正!
絶対デイビッドも意味分かってないです! 適当に相槌を打っているだけです!
なんといいますか、さすがはたむのお兄ちゃんです。




