24話 お兄ちゃん②
そして数日後。
「お兄ちゃんが来ましゅよ」
そう言ってたむは窓の近くでずっとそわそわしています。
「なんでわかるの?」
「お兄ちゃんの気配がしましゅ!」
「……………………」
そうでっか。
あんこの気配にお兄ちゃんの気配。たむは気配に敏感でございますね。
窓の近くにいるってことは、窓から来るのでしょうか?
「あっ、お兄ちゃーん!」
もう来たんですか!?
慌てて窓に駆け寄ると、ガラスの外にたむに似た物体が浮いています。近所の人に見られたくないので、急いで窓を開けて家の中に迎え入れました。
ここまで飛んでくる間に見られているだろう、ですって?
そんなこと深く考えたら負けです!!
「お兄ちゃーん」
たむは嬉しそうにくっついていって、すりすりしています。
初めて見るたむのお兄ちゃんは、サイズでいうとたむより一回りほど大きいです。
ボロ布をマントのように巻いて、テンガロンハットを被っています。
でも最大の特徴は、海苔を貼り付けたような黒くて四角い眉があることです。随分と凛々しく見えます。凛々しいというか……ぶふぉっ。
なんかこう、古いマンガに出てきそうな田舎のガキ大将みたいと言いましょうか……。
人……じゃないですが、人の顔を見て笑ってはいけないと思いつつも、ぶふぉっ。
「久しぶりだな、たむ」
「わーい、久しぶりでしゅ!」
話し方もだいぶ違います。なんというか無骨というか硬派というか。声もたむよりだいぶ低めです。
「この人がたむのお世話をしてるミサキちゃんでしゅ」
「たむの兄のデイビッドだ。よろしく頼む」
「デイビッド!?」
そういえば名前は聞いていませんでしたが、そんな名前なんですか!?
てっきり「たま」とか「たみ」とか、そんな腑抜けた名前かと思っていたのですが。
デイビッドですか、そうですか……。
いえまあ、たむって名前は私が付けたんですから、似ていなくてもおかしくはないですが。
「その名前は誰がつけたの……?」
「アメリカで世話になっているメアリーがつけてくれた名だ」
メアリー。
そして、本当にアメリカに住んでるんですね。いつからでしょうか? それに兄弟というのはどのようにして兄弟になったのでしょうか?
質問をしようとしましたが、たむと仲良く喋り出したので聞きそびれてしまいました。
まあいいです。チャンスがあったら聞きましょう。
しばらくすると、話がひと段落したのかデイビッドが私の近くにやってきました。ボロマントは脱いでテンガロンハットだけかぶっています。
「これは土産だ。食べるとなかなかだ」
そう言って渡そうとしてきたのは、サボテン……の一部です。
なんていうんでしょうか、丸くて平べったい部分が本体から伸びてる形のサボテンの、その丸をベロンと一枚。
直径がデイビッドと同じぐらいですので、かなり大きいです。後で調べたらウチワサボテンというようです。
それを食べるんですか……?
「いや、それはちょっと……」
はっきり断るのは気がひけるので、曖昧にモゴモゴ言ってしまう日本人らしい私。
「そうか、それならまたおやつにしよう」
デイビッドはあっさり言ってたむの近くに戻ると、そのサボテンを座布団のように敷いて座りました。トゲついたままですよ……。
というか、来た時にはあんな大きなサボテン持ってなかったはずなのに、どこから出したのでしょう……?
「お兄ちゃんのお尻はやっぱり強いでしゅねー」
私のモヤモヤを尻目に、たむは今日もトンチンカンです。
たむと同じようなホワホワの布地に見えるのに、ひっかからないのですかね。




