22話 がびるんるん
腸炎で寝込んだりしていて、しばらく空いてしまいました。
大体治ったので再開していきます。
「キエーーーーーーッ!!!」
ばしっ! ばしっ!
「悪霊退散でしゅー!!!!」
ばしっ! ばしっ!
見てはいけません。あれは、見てはいけないものです。
他人のふりをしておくに限ります。
「ミサキちゃんも手伝ってくだしゃい!」
「……ワタシハ、ミサキジャアリマセンヨ」
「訳のわからないことを言ってないで、手伝ってくだしゃい!」
訳がわからんのはあんただよ。
「……何を手伝うのさ。タオルを振り回せばいいの?」
「違いましゅ! あいつらを倒すんでしゅ!」
「……何にもいないけど」
「あそこにいましゅ!」
「ええっ……」
たむが手だか足だかでピッと指すのは、もふもふラグの端っこのあたり。
目をこらしても虫も何もいません。
幽霊的なものでも見えているのでしょうか……。
そう、さっきからたむは奇声をあげながら、なにもないところに向かってタオルを叩きつけているんです。
怖いですね……。
もちろん他のぬいぐるみ達は寝たふりをしていますし、私も目を合わせないようにしていたのに。
「ミサキちゃん、早くあそこにいるがびるんるんを倒すんでしゅ! 早くしないともふもふが、がびがびになってしまいましゅ!」
「は!?」
がびるんるん!?
なにそれ!?
というか、その名称は限りなくNGに近いグレーではないでしょうか!?
「なにそれ……」
「がびるんるんはもふもふをがびがびにしてしまう悪いやつなんでしゅ! だから早く倒さないと!」
「…………」
「早くしてくだしゃい!」
「もう、なんなの……」
ばしっ! ばしっ!
ヤケクソな気持ちで、たむが指すあたりに思いっきりタオルを叩きつけました。
意味不明! ばしっ!
なんなのよ! ばしっ!
「……まだいるの?」
「もういましぇん。ミサキちゃん、すごいでしゅ!」
「……そう、それはよかったね」
一瞬でどっと疲れました。
迷惑そうなちょっちゃんを抱きかかえて、ラグに寝転がります。
もう今日はなにもしたくない……。
「たむ、がびるんるんってなんなの?」
「びるんるんは、もふもふをがびがびにしてしまう悪いやつなんでしゅよ」
「どんな見た目?」
「黒くてがびがびしてましゅ」
ウイルスなんかをイラストにするときみたいな雰囲気なのでしょうか。
トゲトゲで目つきの悪い、黒とか紫のあいつ。
「そいつを倒せば、ずっともふもふなの?」
「そうでしゅね……。もふもふには最初は、もふるんるんさんがいるんでしゅよ」
「……誰それ」
「白くて丸くてもふもふなんでしゅ。もふもふじゃないと生きられないんでしゅ」
なんかまた変な新キャラが飛び出してきましたよ。
ケサランパサランみたいなものでしょうか?
もふもふじゃないと生きられないって、ずいぶんか弱そうですね。
「もふるんるんさんがちょっとずつ減ってきて、代わりにがびるんるんが増えるんでしゅ。そしたら、そのもふもふはもうダメなんでしゅ」
「ああ、なるほど。経年劣化で減るんだね」
「???」
自然保護のようにもふもふを保護しないといけないのでしょうか。
でも、触ったり使ったりしていれば段々ともふもふじゃなくなってくるのは仕方のないことでもあります。
「じゃあこのラグにはもうもふるんるんはいないんだ」
「あ、ちょっと戻ってきましたよ。もふるんるんさーん!」
たむがなにもない空間に嬉しそうに飛び込んでいきます。
「ちょっちゃんには見えてるの?」
「なにも見えないよ」
「そっか」
「待ってくだしゃいー。ここにいてくだしゃいー」
たむがその辺にいるらしき何かを追いかけ回すように、ひとりでふよふよと飛んでいます。
私は現実逃避を兼ねて、ちょっちゃんとお昼寝しようと思います。




