21話 〇〇ごっこ②
「ミサキちゃん、みかん箱をくだしゃい」
「は?」
そんなものはない、と反射的に言いかけましたが、数日前に父親がみかんを箱買いしていたのを思い出しました。
とはいえ、わざわざみかんを全部取り出すのはとても面倒です。
「そんなの、なにに使うの?」
「捨て猫ごっこをするんでしゅ!」
「は?」
「みかん箱に毛布を入れて、『拾ってください』って書いてくだしゃい!」
「は?」
「それをミサキちゃんが『かわいそうに』って拾うんでしゅ」
「えっ、私もやるの?」
「そうでしゅ。人間が拾うんでしゅ」
面倒ですね……。
断りましょうか。
「ちょっちゃんも捨て猫をしましゅ」
「は?」
ちょっちゃんはサルのぬいぐるみですよ?
まあそれを言い出すと、当然ながらたむもネコじゃなくぴよなのですが……。
「ちょっちゃん、捨て猫ごっこするの?」
「だってやらないとたむちゃんがうるさいんだもん」
「……そう」
箱からみかんを出すのは面倒ですが、断るのはもっと面倒なことになりそうですね。
仕方ないです。
「箱持ってくるから待ってて」
「はいでしゅ!」
私はみかん箱に満載されたみかんを全て取り出し、ぬいぐるみが汚れないように箱の内側に適当な紙を貼り付け、広げた蓋に「拾ってください」と書いて部屋に持って行きました。
もうクタクタです。
「ミサキちゃん、遅いでしゅ」
「うるさいな、準備が大変なんだから。ほら、捨て猫らしい毛布を箱に入れてよ」
「はいでしゅ」
たむが持ってきたのはもこもこした感じの毛布です。
それを箱に敷けばようやく準備完了です。
「さあちょっちゃん、入ってくだしゃい!」
「はいはい」
ちょっちゃんが箱の中で膝を抱えるように座ります。
困惑したような表情が捨てられている感を醸し出していて……。
「かわいい! かわいい!」
写真を撮りまくって満足しましたが、拾ってあげないといけません。
「コンナニカワイイ猫ガ、捨テラレテイルナンテ! 拾ッテアゲヨウ!」
「ちょっちゃん、にゃーって言うんでしゅ」
「……にゃー」
「かわいい!」
私がちょっちゃんを抱っこして運び、終了です。
ちょっちゃんは疲れ切った顔で寝床へ戻って行きました。
「次はたむでしゅ! さあどうぞなのでしゅ!」
「…………」
たむが意気揚々とみかん箱に入って行きましたが、まずたむは直径が40cmほどあるので箱に入れていません。上に乗っているだけです。
しかも、なぜかドヤ顔。
全然、捨て猫のかわいそうな感じがありません。
「もう1匹拾っちゃったし、この子はいいかな。バイバイ、誰かに拾ってもらうんだよ」
「なんででしゅか!?」
この後、みかんを床に積み上げていたせいで私が怒られたのでした。
たむのバカ。
今回の話のタイトルに合わせて、7話のタイトルを「ふんころがしごっこ」から「〇〇ごっこ①」へ変更しています。内容は変わっていません。