20話 たむの服
「わーい、もふもふぬくぬくでしゅ!」
「たむちゃん、よく似合ってるわ! かわいい!」
「ありがとうございましゅ!」
鏡の前で騒いでいるのは、たむと、私の母です。
ユキエ、47歳。
どことなく夢みがちと言いますか、ぽよぽよした雰囲気の人です。
せっかちな私とは相性はあまりよくないのですが、その性格のおかげでぬいぐるみが動き出したことも「まあ!」って感じで喜んでいるので、結果的には吉と出ています。
で、そんなぽわぽわした二人が何をしているのかというと、母がたむに服を作ってあげたのです。
それを鏡の前で試着して騒いでいるわけです。
「ミサキちゃん、見てくだしゃい。たむ、かわいいでしゅ!」
「うん、かわいいかわいい。よかったね」
「気持ちがこもってないでしゅ!」
今更言う必要もないでしょうが、たむの形状はホールケーキです。当然ながら人間と同じような形の服なんて、体型に合いません。
じゃあどんな服を母が作ったのかと言いますと、巨大なフードです。
もう、服というよりフードを着てると言った方がいいと思います。
毛布のような布、いえ、あれは毛布でしょう。片面がもこもこしていて、もう片面がさらっとした感じの毛布。
それで作った巨大なフードにたむがすっぽりと入っています。
下側にはてるてる坊主の胴体みたいな三角錐がちっちゃくぴろっとついていて、頭の大きさとのアンバランスさがとてもかわいい。
はい、とてもかわいいです。
ではどうして私のテンションが上がりきらないかと言いますと、私が作りたかった服なのに母に先を越されたからです!
そうです、嫉妬です! 嫉妬ですけどなにか!?
私ははっきり言って裁縫が苦手です。たむにフードみたいな服を着せたらかわいいだろうと思いつつ、縫うのが嫌すぎてずっと先送りにしてたのです。
それを裁縫の得意な母にポロッと話してしまったがために、数日後にはこの通りですよ。
私がたむと騒ぐはずだったのに……。
「ミサキも服を作って欲しくて拗ねてるの? 人間の服は難しいから……。
そうだわ! 四角く縫った布の真ん中に穴を開けてあげるわね!
ミサキはそういうのが好きでしょう?」
「は?」
我が母は何を言っているのでしょう。
四角い布の真ん中に穴を開け、それを頭から被って紐で縛れということですか!?
確かに私は歴史に関することが好きですが、別に弥生時代の貫頭衣を着たいなんて思ったことはありません!!
いったいどこからそんな発想になるのか……。
というか、なぜピンポイントでそれが出てくるのか……。
どうせなら十二単でも縫ってくれたらいいのに。
「……いらない」
「もう、いつまでも子どもみたいに拗ねてないで」
「そうでしゅよ!」
「たむに言われたくない」
「なんででしゅか!?」
「じゃあ、たむの服みたいな毛布でポンチョにしてよ。ポンチョ型の着る毛布」
「それなら作れるわね。同じ柄でお揃いにしましょう」
「ミサキちゃんとお揃いでしゅ!」
数日後、同じ柄の毛布の服にくるまった一人と一体がイチャイチャしている姿が見られるのでした。
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