15話 あんこ汁
「じーーーーーーーーーーーーーっ」
たむがじーっとこっちを見ています。
半分だけ引き戸に隠れた状態で、「じーっ」と言いながらじーっとこっちを見ています。
半分は丸見えなのですから隠れられてませんし、その引き戸だって磨りガラスがはまっているので黄色が透けて見えています。つまり丸見え。
なにをしているのでしょうか。
状況をご説明しましょう。
私は現在、台所でレトルトのぜんざいを温めています。
おやつの時間でもないですが、小腹が空いたのでちょっと間食をしようと思いまして。
それを、台所と居間を仕切る引き戸の影からたむがじーっと見ているんです。
引き戸は常に全開なのですが、ぬいぐるみたちが台所に入ってきたら汚れたり燃えたりするかもしれないので、たむ神様(仮)にお願いしたところ、台所と居間の間に見えない壁を作ってくださいました。
ですので、ぬいぐるみたちは台所に入ってくることができません。
だから、たむはじーっと見てるだけなのです。
と、状況説明が終わったところでたむに話しかけてみましょうか。
「たむ、なにしてるの?」
「あんこの気配がするので見張ってるんでしゅ」
あんこの気配……。
初めて聞く言葉ですね……。きっとたむだけの特殊能力なのでしょう。
「見張ってどうするの?」
「たむも貰うんでしゅ!」
あげませんよ。
それに、ぜんざいはあんこでしょうか?
甘く煮たあずきなので似たようなものな気はしますけども。
あったまったので、器に盛ります。これはお餅は入っていないのですが、間食なのでなしにしておきましょう。
「ミサキちゃん、そのあんこ汁をたむにもくだしゃい」
「ぶふぉっ」
あんこ汁!?
なんて美味しくなさそうな名前でしょう!
「これはあんこ汁じゃなくてぜんざいだし、あげないよ」
「くだしゃい! 粒あんこ汁をたむにもくだしゃい!」
「えぇ……」
粒あんこ汁……。
確かにあずきの粒が残っているのは粒あんみたいな感じですけど、言い方……。
あ、これが粒あんになるなら、あれは??
棚を漁って、私が引っ張り出したのは懐中しるこ。
もなかみたいなのを砕いて、お湯を注いだらおしるこが作れるものです。
急いで用意してたむに見せます。
「これは?」
「こしあんこ汁でしゅ」
「ぶふぉっ」
やっぱりそうなるんですね。
笑いが止まらなくなっている私を、たむが残念なものを見るような目で見ています。失礼な。
いやぁ、でも面白いですね。
ぜんざいは、粒あんこ汁。
おしるこは、こしあんこ汁。
ああ、しばらく思い出し笑いに気をつけないといけない気がします。
私は吹き出すのを堪えながら、ぜんざいとおしるこを完食したのでした。
たむはずっと「たむにもー! たむにもー!」と言い続けていました。かわいい。
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