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鬼人  作者: カル
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1話 失った太陽と鬼の存在

ーー鬼ーー

それは存在する。

古く語り継がれていたその存在は現代では仮想化された生き物としてではなく、あらゆる『比喩』として伝えられている。

鬼のように厳しい者。

耐え難く苦難な状況。

そして、躾に用いられる恐怖的な存在。

しかし、人々は忘れている。

鬼に捕食される対象であることを。

そしてーー。

誰しもが鬼に成り得るということを。


ーー伝承があるーー


約700万年前、地球上に発生した二足歩行の生物「人」がいた。

その生物は神に授かりし「知恵」と「集団行動」を駆使し、驚くべきほど文明を改革させてきた。

しかしそれは人が発生した600万年後に突如崩れる。

どの生物の頂点に立とうと、どの生物よりも優れようと、永遠に頂点を牛耳る生物など存在しない。

かつて隕石で全てを失った恐竜のように人類も絶滅の危機を迎えていた。

理由はひとつだけ。


ーー太陽の消滅ーー


今まで暖かった地球は極寒に変わった。

今まで日が差し込み光に満ち溢れていた地球は漆黒の世界への変貌した。

流れていた川は氷に代わり、何がどこにあるかも分からないほど漆黒に染まる世界は人々の精神を蝕む。

それが故、人類は多くの命を失った。

寒さで死ぬ者。

飢えて死ぬ者。

恐怖で死ぬ者。

しかしそんな中、漆黒だった世界に、全てを失った人に、光が差し込む、

それは暖かくないただの光。

しかし、視覚の回復は想像以上に人々の心に一過性の安堵をもたらす。

故に人々がその光の元へ移動するのは必然の事だった。

人々が光の元へたどり着くとそこには、長身の男が立っていた。

そして、その男は人々にこう訴えた。


「私は安静鬼龍。地球人の皆様を救いにやって参りました。かつての暖かな地球。温かい光が差し込む地球。そのかつての地球に戻したくはないですか?」


男のこの発言に死んだような目をしていた人々の目は狂気に満ちた。


「戻したい!」


「あの地球に戻りたい!」


与えられた希望が、救いが、この状況を打破できるものがその感情は人々に生の欲をあたえた。


人は思った。『生きたい!』


いつ死ぬかも分からない絶望。

死を覚悟した者が入り混じる感情に与えられた光は霞んだ表情を容易に掻き消す。


「私はあの温かな地球に戻す事ができます。どうか私を信じ、目を瞑っては頂けないでしょうか?」


人々は目を閉じるだけで、あの地球に戻れる!そう思い込む。そして全員が目を閉じた。

鬼龍はなにか術を唱えている。

鬼龍の詠唱が終わりに差し掛かった頃。


「うわぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」


断末魔が聞こえる。

鬼龍が人から『魂』を剥いでいく。

人から魂を剥ぐ時の痛み、憎しみはこの世の終わりをも思わせるものらしい。

次々と倒れる人。

恐怖で泣き叫ぶ人。

そして、無数の亡骸の上に立っていたのは鬼龍1人だけだった。

鬼龍が目の前に立っている。そしてニコッと笑い、頭に手を置く。

俺の魂を剥いでいく。

足の指先から頭の先まで張り裂けそうな痛み。

そして皆を、俺を騙し次々に魂を剥いでいく鬼龍への憎しみ。そして俺の魂は閉じ込められた。

その憎しみだけ身体に戻されて。

鬼龍は約束通り太陽を作った。

1億人分の魂を凝縮させた太陽を。

熱を持っている。

光も出す。

しかし暖かみのない太陽を。

そう言い伝えがありますが、あなたのおかげで私たちは楽しく生活が出来ております。

偉大なる鬼龍様。

地球を救い太陽を創造した鬼龍様。

今の生活も全ても貴方をおかげです。

地球を救ってくださりありがとうございました。


ーパタンー

「こうやってさ鬼龍様が世界を救ったって本に書いてあるけどさ、この話納得出来ねぇよな?アズサ?」


小さな角部屋の窓から差し込む太陽の光に包まれながら、少年と少女は伝承の書の前文を読んでいた。


「そんな事言ったらダメだよユウくん。今私達がこうゆう会話をしているのも鬼龍様のおかげなんだからさ」


アズサと呼ばれた少女はユウと呼ばれる少年を諭す。


「確かにそうだな…。」


「そうだよ...。」


ドンドンドンドンドンドン!!

うるさい足音がこっちに勢いよく近ずいてくる。

そして部屋のドアを勢いよく開けた。


「ユウキ!アズサちゃん!鬼よ!鬼が出たのよ!今すぐ避難よ!!」


そこに立っていたのは中年の女性。

表情は険しく、声は荒い。


「何で?ここは市の真ん中でフィルターに守られてる中だろ?なんで鬼が出んだよ!」


ユウキはそう言い返した。

そう言ったのも仕方の無いことだった。

ここはマリヤハル市。

人類が存在できる領域の中央に位置する都市だった。

100年前突如現れた『鬼』に対するため、対鬼防御機構である通称フィルターに囲まれた絶対安全領域だったからだ。


「知らないわよ!あぁ。マリヤハル市も終わりだわ。」


女は嘆いた。

その表情は先程の険しい顔とは対照的に絶望に満ち溢れている。


「アズサここで待ってろ。」


「え?ユウくん何を言ってるの?」


少年の声が、しんと静まり返った部屋に響く。

その状況にアズサは動揺を隠せなかった。


「鬼を見てくる。」


「ダメだよ危険すぎるよ!」


酷く落ち着き且つ、鋭い少年の瞳にアズサはぐっと少年の袖口を握る。


「俺は信じたくねぇ!市の真ん中に鬼なんて...絶対に鬼なんかいねぇ!」


「ユウくん行かないで!」


握った袖口はシワを強くする。

それと比例してか、少年の言葉も強くなる。


「母さんを頼む。」


「ダメ!行っちゃ嫌だよ!」


どれだけ力を入れようと、どれだけ涙を浮かべようと少年の意思は変わらなかった。

なぜ少年はここまで死に急ぐような事をするのかアズサには理解が出来ない。

この手を離してはならない。

その想いがアズサの頭の中を輪廻する。


「ごめん、やっぱり行く、鬼を確かめてくる。」


「ユウくん…。」


少年の変わらない瞳とその意思にアズサは握ってた袖口をするりと外す。


「父さんも探してくるよ」


ユウキのその言葉にアズサは何も言い返せなくなった。


「ユウくん死なないでね…。」


ひと言だけ伝えた。

他にも伝えたいことは沢山あるはず。

しかし、その言葉だけしかアズサは伝えるとこが出来なかった。


「うん。」


ユウキは人々の中鬼の元へ走り出す。

知りたくない、すぐ近くに恐怖がある事を。

知りたくない、鬼龍が作ったフィルターの中に鬼がいることを。

幾分か走った後、ユウキは信じられないのを目にした。

人の形をしたどす黒い何かを。

そして困惑する。

これが鬼?角もない、大きな爪も、牙も何も無い、いたって普通の人。

なのに何でこんなに吐き気がするほど気持ち悪いのだろう。

どうして足が動かないのだろう。

身の毛が立つほどの寒気がする。

そして理解した。

そうか...あれが鬼か。

鬼はユウキを見て襲いかかる。


ーー死ぬ。ーー


襲いかかる恐怖にユウキは死を覚悟した。


『鬼龍……!!貴様が!!貴様が憎い!!

偽物の太陽を作っただけではなく、鬼をも生み出した鬼龍!!貴様が!!憎い!!!!』


死を覚悟したユウキに聞こえたその言葉にユウキはハッと我に返る。


「がァァァァァ!」


目の前に鬼がいる。

酷く辛くそして憎悪に満ちた顔をしている。

ユウキはすぐさま臨戦態勢に入った。

格闘技は愚か、人と喧嘩さえしたことない少年が身構える。

あまりにも無謀。

しかし彼は落ち着いていた。


その刹那。

ーズシュッー

切り刻む音が聞こえる。

鬼はピタッと動きを止めた。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!憎い憎い憎い憎い!!きりゅうぅぅぅぅぅ!!」


鬼はそう叫び消滅していく。

黒いモヤが原型を無くして崩れていく。

鬼が消滅したその裏側に綺麗な白髪をたなびかせた女性兵士が立っていた。


「私は鬼狩り団に鳥に所属している兵士シリアだ。

君怪我はないか?」


シリアと名乗るその女性は先程鬼を刺し殺したであろう剣を鞘にしまい、ユウキに優しく微笑んだ。


「ハ、ハイ!ありませんです!」


あまりにも唐突な状況な上、女慣れしていないユウキに突如美女が微笑む。

ユウキが動揺するのも無理はなかった。


「フフッそうか」


シリアは優しく微笑み、ユウキに歩み寄る。

ーパンッ!ー

シリアは思いっきりユウキに平手打ちをした

「ッ...何すんだよ!!」


唐突な状況にユウキは困惑する。

叩かれた右頬がジンと熱くなるのを感じる。


「いや。怪我がないなら貴様に体裁を加えられると思ってな。」


先程の柔らかい目とは対象的に鋭い眼光、そして低くズンと重い声色は場を凍らせる。


「え...?」

「ゴタゴタ抜かすな!私は知っているぞ!貴様が自ら鬼の元へ行こうとしてた事を!命知らずも程々にしろ!我々は貴様のようなワッパまで救うほど暇ではないのだ!鬼は危険だ!今回は単体だったから良かったもののあいつらは団体で移動する事が多い。もし鬼に近づきたかったら、鬼に勝てるほど強くなってからにしろ!」


シリアはユウキにそう怒鳴るとそのまま振り返る。


「少年。貴様が行った行動は勇気でも、勇敢でもなんでもない、ただの無謀で尚且つ死に急ぐ愚行だ。もし、鬼に立ち向かいたいのであれば、貴様にその意思があるのであれば強くなれ。強くない者は全てを失う。分かったら帰れ。」


シリアはそう言葉を残しその場を去っていった。

ユウキは何も言い返せず、そのまま去って行くシリアの後ろ姿を見る。

彼女の発言に深く自分の心が揺れ動かされていたのを実感する。


「俺が、何も出来なかったら、誰も守れなかったら、大切な全てを失ってしまう…か。ありがとう、シリアさん。俺強くなります。」


誰にも聞こえない独り言は彼の意志へと変わる。

彼はまだ知らなかった。

この決断が今はまだ無邪気な少年の戯言に過ぎなかったことを。

そして、その意思はやがて彼の人生をら大きく揺らがすことになることを。


この物語は作者が中学生の授業中、うたた寝をかましながら書いていた作品です。

あまりにも痛々しい黒歴史を皆様に共有したくべく、成人し医療従事者になった今、内容を添削、修正し投稿しております。

繰り返します。

あまりにも痛々しいです(笑)

黒歴史のある方は微笑んだお顔でこの作品を手に取って頂けたらと思います。

当時一応完結はしていたみたいです。

完結まで読むと中々に良い話で期待して頂いても大丈夫かなと思います。

痛々しいですが(笑)

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