天体観測
地上からほんの少し離れた人の手による天の川に
たくさんの流れ星が流れてるのに
数多の煌めく星の木々が立ち並ぶその真ん中で
ぽつんと白い望遠鏡が置かれてる
夜空と呼べないほど
光の幕で覆われた空を
じっと独り見上げる君に
こんなにも近くで
数え切れないほどの星が輝いているのに
その望遠鏡で何を探すの
そう訊ねたら
白く綺麗に着飾った
たった一つの月の女神を、と
夜空の一点を指さした
地上には白や赤や黄色や青
様々な色の星が輝いていて
夜空の星なんて見えないと思っていたのに
確かにその「星」はそこにあって
誰よりも綺麗に輝いていた
地上から遙か先にある人の眼による天の川には
たくさんの星が流れているのに
数多の煌めく地上の星が産み出す光に隠されて
ぽつんと白い星が一つだけ輝いている
夜とは思えないほど
賑やかな声に覆われた地上で
ここだけ時が止まったように
見えるものだけがすべてじゃないって
知っているからそこで止まってた
見えないけれどそこにあるって
見えてる振りしてそこで止まってた
きらきらと輝くその光を
君の瞳の中に見つけるまでは
地上からほんの少し離れた人の手による天の川に
たくさんの流れ星が流れてるけど
数多の煌めく星の木々が立ち並ぶその向こう側に
ぽつんと白い星が一つ輝いている
こんなにも綺麗に
見失うことがないほど綺麗に輝いているのに
その望遠鏡で何を探すの
そう訊ねたら
白く綺麗に着飾った
たった一つの月の女神を、と
笑って望遠鏡を覗き込んだ
地上に輝く無数の星も
夜空を覆った光のベールも
その先に輝くあの星だって
こんなにはっきり見えているけど
あの望遠鏡の向こう側には
見えない何かがきっと映ってる
きらきらと輝く君の瞳には
きっと何かが見えてるんだろう
もしもそれに名を付けるなら
……なんてことすら必要ないほどに