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3.ボクたちの作戦

 中間テストが終わってから本番までの約二週間、この期間は朝練を行うことができるため、各々のクラスがメニューを決めて自主的に練習に取り組んでいた。


「そういえば、選抜リレーのことでちょっと相談なんだけどさ……」


 今日の朝練は貴重な選抜競技優先の日ということで、少し早めに集まっていたチームメンバーのみんなが、こちらに顔を向ける。


「何かいい作戦でもあるのか?」


 蒲田くんが、軽く準備運動をしながら答える。


「なんというか、いい作戦って言えるかは分からないけど――」


 ボクが考えた作戦は、第一チームに前を走ってもらいながら、なるべく長く三位以上をキープして、後ろの相手チームを簡単に抜かせないようにブロックし、第一チームを援護するというものだ。


 この作戦を達成するためには、序盤に順位を上げる必要があり、その方法は走る順番を変えるというものだった。


「つまりは、他チームは第二走で女子が走る所を、こっちは男子が走って順位を上げる。ということね」


「まあ、可能か不可能なら可能だな」


「たしかに。予行前までは順番を変えてもOKだからねー」


 川崎さんも蒲田くんも鶴見さんも、ボクがした提案に前向きなように見えた。それは、たとえ練習を続けたとしても、埋められない絶対的な差がある。といった想いをみんなも持っているからなのかもしれない。そうとも思えた。


「とはいえこの作戦、ブロックするのはルール的にどうなのって感じもあるし、それに今までより更に第一チーム頼みになるよね、実際やるなら向こうにも共有して連携するの?」


「普通にやっても半周以上の差で負けだからさ。ブロックというか、簡単に抜かさせない位置取りは、やり過ぎなきゃアリじゃないか? あと連携とかは……無しでいいんじゃね? A組にバレる可能性も上がるし、ここだけの秘密の作戦って感じでさ」


「まあ、正直このままやってもほぼ最下位確定だったし、何かやってみるのはアリだねー。でも走る順番はどうする? タイムが速い順?」


 この作戦、問題点は数多く存在した。川崎さんが言うスポーツマンシップ的な問題や、第一チームとの連携の問題。このあたりは蒲田くんが言うように、バレないよう秘密裏にやるのが良さそうに思えた。


 だが、鶴見さんの言う走順の問題。これは個人の頑張りといったレベルではなく、チームとしての在り方に関わるものだ。チームとして団結して競技に臨めるか、そういった部分が問われる。


「どちらにしても走る順番は問題ね。作戦に合わせるならツルちゃんの言うように、タイムが速い順がいいだろうけど……みんなそれで大丈夫?」


 あくまでも五十メートル走のタイムではあるが、並び順は第一走者から、ボク、蒲田くん、川崎さん、鶴見さんの順になる。


「俺はいいぜ。普通に負けるだけっていうのもつまらないしさ」


「ウチもアンカー任せられるならがんばるよー」


「そうね、みんながいいって言うなら、私も異論ないわ。大森くんもOK?」


 みんなそれぞれ、この選抜リレーに対して様々な想いを抱いているはずだ。それが良いものなのか、そうではないのか。ボクは、第二チームの順位については割り切っているし、だからこそ、どこまでできるか楽しみだと思っている。


 だがそれは、あくまでも個人的な想いであり、他人に強要して良いものではない。


「――もちろんOKだよ」


「よっしゃ、じゃあ早速この順でバトンパスだな」


 ボクが提案した作戦は、ボク一人で考えたものであり、それは言い換えれば、ボクのエゴをチームメンバーに押し付けるものであるとも言える。


 第二走者の蒲田くんは、周りが女子でアウェイな中、順位を上げる走りが必要になる。第三走者の川崎さんは、追い上げてくる他のチームに、悟られないような位置取りで進路を塞いで走る必要がある。第四走者の鶴見さんは、どんなに抜かされて差がつき、結果が見えたとしても、最後まで走り切ってもらう必要がある。


 それでもみんなが、この作戦を受け入れ協力してくれるのだ。だとすれば、僕は最大限の努力で答える義務があるだろう。


 当日までそれほど多くの時間は残されていない。僕はチームメンバーの想いを無駄にしないためにも、全力で選抜リレーに臨むことを心に誓った。

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