第六話
「今日は何をするんだ?」
「ふふっ、今日は凄いわよ?」
絢香はテンションが上がってる様子だ。
俺にはそれが不安でしかない……
「……どんな魔法なんだ?」
「やるのは昨日と同じで箒で飛ぶのよ」
「えっ? そうなのか? だとしたらなにが凄いんだ?」
「それはねー、お母さんが修行の為に魔法空間を作ってくれたのよ! そこでやるの」
「魔法空間!?」
さすがにそれには驚いた。もうなんでもアリだ。
「そうよ。……まぁ、昨日の失敗のせいでもあるわけだけど」
「昨日の……天井突き破って何処か行ってしまったやつか……」
「そう……魔女なんだから箒ぐらいちゃんと乗れるようにしなさいって。でも昨日みたいな失敗も困るからって魔法空間を作ってくれたの」
「そうか……でもそんな便利なのあったなら前から作ってくれてもよかったのにな」
まぁ……そんな失敗するとは思ってなかったんだろうな……これは黙っておこう。
「便利なんだけど作るの大変みたいなの。一度作ってしまえば使う時だけまた魔法をかければいいみたいなんだけど、今度は空間を維持するの大変だから長時間は使用しないでって」
「なるほど、便利だけどその分大変なんだな」
「そうね、まぁ時間も勿体無いから早く行くわよ?」
「行くのはいいがどうやって行くんだ? 俺は魔法は使えないぞ?」
「大丈夫、私と手を繋いでればいいのよ」
そう言うと絢香は右手を俺の前に出した。
手を繋ぐか……なんだか恥ずかしいな……
「どうしたのよ?」
「えっ? いやっ、なんでもない」
恥ずかしがってる場合ではないな。絢香のお母さんが空間を維持するのが大変みたいだし、ここは覚悟を決めて……
俺は絢香の手を握った。
「じゃあ行くわよ?」
「あぁ……」
頼むからここで失敗しないでくれよ……
絢香はテーブルの上に置かれた瓶に左手をかざし集中し始めた。
魔法空間ってこの瓶の中なのか?
俺はとりあえず黙ってその時を待った。
次の瞬間、目の前が光に包まれた。
俺は思わず目を閉じた。
そして目を開けるとそこは何もない広い部屋みたいな所だった。
「ここが魔法空間? あの瓶の中なのか?」
「そうよ! まだ作りたてだから何もないんだけど、やろうと思えばここからリゾート地みたいにも出来るみたい」
「へー、それは凄いな。しかし広いとはいえ壁や天井があるみたいだけど、昨日みたいな失敗したらどうなるんだ? ……もしかして空間を突き破るのか?」
「そこは大丈夫! 壁や天井に当たる前に今いるこの中心部に強制転送されるみたい」
「なるほど、凄い便利なとこだな」
というか失敗を前提に作られてるな……
「じゃあ早速やるわよ!」
絢香はやる気満々だ。だが……
「そういえば箒は? 念じたら出てくるのか?」
「あっ……忘れた……ちょっと取ってくる」
そう言うと絢香は集中し始めた。そして絢香の姿が消えた。
俺も気づかないのは悪かったが……
まぁ、この魔法空間を作ってもらえたのが余程嬉しかったのだろう。それは絢香のテンションの高さで分かる。
絢香の部屋でこっそりと魔法を使うのとここで思いっきり魔法使えるのでは全然違うだろう。
しかも失敗しても大丈夫だ。そりゃテンションも上がるわな。
とりあえず絢香が戻ってくるのを待つか……