第一話
この春、俺こと浅倉 翔吾は高校へと進学した。
高校生になると何か変わると期待していたのだが特に何も変わらない。
高校へ入学して2週間たったが退屈な授業を受けて家に帰ってゲームをする、そんな日々の繰り返しだ。
「なぁ、翔吾。今日こそ俺を絢香ちゃんに紹介してくれよ」
今話しかけてきたのは高校で出来た友人、藤真 透だ。からかいがいのある面白い奴だ。
そして絢香と言うのが俺の幼馴染の本郷 絢香だ。家が隣で小、中、高と一緒の学校だ。昔はよく一緒に遊んでいたのだが中学ぐらいからはあまり話さなくなってきた。
何故、話さなくなったのかと言うと小学生の時は活発な少女だったのだが中学に入りだんだんとクールになっていきその上、美少女だ。
俺なんかが話かけていいのか分からなくなったのが原因だな。
「透、前にも言ったが確かに絢香とは幼馴染なのだが最近は俺も話すらしていない。だから紹介は無理だ。どうしてもと言うなら原稿用紙10枚以上のラブレターを書いてくるんだな」
「マジで? そしたら紹介してくれるのか? よーし、原稿用紙買いに行ってくるわ」
「おい、まだ授業残ってるぞ?」
透は俺の言葉が聞こえなかったのか教室を飛び出して行ってしまった。
透をからかうのはほどほどにしとこう。
放課後になったが透は帰ってこなかった。
「あいつ、マジで原稿用紙10枚以上のラブレター書いてんのか?」
本当に書いてきたらどうしようかと思ったが面倒なので考えるのをやめた。
とりあえず、下校でもするか。
ふと、絢香の姿を探したがすでに帰ったみたいだ。特に用事もなく残っていると周りに人が集まってくるので放課後はいつもさっさと帰ってるみたいだ。
「相変わらずクールだよな。美少女なんだしもっと愛想よくしてても良さそうだが……まぁ俺には関係ないか」
そう思い俺も帰宅した。
「ただいまー」
家に帰り自分の部屋へと向かおうとしたら母親に止められた。
「翔吾、林檎いっぱい貰ったから絢香ちゃんとこにお裾分け持っていってちょうだい」
「えー、そのまま持っていけばいいじゃん。隣なんだし」
「あんた、暇でしょ? お母さんは夕飯の支度があるの。話し込んで遅くなったら今日の夕飯は卵焼きになるわよ?」
「……分かった。行ってくるよ」
乗り気ではないが夕飯がかかってる。行くしかないな。
ピンポーン
俺は絢香の家のインターホンを鳴らした。
「はい?」
「あっ! 翔吾です。なんか林檎いっぱい貰ったみたいでお裾分けにきました」
「あらあら、ありがとう。今開けるわね」
そして絢香の母親が玄関から出てきたので、俺は林檎を渡して帰ろうとした。
「あっ! 今、絢香もいるし上がっていって。林檎むいて持っていくから」
「えっ? いやー……」
俺が断る前に強引に家の中へと入れられた。
そして今、絢香の部屋の前にいる。
ずっとここにいても仕方ない。何話していいか分からないがとりあえず入るか。
コンコン
とりあえずノックをしてみたが反応がない。
「あれ? いないのか?」
コンコン
もう一度ノックをしてみた。すると
ガチャ
「もう、お母さん今修行中だって言ったでしょ?」
部屋から絢香が出てきた。
「えっ?」×2
俺と絢香の目が合った。絢香はなんだか魔女みたいな服を着ていた。
「えっと、話すのは久しぶりだな。しかし絢香がコスプレ好きとは思ってなかったよ」
「きゃーーー」
絢香は凄い大声で叫んだ。
「待て、大丈夫だ。言いふらしたりなんかしないから落ち着け」
「なんで、翔吾がいるの? やだっ……こうなったら記憶を消すしかない……」
なんだか物騒な言葉が聞こえてきた。
「記憶を消すって何かで殴られるのか?」
絢香は俺の言葉を聞いていないようで何やらブツブツと言っている。何か呪文でも唱えてるようだ。
なんだ? 俺は呪いでもかけられるのか?
「……記憶をきえろぉ!」
絢香がそう言った瞬間、俺の髪がぼんっと爆発した。
「えっ?」
何が起きた? ってか俺の頭どうなった?
「あーっ 失敗したぁ……」
そこへ絢香の母親が林檎を持ってきた。
「あらあら」
「おかぁさーん、どうしよう? バレちゃった」
バレた? 何がだ?
「全く、まだまだ未熟ね。翔吾君アフロになってるじゃない」
えっ? アフロ?
俺は髪を触ってみるとなんかボヨンとした。
「あのー、何がどうなってるんですか?」
「えっ? 翔吾、私が魔女だって事に気づいたんじゃ?」
「魔女?」
「えっ? 違うの? おかぁさーん、どうしよう?」
今の絢香はクールとは程遠いほどあたふたしている。こんな姿を見るのは初めてだ。
「とりあえず翔吾君可哀想だから元に戻すね」
絢香の母親がなにやら呪文を唱えた。
すると俺の髪が元通りになった感じがした。
「えっ? 何これ?」
「ごめんなさいね。ビックリしたでしょ? 私達、魔女の一族なの。この子はまだまだ未熟でなかなか成長しないのよ」
さらっと言ったが魔女? ほんとにいたの?
「あっ! どーせバレたんだし翔吾君にこれから手伝って貰えばいいじゃない。練習相手いた方がいいでしょ?」
「わっ、私1人でも大丈夫だから」
なにやら話が勝手に進んでいる。
「あのー、それは断ったらどうなるんですか?」
「んーそうなると記憶を消すしかないかな? 副作用で少し頭がパーになるけど……出来れば他言無用でお手伝いしてほしいかな」
なんて事だ。俺に逃げ道はないのか?
「ちなみにお手伝いとは?」
「この子の魔法の上達の為にいろいろかな?」
「失敗したらさっきみたいにアフロになるんですか?」
「その時は私が治してあげるわよ」
「そっ、そんなに失敗なんかしないんだからね」
少し考えたが頭がパーになるのはごめんだ。
「分かりました。とは言っても俺に何が出来るか分かりませんが」
「わー! 翔吾君ありがとうね」
「その、とりあえずよろしく」
こうして俺は実験台……いや、幼馴染の魔女の修行の手伝いをする事になった。
先が不安で仕方ない……