第弐拾伍話 覚醒!深紅の神/悪魔!
「マキア!黒筒はまだ使えるな!?」
「えぇ!無茶しない限りは大丈夫です!」
10機もの白い巨神を相手に、防戦一方ではあるものの何とか耐えてゆく
「埒が明かないな…」
一機が接近戦を仕掛け、残りの二機が支援を行うという布陣で仕掛けてくる巨神達は非常に厄介であり、手数で劣る現状において非常に厄介であると言えよう!
「こいつら…足元に撃っても回避してきやがる…学んで共有しているのか…?」
「だろうな…ここが通信途絶するエリアだから外には情報が流れてないが、逃がしてもすれば厄介極まりない…逃がすよりはやられるかもしれないけどな」
「不吉ですよ!艦長!やめてください!」
マキアが珍しく他との通信に割り込んでくる
彼女にしては焦ってるのかもしれないのだろう…そう考えられるほど彼は余裕というか、冷静…あるいは諦めてるのだろうとか、自らの脳内で考え出す
「そういや、出撃してから何分経つか?マキア!?」
「現在約45分…ここまで来るに約15分ほどかかるから救援が来るのはまだ先ですね…」
「そうか…こうなったらラペイシャスも使ったあれを…」
「ダメです!…いえ、推奨致しません…」
(やはりダメだよな…何か手はないか…無いな!)
「推奨しないと言ったな?マキア」
「いえ、ダメと言いました」
「マキア…いいや、使う!使うぞ!マキア!第1段階…リミッター…強制解除」
「承認…強制認可…リミッター…第1段階…即時解除…はぁ…正当な手段を踏んでないからラペイシャスさんのより負荷が高いのは、分かりますね?マスター」
「あぁ…」
「これしか手段がないのは確かです…あまりやらせたくはありませんでした…なので、ですから無茶はしないでください!いいですね!?」
「もちろんだ!行くぞ!マキア!」
背部のエンジンを展開
排熱機構を強化
へ出力上昇に対応
その他制限、仮解除
リミッター 第1段階 強制解除
機体全体から蒸気を吹き出す
放たれた熱波は機体を赤く染める
真紅の神/紅き悪魔はそこに佇む
パイロットの負担を考えぬほどの出力に対応するための処置が施される
感覚が研ぎすまされる
冴え渡るような感覚のようなものと共に今にも倒れ込みかねないような気だるさが
息が荒くなり、呼吸をする度に体の節々が苦しくなる
「機体温度上昇!解除可能時間は今から5分です!」
「それまでに………しとめる…!」
雪上用装備のスキー板をパージし!
宙を蹴って!目の前の三機に接近して…
正面の一機に対し蹴りを放つ!!
加速された蹴りは敵の頭部を穿ち飛ばす!
後ろの二機が近づいてくる神/悪魔に対し銃を放つがそのようなもの!通用するはずがない!
神/悪魔は瞬間的に少し後ろへと移動すると!
宙を固定し!蹴って!飛び込みながら!
一体に向け黒筒を向け!放ち!
もう一体を片手に構えたナイフで!裂く!
残り7機……その全てがジークの乗る神/悪魔へと敵意を向ける!
迫り来る敵の足元へと数発放ち!
雪の煙幕と落とし穴で行動を止めさせ!
煙を払いながら一閃!
閃光の如き斬撃はまたしても両断させる!
残り…6機
感覚は冴えるが負荷により目が霞む…
この気だるさを振り切り間髪入れずにまた雪の煙幕を貼り!
「艦長!任せますよ!」
「なんともまぁ急だなぁ……まぁ頼まれたからには答えなくちゃだけどね」
ジークへと意識が向いた瞬間から最大速度で距離を撮っていた艦長、キシベは二丁のスナイパーライフル、二丁の黒筒、そして背部に搭載していたミサイルコンテナを両腕、サブアームを全機フル稼働させ!
一斉攻撃を行う!
戦艦の砲撃にも匹敵する攻撃!
だがしかし!6機中!2機!生き残っていた!
「片方は俺がやる!任せたぞ!ジーク!」
答えるまでもなく!彼は!飛び出し!敵を穿った!
「戦闘終了……か?」
「動態反応無し、熱源も反応無し……敵反応全て消失…ついでに通信、回復しました」
「どうする?艦長?」
「とりあえず通信は取れるみたいだし取るが…おいジーク、大丈夫か?」
キシベはそう聞きながら彼のバイタルを表示させる
「……!?」
「あぁ……大丈夫…なはずだ」
「…リミッター解除を行ったあと……だよな?」
「……?」
(ジークのバイタルが一切変わってない……どういうことだ…?)
「とりあえず動けるなら帰還…ん、いや、こいつらも回収したいしとりあえず連絡するか…」
報告書:仮称、チェロヴェークについて
1.概要
仮称、チェロヴェーク(以後)とは我が隊が哨戒任務中に遭遇した連合軍の新型兵器である。
また、仮名のチェロヴェークは機体に刻印されていた部分から断定、仮称として命名した。
遭遇位置からポズナン基地周辺にある敵基地の防衛を行っている、また同系統の機体との遭遇が行われていないことからそこで開発、試験が行われているものだったと想定される。
また、ノアの新型量産機を襲撃した機体もこの機体である可能性が高いと思われる。
2.ノア担当技師の所見
解体の結果ノアに酷似する部分が多数見付かっており、ノアの技術が流用されていることが判明した。
ここから導き出される推論として何らかの理由で開発データが流出した、あるいは鹵獲されたノアの技術が解析されたことが想定される。可能性としては後者の方が高いだろう。
また、ノアと構造的類似点があるならば弱点として腹部が弱点となると想定される。
戦闘データを解析、彼らの所見を元に想定されるに彼らは高度な自立式の戦闘プログラムを内蔵していると思われる。
「報告書は拝見させてもらったよ、キシベくん」
「どう思います?トーゴー先生?」
キシベは通信越しにフランクに話しかける
「非常に厄介かつ、詳細不明な点が多いな…少なくとも対処すべき事柄であるのには間違いないだろう。」
「やっぱそうですよね…問題があるならば敵基地の位置が未だ不明なこと…あとは、想定され敵戦力が不明な事ですかね……」
「そのへんだな…とりあえずキシベくん達の艦の次の任務は敵基地の情報収集、その後に敵基地の破壊を目的とする…でいいな?」
「任務であると言うなら喜んでお受けしますよ、先生」
「では、謎の敵基地に関しては任せたよ、キシベくん」