第弐拾参話 決戦! 最強女王対騎士王
「大気圏!突破しました!」
戦艦アークイドのブリッジのなかをオペレーターの声が響く
「各機、カタパルト接続開始!」
第九次反攻作戦の要である第二次英国奪還作戦は、第一次の際に奪われた基地を奪還せんと再度侵攻をかける連合軍に対し連邦軍が奇襲をしかけたことにより始まった。
奇襲に対し後手に回った連合軍は壊滅する寸前で持ち直し形成を逆転させるのだった!
その逆転の立役者である連合軍の謎の改造駆動装甲は後に過去のログから艦長でありながら最前線へと赴く騎士を名乗る男、グラハムであったことが判明するが最前線の兵に伝達されることは無かった。
「全機射出開始!」
大気圏突入の勢いと共に放たれた18機のノアは敵艦隊後方を制圧し挟撃する!
いかにとてつもない戦力を持つノアであってもノア一機≠敵艦であるため戦力が薄い後方に配置するという効果的な配置により戦果をあげていった!
しかし!やはり来るのが彼の男!グラハムだった!
「敵機体急速接近!ログデータ照合。対象、敵艦隊艦長グラハム・E・クーパーであると想定されます!」
「ラペイシャス!やっこさんこっち来てるぞ」
「もちろん譲ってくれるよねぇ?ジークぅ」
「俺もヤりたいんだけどなぁ…」
ラペイシャスは内部の操縦用のフレームを外し1本だけ持っていたタバコに火をつけ1度肺にパンパンになるまで吸い…吐き出し…また吸い込み…吐き出す……
ふぅ…
一息ついた彼女は重心を低く…前へ…体を動かしてずらし…地面を蹴り…飛び出す!
空気を震わす衝撃を放ちながら地面を蹴って蹴って敵へと向かう
彼女が生涯仕留めることの無い敵へと歩を進める
「兵装ロック解除、安全装置オフ…リミッター第1段階まで限定解除準備開始」
「ありがとうねぇ……じゃあ思いっきり行かさせてもらうよぉ!」
彼女は宿敵とも言える敵を補足し!
両腕に構えたライフルで!撃つ!撃つ!撃つ!
圧倒的な弾幕!
普通な敵ならば回避は不可能だろう!
しかし!
とてつもない加速を行う敵は身体の限界を超えるほどのGを受けるほどの回避行動をおこない!
避け切る!
「こう来てくれなきゃねぇ!殺しがいがないもんだよねぇ!グラハムゥッ!」
公共回線へと切り替えそう叫ぶ
「また会ったようだな!今度こそは貴女の首を貰い受けよう!」
「偶然逃げ帰ったような腰抜けには無理だろうねぇ…」
「…ラペイシャスッ!その言葉は取り消してもらおう。」
「取り消してもらいたかったら私の首でもとって見ることだねぇ……」
「そうだな…では行かせてもらう!我が名はグラハム!グラハム・E・クーパー!ドレッドノートの主にして貴女の首を取る者の名だ!」
騎士はそう言い放ちながら後部に接続した戦闘挺の動力を直列稼働させ!最大出力で推進器を吹かせる!
右手に握られた剣はエネルギーを放出により金色に輝きさせる!
瞬間的に2機の距離を詰め!
矢のごとく!飛び込む!
常人ならば反応することすら無理な攻撃!
不可避の一撃である!
「そう来ると思ってたよぉ……グラハムゥ!」
最低限の動きで回避を行うラペイシャス
(貴女程の実力があればそうなると誰でも気づいてるさ!避けると読めているならばこうするだけだ!)
回避した機体の真横で接続されている戦闘挺を切り離す!
「全機!一斉射撃!」
「なっ…やるねぇ!こう来なくちゃだよぉ!グラハムゥ!」
今まで動揺することのなかったラペイシャスすら動揺する攻撃!
さすがの彼女も避けることすら出来ない攻撃!
ならばどうするべきか!?
回避できない!瞬時にそう理解させるには十分な攻撃だ!
ならば防御すべしと彼女は一瞬で判断した!
すぐさまコックピットのある胸部を腕で!
破壊された時の被害のでかい脚部を折りたたむことにより強度を増させ!
メインカメラの頭部を隠す!
シュッ ドドドン!
メインカメラは隠れているため画面の一部が欠損しているため音の情報を頼りに攻撃の止んだ一瞬!
その一瞬に!
飛び出し!
構えた銃を撃ち込む!
「この程度じゃ首は取るどころか死ねないねぇ…」
無論この発言は強がりである!
当たり所によっては腕部は損傷、最悪コックピットが破壊される可能性のあった攻撃だった!
しかし!彼女は本心で思っている!
何故ならば彼女は最強であるからだ!
最強である!だからこそ!最強なのである!
二対の戦斧を取り出し構え……過剰なまでの加速により吹き飛んだグラハムへと飛び込む!
戦斧を!思いっきり!全力で!殴るように振る!
無論回避されたが!落ちた斧は衝撃と!地面の破片を吹き飛ばす!
超巨体のラペイシャスには関係ないが小柄なグラハムにはピンチである!
迫ってくる岩に対し彼は剣を両手で構え……………エネルギーを充填させ……………振る!
光の衝撃波が岩に対し向かい!破壊!消滅させる!
「面白い武器だねぇ……」
「エネルギー効率が悪いのが弱点なのだがね!切れる前に首さえ取れれば問題ない…そしてこの一撃で葬らせてもらう!聖剣!最大出力!」
「聖剣ねえ…カッコつけてるんじゃないよ」
ラペイシャスは拳銃へと持ち替え即座に打ち切るまで撃ち込む!
「今更その程度でっ!」
飛び上がることで回避し…最大出力へとなった光の剣を振るう!
しかしただ振るうだけではない!彼の指揮下の生き残った戦闘挺全てを彼女に対して最大出力の光線を放たせ!回避手段を奪う!
「こりゃ首取られちゃうかもしれないねぇ…」
「今更弱音か!?ラペイシャス!」
「違うねぇ…本気を出さなきゃ取られちゃうって話に決まってるだろぉ……グラハムゥ!エミット、リミッター第1段階解除」
シュィイイイン
とてつもないほどの稼働音を鳴らすノア!
しかしそんなこと気にもとめずグラハムは剣を振るった!
振るわれた剣は光の帯を飛ばす!
当たるかの寸前の瞬間!瞬間的にノアの姿は消え!また現れた!
第1段階解除、それを行ったノアは背部のエンジンにかけられていた制御弁を外し内部の稼働を超加速!
それにより膨大なエネルギー、そして制御不可となったエンジンのブレにより瞬間的な移動を可能にした!
瞬間移動とも言える動きを駆使し幾つにも重ねた残像と共に敵の上!左後ろ!前!と現れては構えた拳銃で丁寧に一撃、一撃加えてゆく!
そしてその一撃事に腕、接続された部品、足と抉れてゆく
ノアよりも身体に密接に繋がっている駆動装甲であるため機械の足ではなく彼本人の足も吹き飛ぶ
「無様だねぇ…前回より酷いじゃあないかぁ……ふふっ…」
「私は貴女の首を取ると言ったな…ラペイシャス……」
足も腕も奪われた彼は瀕死の体を動かし彼女へと叫ぶ
「確かにそう言ったねぇ……グラハムぅ…でもその体じゃ無理だねぇ……可哀想に…」
「言い忘れてたな…ラペイシャス……私は何を使ってでも…どんな犠牲を払おうとも…貴女の首を取らせてもらう!」
そう言い放った瞬間彼女へと幾つもの光の束が飛来する!
「さらばだ!ラペイシャス!」
最後の力を振り絞り叫ぶ
ラペイシャスのノアに対し砲撃を行いながら突進しようと迫る!
しかし、これは無意味な行いだったのかもしれない
「さーて……グラハムぅ……生きてるならよーく見ておきなよぉ…」
彼女は逃げることなく背部コンテナに収納してた大型の拳銃、黒筒を取り出す
「余剰エネルギーをすべて黒筒へ…できるよねぇ……?エミット」
「黒筒の破損確率100%…推奨できません」
「どうせもう使わないから関係ないねぇ…準備は出来てるねぇ?エミット」
「勿論です。粒子圧縮率1000%銃身最大展開 対象補足完了…射撃準備完了」
彼女の構えたライフルは引き金を引くと同時に黒き光が放たれる。
彼女の使う粒子圧縮砲は大気中の圧縮し電磁力による力で瞬間的に圧縮、射出し着弾した装甲の内部にて炸裂 内側から破壊を行う
一見すると非常に強力な兵器と見えるが莫大なエネルギーを発生することの可能な物にとっては電磁防壁という対粒子圧縮弾に優れた防衛手段があるため有効打にはならない
そのはずだった
なぜ電磁防壁に通用しないのか
それは圧縮された粒子を内蔵する粒子弾は外側なくして弾として機能することが出来ないからである。この粒子弾の外側の粒子を空中で破裂させる。これを目的として空中に電磁波を放つ電磁防壁が成立していたのだ。
それならば電磁防壁をも突破する威力を出せばいい。このような単純な理論へと行き着いたある博士は理論上電磁防壁を突破可能な粒子弾を放つことの出来る拳銃を考案、作成したのだが無論欠点があった。
突破するために必要なエネルギーを賄えることが通常時のノアには不可能だった
しかし!ラペイシャスのノアは現在リミッターを解除、その膨大な余剰エネルギーを拳銃へと充填し、いま!その武器の力を見せる時が来たのだ!
「黒筒…最大出力……発射!」
そう淡々と言いながら引き金を引く
ズビューン
低く重い音を鳴らしながら黒き光は空を裂き、敵を穿つ!
巨艦の中心にぽっかりとした穴が空き……綺麗に二つに分かれながら爆散する……
「残念だったねぇ…グラハム…じゃあこれで…」
倒れ伏していたはずのグラハムは完全に消えている
「逃げるなんて釣れないねぇ…」
「リミッター解除…強制終了……帰還を推奨します」
「そうかもしれないねぇ…あとは任せるよ」
「はい!任せておいてください…」