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魔性転生  作者: 邪
第二幕 ―秘匿島―
28/32

“なんだか”

 ――ちっ、と六郎太が舌を打つ。

 女の姿を見失った。一応まだ霊気を追うことはできるが……それが余計に訝しい。

 女の霊気は凪いでいた。本当に逃げる気ならば感知をされないよう、もっと霊気を抑えるはずだ。それをしないという事は――やはり罠か。

 そこでふと、六郎太は足を止めた。血の臭いがする――

 少し進むと地面に大きな血溜まりが出来ていた。付近の木々にも血の痕がついている。人か、動物か、判断は出来ないが、もし人のものであれば出血量からみても生きてはいないだろう。

 まあ、とはいえ、その可能性は限りなく0に近い。ルール説明に無かったとはいえ殺人が認められるはずがない。なにより試験を監視している行者がいるはずだ。彼等が死にそうな受験者を黙って見過ごすとは思えない。この血もおそらくは野生動物の――

 六郎太は辺りを見回し眉を顰めた。

 ここは女の霊気が通った経路でもある。あの矢には確かな殺意があった……。女の霊気はまだ感知できる。やはり追うべきだ。

 六郎太は木々の間を颯爽と駆け抜けた。その間、感知している霊気の動きが少しずつ遅くなっていくのを感じた。

 そして、ついに追いつきそうだと思った瞬間、森を抜けた。同時に、女の霊気も動きを止め、感知の包囲網から完全に気配を消した。

「今度は霊気を抑えたか」

 辺りを見渡すと、そこは踝あたりの高さの草が疎らに生えた平地だった。30メートルほど先に古ぼけた石造りの建物がたっている。大きさは二階建ての一軒家ほどで、外壁には四角い穴が規則正しく並んでいる。窓のようにも見えるが、ガラスは入っておらず、苔や蔦が簾のように中の様子を遮っていた。

 端から見るかぎり人が住んでいるようには見えない。無人島なのだから当然といえば当然ではあるが――女が隠れているとすればあの中か。

 六郎太は建物に歩み寄ると入口を覆う蔦を手で除けた。がらんとした部屋の奥に人がひとり立っている。先ほどの女ではない。小麦色の肌に短く刈りあげられた短髪の、おそらく同世代と思しきTシャツ短パン姿の少年が、待ち構えるかの様にこちらを睨んでいた。

「女が来なかったか」

 六郎太が訊ねると少年の眉が動いた。それから案の定、敵意剥き出しでこちらに飛び掛かってきた。10メートルほどの距離を軽やかに詰め、斜に構えた状態から前の手を素早く突き出してくる。

 六郎太はそれを前腕で受け止め、遅れて出てきた奥手の突きを体を横に傾けて躱した。

 一旦、建物から出よう。そう思い後へ飛び退こうすると、今度は背後から殺気を感じた。振り返ると眼前に矢が迫ってきていた。

 何とか身をひるがえし、それを躱した六郎太は、蔦に覆われた出入口へ身を低くしたまま頭から飛び込んだ。

 建物からの脱出には成功したが、今のは間違いなく例の女のものだった。しかも少年の攻撃に対するこちらのリアクションを見計らい放たれていた。

「お前、あの女とグルか」

 六郎太は建物から出てきた少年を向いて言った。少年は目を細めるだけだった。

「イエスと取るぜ」

 六郎太は改めて女の気配を探る。感知網には何も引っ掛からない。この場を囲う森のどこかに身を隠しているはずだが――

 考えていると、また少年が攻撃を仕掛けてきた。勢いよくこちらの懐に飛び込んでくるスタイルは自分とよく似ている。

 六郎太が前腕で顔を庇う。すると少年の拳打がその上を三つ打ち、四発目がガラ空きとなった腹に突き刺さる。

 六郎太はそれに合わせて左拳を振った。

 しかし少年が素早く後方に飛び退いたことによって、剛腕は風を切るだけとなった。

 すばしっこい――と、六郎太が腹に手を当てる。左右の突きも速くてキレる。けど――、と彼は笑みを浮かべた。それから今度は自ら仕掛けた。

 距離を詰めて右、左と拳を繰り出す。だが難なく躱される。しかも、こちらのワンツーの繋ぎに突きを一つ挟んできた。スピードがあるのは確かだ。

 が、それでいい。一発当てれば終わる。

 フィジカル差は如実だと六郎太は感じていた。

 格闘技に階級があるように闘争とは結局のところどちらが“強い”かだ。

 六郎太はパンチを打つと見せかけて右手で少年の左手首を掴んだ。

 その瞬間、顔面と腹を数発殴られるが、六郎太はお構いなしに左拳を振った。

 それが腹を庇う少年の右前腕に激突すると、掴んでいた手を離したことも相まって少年は何メートルも地面を転がった。

 手応えありだった。立ち上がる少年の顔が苦痛に歪んでいた。腕と、もしかしたら腹部も痛めた可能性がある。

 勝負はありかと思われた。

 がしかし、少年は大きく息を吐き真顔に戻ると、胸の前で両手を絡み合わせて<印>を作った。

 <印>とは氣術の使用や性能の底上げに用いられる儀式的な作法だ。ゴブリンが術を使用する際に手の甲を打ち合わせるのもこれに当たる。

 だが、この状況で今さらなんの術を使うというのか――もう少年は無視して女の方だけを気にしていればいい。そう思った矢先、早速こちらの右手側から矢が飛んできた。

 六郎太は余裕をもってそれを躱す。

 というのも矢の速度が先ほどよりも明らかに遅かったからだ。

 この矢の軌跡を辿れば自然と女に行き着く。

 そう思いながら右手の森を向いた瞬間だった。突然、左の前腕に鋭い痛みと衝撃が走った。

 は? と自身の左腕に目をやると矢が刺さっていた。

 躱したはずの矢が何故――

「“番印”」

 少年が印を作ったままこちらを睨んで言った。

 六郎太はハッとして霊視を行う。すると拳大ほどの仄かな光が腕や腹に張り付いていた。これは――まさか、と思った矢先、矢が飛んできた。

 当然、躱す――が、六郎太は目を疑った。通り過ぎて行ったはずの矢が速度をそのままに、こちらを向いて追いかけてきたのだ。しかも身体に張り付いたを目掛けて――。

 六郎太は矢に向かって正面を向き、飛来する矢を間一髪で掴み取った。

 が、その勢いは衰えることなく手の中で暴れまわる。鋭い先端が腹部の青白い痣に向かって突き刺さろうと踠いていた。

 六郎太は「ちぃ!」と舌を打ち、力任せに矢を握り潰した。すると矢に込められていた霊氣は途端に雲散し、勢いを失った。

 一方、少年はその場から動くことなく印を組んだままである。

 印した霊氣に特定のものを引き寄せる術――いや、女の霊氣を引き寄せる……とも少し違う。“引き合う”と表現したほうがいいのかもしれない。

 タネは間違いなく少年が組んでいる印だろう。あれを崩すことが先決だ。

 六郎太が少年に向かって駆けようとすると、また矢が飛んできた。しかも今度は三本。それも一本一本が違う軌道を描いていた。

 六郎太は左腕に刺さった矢を力任せに引き抜き、正面から飛来する矢を躱しざまに突きで破壊した。それから左右から飛んでくる残りの二本を、一つは掴み折り、一つは裏拳で叩き折った。

 これに少年は明らかに動揺した表情を浮べていた。矢で攻めるだけではなく自分も接近戦を仕掛けた方がいいのではないか。そんな迷いが見て取れる。

 そして、そんな彼が印をとこうすると、

「弦!」という女の声が離れたところから聴こえてきた。

 声の方を向くと女が立っていた。

 彼女は少年に向かって首を横に振っている。

 それを見た少年が口を横に結んだ。

 六郎太は二人のやり取りを見てフンと鼻を鳴らす。それから女の方を向き、構えた。

 少年には背を晒すかたちとなるが、狙撃手がわざわざ姿を晒したということはこれまでとは違い本気で射ってくるはずだ。二人のやり取りから見ても十中八九、次も矢による攻撃だろう。少年が何かを仕掛けてくる可能性は極めて低い。

 すると読み通り、少年はその場から動かず印の維持に努めた。

 かわりに女が大きく息を吸い、止めた。じっと睨みを利かせ、双方動くことなく一分ほどが過ぎようとしたとき――女が動いた。

 そのさまに六郎太は驚愕した。矢筒へ伸びる手が“増えた”と錯覚するほど速かったのだ。気付いた時にはもう矢は発射された後だった。

 彼女が一息で放った矢の数は十三本。手持ちの矢のすべてである。先ほどのように掴んだりパンチで凌ぐのは不可能。当然、躱しきることも――

「仕方ねえな」

 六郎太は小さく息を吐き袖を捲ると、右腕を持ち上げた。同時に、その手が燃え上がり黒煙と共に炎が手首から先を赤と黒に染め上げる。

 矢が壊れれば“引き合う”力も無くなる。つまり、すべて破壊すればいい――

 六郎太は四方八方から迫りくる矢を限界まで引きつけ、凪ぐように右手を振った。すると途端に手に纏った炎が弾け、扇状に展開した爆炎が周囲の矢をあらかた飲み込んだ。火に飲まれた矢は空中で燃え尽き、一本たりとも六郎太へ到達することはなかった。

 その光景を前に、少年は愕然とした表情を浮かべながら一歩後退っていた。印もすでに組んではいない。

 六郎太は体のマーキングが消えたのを認め、女に向かって駆けた。そして完全に距離を潰し殴りかかろうとした瞬間、

「待ってくれ!」と叫んだのは少年だった。

 女の眼前で拳を止め、

「お前達から仕掛けてきたのにか?」と、六郎太が訊ねた。

 すると呆然と立ちつくしていた女が一瞬少年に目をやり弓を地面に捨てた。それから両手を顔の高さに持ち上げて降参のポーズをとると、淡々とした口調で言った。

「すまない。人違いのようだ」 

「だろうな。知らねえ女に命を狙われる覚えはねえから。てか、それだけか? 殺しにきておいて」

 六郎太が拳に力を込めると、少年が二人の間に割って入った。

「姉さん、もっとちゃんと謝らなきゃ。本当にすまなかった。言い訳をするつもりはないけど、こっちも焦っていたんだ。本当に申し訳なかった。せめて傷の手当てをさせてくれないか」

 仏頂面の女とは違い、少年は眉を落し確かに反省しているように見えた。

 六郎太はとりあえず拳を下ろし、こちらの心配をしてくる少年の手を振り払った。

「手当なんて必要ねえよ。このくらいならすぐ治る」

「治るったって、射られた傷だよ」

「だな」と、溜息を一つつき六郎太は左腕の傷を少年に見せた。

 射られた、それも無理矢理に矢を引き抜いたとあっては傷口が花弁のように裂けているはずだ。しかし六郎太の前腕には数ミリの亀裂が出来ているだけで既に血も止まっていた。

「善意のつもりなんだろうけど俺はこういう体質なんだよ」

「た、体質って――」

 驚きのあまり、それ以上は声にならない様子の少年にかわり、女が納得とでもいうような表情で「忌呪か」と呟いた。

 六郎太は「ああ」とだけ返し、制服の袖を元に戻した。

「なんの、かは聞かない。こちらとしてもそんなことに興味はないからね。あと、いきなり襲い掛かったことについては本当に反省している。すまなかった」

「まあ、ここは一応そういう場だからいいけどよ。にしても人違いってのはどういうことだ? 誰か殺すつもりなのか? 言っとくけど、いくら行者になるための試験とはいえ殺人は御法度だと思うぜ」

「御法度? はたしてそうかな」

「どういう意味だ?」

 六郎太が訊き返すと女は少年の方を向いて何かを促した。そしてまた向き直ると、

「君、わたしを追ってくるときに多量の血痕を見なかったか?」

「あー、あったなそういえば。どうせ受験者に狩られた野生動物だろ。こっちは5日ぶんの食料がいるからな」

「いや、残念ながらあの血痕は人のものだ」

「は? なんでわかるんだよ」

 これに女は「出来たか?」と、再び少年を向いた。

 少年は頷くと両手の親指と人差し指で直角をつくり、それを枠に見立てて六郎太へ向けた。

「ポーズでもとれってのか?」

「まさか。霊視してくれる。あ、グロいから気を付けてね」

 申し訳なさそうに言う少年を訝しみつつも六郎太は目に霊氣を集める。すると少年の作った枠の中に静止画が映っていた。

「へぇ、念写の類か。さっきのマーキングもそうだが器用な奴だな」

「直接的な戦闘は苦手なぶんね」

 六郎太はふーんと鼻を鳴らし映像をよく見た。人の死体が映っている。ここへ来る途中で見た血痕の場所ともよく似ている。木々への血の飛び散り方もそっくりだ。ただ――

「これが俺の見た場所と一致するとして、死体はどこいった? 俺が見た時にはなかったぜ。まさかあんた等がご丁寧に弔ったのか?」

「まさか。死体は放置だ。そんなことをしている暇はないからな」

「じゃあどこに消えた」 

「さあな」

 女は神妙な面持で呟いた。

「解せねえな」

 監視している行者が片付けたのか? いや、それならそもそも人の死を黙って見ているはずがない。

「とにかく、これでわかったか。あの血痕は人のものだ」

「ああ……いまいち納得出来ねえけど。で、それと人違いってのがどう関係する」

「遺体をよく見ろ」

 女に言われ、改めて少年のつくる枠に目をやる。

 グロいから気をつけろと言うだけあって死体の損壊が酷い。左右の腕と左足が欠損している。腹部と胸部は半円状に大きく抉れ、内臓がもろ見えだ。

「君は火を使った。火氣かとも思ったが忌呪ということであれば、それ由来の力なのだろう」

「まあな。で、だからなんなんだ」

「ふむ……相手が未熟な受験者だとしてもあれほど激しく損壊させるには相応の力がいる。霊糸使いとの闘いを見て、その点で君だと勘違いをした。しかし火を使うのなら遺体の状態とは一致しない。だから間違いだと悟った」

「なるほど。だけど俺が素手でバラしたって可能性もあるぜ」

「いや、それはない。確かに君は強いが、君にとってのスペシャルはあの炎だろう? 素手で受験者をあれほど損壊させられるのなら弟――弦との攻防でその力の片鱗を見せているはずだ。しかしそれは無かった。かわりに追い詰められた状況で見せたのはあの炎。だから君が人を殺傷することがあるとすれば火を使う。きっと圧倒的な火力で相手を焼き殺すはずだ」

「ふん、当然のように失礼なこといいやがる」

「すいません。姉はちょっと正直すぎるところがあるから」

 少年はそう言って小さく会釈をした。

「ふーん、まあいいや。とりあえず話はわかった。あんた等はその殺人野郎を追ってるってわけだな。まあただ、悪いことは言わねえ人殺しはやめておけ。怨恨なら尚更な」

「怨恨? 勘違いするな。私達が追っているのは」

 言いかけて女は口を噤んだ。すると、すかさず少年の視線が女を向いた。

「姉さん、彼に協力してもらおうよ。腕も立つし、悪い人ではなさそうだよ」

「弦、あなた本気で言ってるの? これは私達の使命なのよ」

「おいおいあんた等、勝手に話を進めんなよ。なんの協力か知らねえけど、こっちはそんなに暇じゃねえんだ。あんた等だって試験を受けにきてるなら、まず合格することを念頭において動けよ」

「違うんだ。僕等は行者になんてなるつもりはない」

 そう告げる少年へ、女の厳しい視線が向く。

「……姉さん、被害者が出てるんだ。もう僕たちの手にはあまるよ」

「そんなことはない。二人でやれるわよ」

「まだ何の手がかりも見つけていないのに? また被害者が出たらどうするの」

「それは……でも、他の受験者の仕業かもしれないでしょ。封印のせいとは限らないわ」

「封印?」

 思わず六郎太が訊ねると、女はしまったという顔した。

 すかさず少年が「さあ、姉さん」と促す。すると数秒あけて、彼女は観念したように頭を振った。

「わかったわ。弦の言う通りね……彼に話す。でも、協力してくれるとは限らない。ダメなら二人でやるわよ?」

 少年は大きく頷いた。

 六郎太が訝し気に首を傾げると女が話を始めた。

 二人の性は弦弓つるゆみ。名は女が『やじり』。少年が『げん』。二人の祖先は元々この島の出身とのことだ。そして弦弓家はこの島を大昔に滅ぼしたという邪悪な存在の封印を代々守ってきたらしい。

「でもよ、この島って確か役会の所有物で管理も会がやってんだよな」

「ああ、そうだ。だから私達は独自にこの島の封印を見守っていた。役会の許可も貰っている。それに、この島の管轄をしている行者とも連絡を取り合っていた」

「いた? 過去形か」

「ああ。ここ最近、突如連絡が取れなくなった。だからこの試験に参加して島の封印を確かめる必要があったんだ」

「で? もう確かめたのか」

「ああ……破られていたよ。だからこちらも急いでいる」

「確かか? 会が管理してるんだぞ」

「それはこちらが聞きたいことだ。なぜ封印が解かれているのか、管理している役会がどうしてこちらに連絡をよこさないのか、とね」

「……正直わかんねえな。封印がフェイクだったか、封じられているモノが大したことなくて連絡するまでもなかったか。てか、何が封じられていたんだ?」

 これに女と少年――やじりと弦は目を見合わせた。

「ごめん、実は僕達にもそれはわからないんだ」

「は? 代々守ってきたのにか」

「古い話だからな。私達のお爺さんの頃にはすでに何を封じているのかは伝わっていなかった。もしかしたら最初からそれが何なのかは伏せられていたのかもしれない。とにかく、島を滅ぼした邪悪な存在とだけ……」

「はあ……てーと、あんた等はその封印されてた存在ってのが、弦の見せた殺人を行ったと思ってて、さらにそれを祓う手伝いを俺にしろと?」

「お願い出来ないかな」

 少年がぺこりと頭を下げる。

「私的には不本意だが情報も戦力も足りないのが現状だ。手伝ってもらえると助かる」

 六郎太は天を仰いだ。日がだいぶ傾いてきていた。

「こっちはこっちで試験に合格しなきゃなんねえんだ。人も探さなきゃなんねえし」

「人探しなら僕が手伝えるよ。霊能感知範囲は広い方だから」

「じゃあ面倒な相手は私が見つけ次第射るか」

「あーもう、ちょっと待てって、わかったわかった。手伝いはするが、とりあえず封印ってのをこの目で確かめたい。疑うわけじゃねえけど会が管理しているのに封印が破られたってのは、どうしても合点がいかねえ。それに――」

 本当に二人の言う通りなら監視しているはずの行者が殺人を見過ごしたということになる。そうでないなら行者が既に殺られている可能性も……。だが現場だけではなく会場の方でも遠隔で監視をしているはずだ。いったいどういうことなんだ。

「では、これから道中よろしく頼む。改めて弦弓やじりだ」

「僕は弦弓弦。15歳です」

「ん、歳もいったほうがいいのか? 私は18だ」

「いや、別に名前はもう聞いたし歳とかどうでもいいぞ。むしろこっちがまだ名乗ってなかったな卍六郎太だ」

「卍君でいいのかな? かわった苗字だね」

「では封印の場所まで案内する。忌呪の卍六郎太」

 六郎太は再度天を仰いだ。なんだか面倒なことに巻き込まれている気がする。山神しおりは大丈夫なのだろうか。

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