うつくしいもの
ざあざあと、くぐもった音がしていた。
遥か上にある水面に、きれいな模様が描かれる。
水平な場所に落ちたそれは、まるく広がっていって、途切れて消える。
それが、沢山沢山描かれていた。
私は静かにそれを見ていた。
揺らめく髪をまとめて、目の前に出てこないようにしながら、じいっと見ていた。
口からこぼれる泡すらも邪魔で、息をひそめてただただ模様を見つめていた。
とてもきれいで、あまり見る事のないものなのだ。
本当は、こんな日は外へ出てはいけないと言われているのだけど。
それでも、ずっと昔に見たそれを忘れられなかった。
誰かと共有したいとは思わない。
ただ、それを私は見つめていた。
その事実だけで十分だ。