第2話 平凡高校生、並行世界へ転移する
「コホン、それじゃあまずは並行世界について説明するわね」
「何がまずは、だ。思いっきり説明飛ばしてたくせに」
「うるさいわね。文句言うなら説明しないんだから!」
「俺は別にそれでも良いんだけどな」
「あーコラ、ちゃんと説明聞こうとしなさいよ!」
「説明しないんだからー、とか言ったのはどこのどいつだよ!」
全く、なんなんだこの女は。いきなり並行世界とか魔王とか言い始めるし、おまけに頭悪そうだし。
「……それじゃあ改めてまずは並行世界についての説明よ。並行世界っていうのは……」
「あ、俺並行世界についてはそこそこ知識あるから。その説明はいらねーや」
「あーもう。私の言うこと聞きなさいよー!」とか言ってるこのマヌケ少女は一旦放っておこう。
先程は並行世界何それ? とか言っていた俺だが、並行世界そのものを知らないわけではない。
というか、そもそも並行世界はSFでよく使われる用語だからな。アニメラノベマンガゲームオタクの俺が知らないわけがない。
「まぁ並行世界について知ってるなら話は速いわね。私は地球の並行世界であるユーローズから来たの。ユーローズを滅ぼそうとする魔王から二つの世界を守るために」
「さっきもそんなこと言ってたな。っていやそんなことはどうでもいい! お前、並行世界から来たってマジか!?」
「どうでもよくないわよ! ……私が並行世界から来たって言うのは本当のことよ。いきなりこんなこと言って信じてもらえるとは私も思ってないけ」
「いや、別に本当なら信じるよ。それでさっき俺見て見つけたとかこんなに早くとか言ってたよな? それってどういう」
「人の話を途中で遮るなー!!」
「お前も今、俺の話遮ったろうが!!」
しまった。これじゃあ小学校低学年レベルの争いだ。しかも相手はバカなのに……、
「まったく……。信じてもらえるのは、その……ありがたいわ。けどね、それと人の話を遮ることとは話が別よ。いいわね?」
「はいはい、わかりましたよー」
「ほんとにわかってるのかしら。ま、今はいいわ。それじゃあ本題に入るわよ。まだ確定したわけじゃないんだけど、おそらく、君はユーローズの勇者なのよ」
「………………はぁぁぁあああっっっ!? お、俺が勇者!?」
「そう、君が勇者!」
うん、ありえねぇ。
なんでただの高校生の俺が勇者なんだよ。冗談でも笑えねぇよ。
「えーっと、それ何かの間違いじゃ……」
「まだ確実にそうとは言い切れないわよ。君が勇者である確率は99.5%ぐらいね」
確かに100%じゃねーから確実ではねーけど、その値はほぼ確定だよ。
「でも、なんで俺が勇者なんだ? 俺普通の高校生なんだけど?」
「それは私にもわからないわよ。私があなたを勇者にしたわけじゃないから。ごめんだけど詳しいことは後で。たぶん今ここで説明するよりユーローズに行って説明した方がいいわ。君、ユーローズに来てくれる?」
さて、どうしよう。
まさか本当に、アニメラノベ漫画の世界の異世界転生(今回の場合だと転生ではないが)みたいなことが起こるとは。
別に俺は今の生活に不満は無い。
だが、「異世界でアニメやマンガの主人公のように冒険したり敵と戦ったりしてみたい!」といった欲望は、俺がある意味一番叶ってほしいと思っているものだ。
しかも、もし俺が並行世界に行かないとユーローズが滅ぼされてしまうらしいのだ。
これは行くべきだろう。というか行きたい。たとえ土下座して頼んででも行きたい。
ということで、この子に並行世界に行くという返事を……。
「あ、言い忘れてたけど、魔王が滅ぼそうとしてるのはユーローズだけじゃないわよ。この地球も一緒に滅ぼされると思う」
よし、行こう。
正直言うと5~6%ぐらい、危険かなやめておいた方がいいかな? なんて気持ちがあったのだが、地球まで滅ぼされるなら行かないとダメだ。
というか、地球も滅ぼされるという超重大情報、言い忘れるなよ。やっぱりバカだな。
まぁ、言われてみればさっきこいつ、二つの世界を守るために来たって言ってたな。
今となってはどうでもいいことだが。
「行くよ。俺はユーローズに行く。二つの世界を守るために」
「……ほんとに……、来てくれるの?」
「ああ、行くよ。というか来てくれって言ったのお前だろ?」
「……そうだったわね。ありがとう! それじゃあ早速行くわよ、ユーローズに!」
「おう! ってちょっと待て。ヤバいヤバい、アニメの録画忘れてた!」
これは……、人生初の録画忘れになるかもしれない。
◇
録画のことを思い出すやいなや、俺は少女の腕を掴んでトイレを飛び出した。
「ちょっと何すんのよ!」と喚く少女を完全に無視して俺は自宅へと急行した。
高校から徒歩五分の自宅マンションに着いて部屋に入ると同時に、テレビをつけてアニメの録画を完了させる。
「よし、行くぞ並行世界に!」
「君後で絶対殴る!」
少女がそう叫んだとたん、辺りが激しい光に包まれた。




