6 手助け
「聖なる光」
「ありがとうございます師匠、まさかこんなところで師匠とお会いできるなんて思っても見なかったです。」
「私も同じ気持ちだよ、まさかこんな深い森の中に転移されているとはね。」
光に当たったイブの腕は止血され、傷口もまるで無かったかのように塞がった。
イブの手当てをしつつ自己紹介をしあった。
剣の先端から光をだしている彼女は、ヴィクトリア・フォン・ギルスという名前、白髪のショートポニーテールで俺よりも身長が高く若干ボーイッシュな感じの女性だ。
どうやらイブと彼女は同じ魔法学院の生徒で、同じ歳でありながら師弟関係であるみたいだ。
イブと同じ歳ってことは俺より年下か…身長が俺より高く、服装からして町の自警団か?性格も気遣いも完璧とか嫉妬しか湧かないぞ…。
「ヴィクトリア、繰り返しになるが助けてくれてありがとう。イブも傷を負ってしまってピンチだったんだ、ほらっルカもお礼を言って。」
「あ、ありが…とう。」
ルカは帽子で顔を軽く隠しながら目も合わせずお礼を言った。
・・・ん?ヴィクトリアの反応がない…
「…はっ!いやいやお礼を言われるほどのことはしていないよ!それに、人を助けるのは自警団として当然の行動だろう?いやっでもどうしてもお礼がしたいっていうんならそうだなぁ…ルカ殿、わ、私と友達になってはくれないだろうか?そして、あ、握手をしてくれ!」
しばらくボーっとしていたと思いきや急に友達になってくれだの握手してくれだのさっきまでの理想的なかっこいい女性はどこに行ってしまったんだ…
彼女の挙動に困惑しているとイブが近寄って耳打ちしてきた。
「師匠…あっヴィクトリアのことなんですが、普段は鷹揚自若でとても頼れる師匠なんです、ですが師匠、ギルス家の一人娘で昔から弟が欲しかったらしく、好みな男の子に対して過敏な反応をしてしまう時があるんです。」
「へ、へぇ…」
どんなに優秀な人でもダメな所や変な性癖のひとつはあるってことなんだな。
そんなことを話している内にヴィクトリアはルカを抱きしめていた…は?
「お、おいおいルカはお年頃なんだからそんな過度なスキンシップは俺の目の前でやめてくれよ!」
ヴィクトリアは我に返ったのか心惜しそうにルカから離れた。
ルカは抱きしめられたと同時に顔を胸に押しつぶされていて、放心状態だった。
「ごっごめん、つい欲望に負けてルカ殿と戯れてしまった。」
戯れるというレベルだったのか今のは。
「それはさておきマテウス殿、一目見て貴殿はケルベロス5匹程度簡単に倒せる力を持っていると分かった。そんな人がどうしてマルコが負傷するまで戦わなかった?」
えっ――――
一瞬にして血の気が引いた感覚がした。
そんなことを言われたのは初めてだ。俺のマナがバレたのか?いやっ俺が水が入ったバケツを剣に変えたのは誰にも見られていないはずだ、イブにも、ルカにも、そしてヴィクトリアもその時は近くにいなかった…
「兄さんは僕が知る限りずっと牛の世話しかしてこなかった!そんな力あるはずがない!」
ルカが俺のことを擁護してくれている、いや貶しているのか?
「…いやっ言いたくなかったり言えない事情があるなら無理して言う必要はないさ、ただマルコが傷つくまで戦闘は彼女に任せっきりだったのが感心しなくてね。」
「し、師匠!彼は、何も武器を持っていなかったんです!だったら戦うのは魔法が使える私の務め、彼に非はありません!」
「マテウス殿を責めているわけではないんだ、もし不快になったのなら謝るよ、すまない。」
俺はイブを戦闘要員としてギリギリまで戦いに参加しなかった。イブには悪いと思っている。
だけど、出来る限り戦いたくなかったんだ。
傷つくから?違う
勝てない相手だったから?そうじゃない
俺は本当は強くない。俺の強さは、犠牲があってこそなのだから。
だけどそろそろ覚悟を決めなくちゃ、これから様々な困難が訪れる気がする。自分を犠牲にしてでも二人を守る、守って見せる。
「あの時は何もしなかった俺が悪かった、イブ、何もできなくてごめんな、ルカも怖い思いをさせてしまった。俺が戦わなかった理由は追々話すよ、でも今度は、俺も全力を出す。」
ヴィクトリアは微笑み、イブはそんなことはないと首を振り、ルカは何を言っているのかよくわかっていないようだ。
「話が落ち着いたら腹が減ってしまったな、何か食べ物は…あっ」
さっきの戦闘でケルベロスの炎に当たってしまったのであろうルカが連れてきた仔牛がいい感じに焼け倒れている。
「・・・おいしくいただくとしよう。」
この時初めて4人の気持ちが一致した。




