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4 魔獣ケルベロス

「まずは周りをよく見ることが大切だ、相手との距離、仲間との距離、そして戦場の地形の把握、守らねばならない人が近くにいる場合は尚更ね。」


「はい、師匠!」


「一応私たちはまだ学院の生徒だけどクラスの首席であるからして将来的には国を守る王都特別護衛魔導士になるだろう、その王都魔導士の指針書によると”王都特別護衛魔導士は国に恥じぬ振る舞いと戦術を常に心がけよ”と書いてあった。」


「はい、師匠!」


「ただ、”護衛するべき御方(おんかた)がいる場合はその限りではない”とも書いてある。」


「はい、師匠!」


「まぁ護衛魔導士なんて戦う時は基本誰かを守りながらなんだから国に恥じぬ振る舞いとか戦術とか気にしないでどんな汚い手を使ってでも守るべき人を守れ!って言いたいのかもしれない。」


「は、はぁ…その指針書回りくどいですね。」


「国としては清廉潔白な魔導士を目指して欲しいのかもね、この指針書も建国してからずっと変わっていないらしいから何を言いたいのか本当の事はもう誰も分からないみたいだよ。」


「なるほど、そんな指針書を理解してしまうとは流石師匠です!」


「なぁマルコ…やっぱり師匠って呼ぶのやめてほしいな!同い年だぞ、ヴィクトリア…も恥ずかしいからトリアって呼んでくれよ。」


「し、師匠に対してそのような呼び方は恐れ多いです、それに師匠も私の事マルコって呼ぶじゃないですか!私はイブって呼ばれたいです!」


「えぇマルコの方が可愛いのになぁ、じゃあイブって呼んであげるからマル…イブも私の事トリアって呼んでね。」


「わ、分かりました、善処します。」


「頼んだよ、マルコ…あっ」


「ちょっと師匠!」


「「アハハハハ………」」



 ******************************



 対人の模擬戦は学院で何度もしたことはあるけれども対魔獣との模擬戦はしていなかった、と言うより出来なかった。

 本来魔獣は王家や貴族が正式な手続きを経て契約を交わし、護衛を目的として飼う生物である。

 そのため模擬戦をする必要はないし、ましてや魔獣を見ることすら滅多に無かった。

 そんな魔獣が、しかもA級魔獣が6体も私たちを囲むように襲ってきている。

 武器もなく防具もなく勝てるのか?いやいやこれは無理があるんじゃないだろうか。

 私一人しかいなかったら多分ツキが無かったと思って潔く諦めていただろう、だけど今はマテウスとルカがいる、特にルカなんて15にも満たない未来ある少年だぞ、こんなところで芽を摘まれるわけにはいかない!いかせない!


『グオオオオオオォォォォ!!!』


 前後左右から一斉にケルベロス達が叫びだした、鼓膜が破けそうだ…

 後ろの二人は大丈夫か確認しようとした時にクラウスが叫んだ。


「イブ!俺たちの事は気にせず戦ってくれ!俺なら君の爆発も大丈夫だ、ルカも俺が守るから安心しろ!本当に危ないと感じたら俺に言ってくれ、策があるから!」


 策があるならそれを使って欲しいと思うけれどもそれがクラウス自身を犠牲にする策かもしれない、やっぱり私がこの場をどうにかしないと…!

 考えている内に前方のケルベロスが3つの口から火の玉を吐き出してきた。

 私だって一応クラスの主席だ、この程度の攻撃であれば武器さえあれば切り落としたり防ぐことが出来るだろう。

 だけど今はそんなものはない。一か八か魔法をだして止めて見せる。

 両手を前に出して手を合わせ、出来るだけ魔力が前方に出せるように銃の形を作って魔法の名前を唱える。


雷電の舞(ボルト・フラッター)!」


 放った魔法は幸い火の玉に直撃して大きな爆発を起こした。

 ボルト・フラッターは細長い雷を複数敵に向けて飛ばす魔法だ、一発の強力な魔法を放って外したり巨大な爆発を起こされたりするよりかは良いと思ってこの魔法にしたがどうやら私の読みは当たっていたようだ。

 武器さえ持っていれば火の玉を貫通してケルベロス本体にも傷を負わせられただろう。

 それにしてもこのケルベロス達、今の火の玉の火力といい他の5匹が動かないといい手加減されているような気がする。


「マテウス!大丈夫ですか!?やはりある程度耐久力のある棒状のものが無いとうまく魔法が出ません!」


 マテウスの方を振り向く。

 マテウスはルカを抱きしめるように守っていたが、振り向いた一瞬、何かマテウスを中心に球状に透明な壁があったように見えた。目の錯覚だろうか…


「あぁ、俺たちは大丈夫だ、棒状の何か…木の枝じゃ耐久力ないだろうし…分かった、俺が用意するからもう少し待っててくれ。」


 用意すると言われてもここただの森の中ですよ!?

 木の棒、良くて棒状の石しかなさそうなのにどうやって用意するんですか!と突っ込みを入れたいところだがそんな余裕はなさそうだ。

 今度はケルベロスが2体、計6つの口から火の玉を吐き出してきた。

 今のボルト・フラッターだと6つの火の玉は流石に全部当てられそうにない


雷の爪(サンダー・クロー)!」


 手の先から電気の爪を作り出して火の玉を切り落とした。本来剣や杖の先に出してリーチを急に伸ばして相手を切りつける技なのだけれど今回は手の先から出ていたため火の粉が手に降りかかってきた。


「熱っ!」


 手加減されているとはいえ火の玉の温度はかなり高い、当たればただじゃすまなそうだ…


「イブ!出来たぞ、受け取れ!」


「出来た?何を言って…」


 振り向いたと同時に回転しながら何かが地面を滑ってきた。

 これは…剣だ。柄が氷で出来ていて、刃は金属で出来ているようだった。


「い、いつの間に剣なんて持ってたんですか?持っているようには見えなかったのに…ていうか柄が氷なんですけどこれ!?つめたっ!」


「なんで柄の方を氷にするんだよ!常識的にもカッコよさ的にも刃の方が氷だろ!」


 マテウスが誰かと話している。

 ルカは目を閉じ帽子を強く抑えてうずくまりながらマテウスの隣にいる。

 ルカと話しているようには見えないしじゃあ誰と…?

 マテウスが私の視線に気づいたのかハッとし、焦ったように言い返す。


「そ、それがあれば何とかなりそうか?今の状況イブだけが頼りだ、頼んだぞ!」


 色々と私も聞きたいことがありますがそれはこの場を乗り切らないと無理そうですね…











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