19 vs無属性の魔法使い4
槍杖ロンゴミニアドの先端から黒い霧と共に現れたのは3mはあるであろう筋肉の塊みたいな巨体に白い不気味な仮面を被った大男だった。
しかし今マテウスが発言した言葉、闇の権化だと・・・。
その名前からするとどの属性にも当てはまりそうにない。
「今までの言動からその記憶抽出はその魔法を吸い取った順に記憶していくんだろうねぇ、つまりそのロンゴミニアドは私の紅炎を吸い取ったのが255番目ってことだ。
そしてそのロンゴミニアドが創られたのは今からおよそ1500年前と言われている。
これらのことから今マテウスが発動した魔法、記憶抽出[3:闇の権化]は3番目に吸い取った魔法、大体1500年前に使われていた古代魔法って可能性があるんだねぇ。」
アドルフがとても早口で喋っている。魔法科学者としての血が騒いでいるのかもしれない。
どんな魔法か分からないのにお気楽に・・・。
闇の権化は片足に足枷をつけ、ジャラジャラと音を鳴らしながらアドルフに向かって走り出した。
右手に持っているのはその巨体に合わせたかのような巨大な出刃包丁、何も手入れされていないのか所々刃こぼれをしており、その刃は赤黒く染まっている。
「紅炎」
アドルフは再び紅炎を唱える。
その巨大な炎は闇の権化にしっかりと当たったが、闇の権化は左手で軽く顔を防いぎながら、何も効いていないかのようにズカズカとそのまま紅炎を受けながら走っていった。
アドルフは少し眉間にシワを寄せたが、すぐに浮きながら後退した。
だが、マテウスはその一瞬の隙を逃さず間合いを詰め、槍杖でアドルフを突いた。
「むぅっ!」
ギリギリのところでアドルフは杖でマテウスの攻撃を受け止める。
マテウスは反作用をさせないようにするためか、今まで力任せでしてきた攻撃をやめ、様々な方向から突いたり一文字斬りをしたりと手数で攻めていた。
怒涛の攻撃をするマテウスだが、アドルフは全て読んでいたかのようにギリギリだが防御しきっている。
突然マテウスが何かを避けるように横にステップを踏んだ。
直後、後ろから闇の権化が袈裟斬りの要領で斜めに斬りかかる。
詠唱が間に合わないとふんだのか、アドルフは完全静止を使わずにそのまま杖で攻撃を防いだ。
しかし、やはりその巨体に則った重量からくる重い一撃は防ぎきれず、杖は折れてアドルフの体に斜めの斬撃が入った。
「グゥッ!・・・追い風!」
アドルフの前方から強い風が吹き、アドルフは大きく後退した。
追い風って後ろから吹いてくる風のことだと思っていたが、この魔法の場合体の向きにかかわらず行きたい方向に風が吹くみたいだ。
腹から胸にかけて衣類がジワジワと赤く染まっている、止血するための魔法を唱える余裕がないのか分からないが止めるつもりはないらしい。
だが傷は思っているよりも深いらしくアドルフの動きがさっきと比べ格段に落ちていることが見てわかる。
アドルフは息を荒げながらも折れた杖をマテウスに向ける。
「はぁ、はぁ・・・流石にここまでとは思ってもいなかった、ねぇ・・・
だけど、私も今死ぬわけにはいかないんだ・・・。
出来れば穏便に行きたかったんだが・・・うまくいかないもんだね・・・。
『7種の属に命ず。今、世界に仇なし、理を反せ。』」
アドルフの周りに球状の魔方陣が生成される。
アドルフはやるつもりだ。極大魔法を!
魔方陣から7つの球がアドルフを中心とし円を描いている。
球はそれぞれ赤、青、黄、緑、黒、白、水色と違う色をしている。
「七つの相反する咆哮」
赤い球が炎、黄色の球が雷を出し、マテウスと闇の権化を襲う。
ただ、それだけでは二人とも全く止まる様子はない、マテウスは躱しながらも槍杖に炎と雷の魔力を吸い取りアドルフに近づき、闇の権化は軽く防御姿勢になっているが魔法を直に受けながら前進している。
火属性と雷属性は共に攻撃に重きを置いている。それ故にこの二つの属性が攻撃をしているのだろう。
今の所何もしてこない球は青、緑、黒、白、水色はつまり他の防御や補助を重視している属性ということだろう。
マテウスが攻撃を避けつつアドルフに飛び掛かる、が、水色の球と白色の球がアドルフの前に開かった。
白色の球は直視出来ない程の強い光を放った、さすがにマテウスも眩しさには勝てないのか目を瞑る。
その直後、水色の球が深い青色の水を出し、マテウスを包み囲んだ。
「その槍杖が魔力を吸い取るのが先か、マテウスの息が切れるのが先か、どちらが先に負けるか勝負しようじゃないか。」
マテウスは少し苦しんではいるがまだ息は持ちそうな雰囲気だ。
マテウスは闇の権化に何か指示を送った。
闇の権化はマテウスの方へ向かい始まる、どうやら闇の権化を使ってマテウスは水の中から引っ張り出してもらうつもりなのだろう。
「攻撃重視の属性が効かないのであれば、他の属性でやるだけだ。」
そう言うと、黒い球が闇の権化の周りを回りし始める。
闇の権化が黒い球を切り落とそうとしても黒い球は機敏な動きで全て攻撃を回避し、やがて球の一部が円錐状に尖り、闇の権化の体を刺した。
そして、黒の球のコアの部分から何かが闇の権化の中に流れ込んでいく。
闇の権化は、刺された直後はダメージを負っているようには見えなかったが、何かを体内に流された直後、人間の声とは思えない程の低い声で叫び、そのまま崩れ落ちた。
闇の権化の体は言葉の通り、少しずつ溶けていったのだ。
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