17 vs無属性の魔法使い2
マテウスの右手に現れた物は、剣のように振るものなのか、槍のように刺すものなのか、魔法を使うための杖なのか、用途が分からない代物だった。
だが確実に尋常ではない武器であることは確かだ。
細めで長い柄の先にあるダイヤ状の大きい透明な石から異様な圧力を感じ、そして少しずつ私の魔力を吸いとっている。
アドルフが怪訝そうな顔で問い質した。
「ここで枯渇の槍杖ロンゴミニアドを拝むことが出来るとは思わなかったねぇ、庶民は疎か貴族、王族ですらその武器を見られることはできないといわれる幻の武器の1つだ。海底深くに眠っていたり火山の中で鼓動を打っていると言われているが、実物を見たのは生まれてこの方初めてだよ。」
ロンゴミニアド・・・確か小さい頃にお母さんから読み聞かせてもらった昔話に出てきた武器だ。
その時はまだ小さくて特に何も考えていなかったけど、今思えば魔法の力だからという理由でさえも説明が付かないほどに支離滅裂とした話だったような気がする。
・・・?マテウスが動かない。
左手を胸の位置に当ててその場でずっと立ち止まっている。
その様子を見たアドルフはここを勝機と見たのか地面から両足を離し高い位置から杖をマテウスに向けた。
いや待って、アドルフは無属性の魔法使いのはずだ。
魔法使いは生まれ持った属性に対応して髪色が決まってくる、私のような雷属性は金髪、光属性は白髪と言ったように。
そしてアドルフの髪色は黒、無属性の魔法使いである証拠だ。
無属性の魔法使いは補助に特化した属性だ、宙を浮くことが出来るのは風属性の専売特許のはずなのになんで彼は今、地に足を着いていないんだ!
「おやそこで疲れ切っている雷の魔法少女、確か名前はイブ・マルコ・ハンドレットだったかな?
私を『単なる無属性の魔法使い、所詮は補助魔法特化で攻撃は他の人に任せるしかない。』とお思いかなぁ?
無属性魔法の特性を思い出してごらん。」
特性、属性魔法ごとにその属性限定の特別な性質のことだ。
光属性の特性は回復魔法が使えること、地属性の特性は水属性以外の魔法に強い耐性を持っているといったような感じに、無属性にも特性はある。だけど・・・。
「無属性魔法の特性は全属性の初級魔法が使えること、でしたね。ですがいくら全魔法が使えるといっても空を自在に移動できる風魔法、"空中浮遊"は中級魔法ですから使えないはずです。」
「模範解答どうもありがとう、そう、普通ならば初級魔法しか使えない。では逆に考えてみて欲しい、何故初級魔法しか使えないのか?」
考えたことも無かった。
無属性魔法の特性はそう言うものだから、とそこで勝手に完結させてしまっていたのだ。
でも全魔法が使えるなら魔法学院でもそう教わるはずだ。
いや、そう教育されてきたせいでそれしか出来ない、と知らず知らずの内に制限をかけられていたのか?
「まぁそう深く考えることでもないんだけどねぇ、無属性とはつまりどの属性にも属していないってことだよねぇ、だけど全属性の初級魔法は使える。
とどの詰まり、どの属性にも理論的にはなれるということだ。
初級魔法しか使えないと学院で教えているのは大抵の無属性の魔法使いが他の属性の魔力を掴めていない、掴めないからなんだよ。
未来ある若者、ここでは無属性の魔法使いに特定されるけどその子達の社会的自立の促進と社会性の育成をする場所でわざわざ促しを妨げるようなことはしないよね、だから無属性の魔法使いであれば誰でも出来ることだけを教えているんだねぇ。」
…言葉が何もでなかった。
学院で教わってきたことはあらゆる方面から制限がかけられたことばかりだったのか。
動揺している私を無視してアドルフはまだ胸に手を当て動かないマテウスに魔法を唱えた。
「紅炎、耐えてくれマテウス。」
アドルフの持つ杖の先端に赤く、膨大な魔力が集中した。
集まった魔力は一瞬閃光を放ち、赤黒い炎となって周りの空気を歪ませながらマテウスに向かっていった。
「マテウス!!」
私は残った力の限りを振り絞って声を荒げた。
だがそんな私の声などは一切必要がなかった。
未だにマテウスは微動だにしないが、アドルフの放った魔法はマテウスには届かなかった。
ロンゴミニアドが魔法を跡形もなく全て吸い取っていたのだ。
アドルフもロンゴミニアドの能力を全ては知らなかったのか驚愕している。
「驚いたなぁ、文献には永久的に周囲の魔力を吸い続けるとは記されていたけどまさかこの魔法までも全部吸収されるとは。」
魔法使いにとって魔法が無力化されることは致命的なことだ、魔剣士であれば魔力が使えなくとも己の剣の技量でどうにかなるから私は魔剣士の道を選んだのだが。
それにしても枯渇の槍杖ロンゴミニアド、敵味方関係なく魔力を吸い取るのは恐ろしい武器だ、常に吸い取ってくる魔力の量も度が過ぎている。私の魔力はもうすでに残りカスまで吸い上げられていた。
ロンゴミニアドが紅炎を全て吸い取った後にようやくマテウスは胸から手を離し、顔を上げ動き出した。
ご覧いただきありがとうございます。
気に入っていただければ「いいね」を是非お願いします!
励みになります。




