12 vs地属性の魔法少女
アリスはアドラル魔法学院で地属性魔法首席だ。
かく言う私も雷属性の首席なのだが属性の相性がいいからなのかどうか分からないけど他の属性の子達と比べ仲が良かった。
友でもあり好敵手でもあるアリスとは何をするにも勝負をし、そして勝ったり負けたり引き分けたり・・・つまり互角なのだった。
そんな彼女が今敵として目の前にいる。
敵として戦うのに抵抗とかは全然無いけど何よりアリスは私の癖や戦い方を熟知している。
師匠以外の他属性の首席と比べとても戦い辛い。
「アリス、もう今更無益な戦いなんてやめましょうとか言うつもりはありません、自らの体から流れる血を見て絶望していなさい!」
アリスに向けて剣を向ける。
アリスはにっこりと微笑み魔法杖を私に向ける。
「イブが私に勝っているところはその無鉄砲なところだけよ、そこを除けばまぁ、むかつくけど互角かしらね、だから私、今回は勝つことよりもアドルフ様に貢献できる方を優先するわ!"母なる温もり"」
私を中心に地面の壁が前後左右に出来上がった。
流石地属性、攻撃よりも防御のほうを得意とする属性だけありますね。
更にアリスは自分の場所だけ地面を盛り上げ壁の上から私を見下ろした。
「ちょっと陰湿だけど、古い好として許してね、僕なる土人形」
私の真上に私の2倍くらいの大きさのゴーレムが生成された。
なるほど、周りに壁を作ったのは私をマテウスの所に行かせない為かと思いましたがゴーレムの攻撃を確実に当てるためでしたか。
そして上から落とすことにより攻撃に重さがさらに乗せている、考えましたねアリス。
「ですがこの程度じゃ私は倒せないですよ!"雷の爪"!」
帯電<<エンチャント>>された剣をゴーレムに対して振り上げた。
剣とゴーレムが衝突し、大きな爆発が起こったが、剣は折れずにゴーレムは砕け散った。
アリスはこうなることを予測していたかのような笑みを見せた。
「ゴーレムは囮よ、本命はこっち!"母なる怒り"!」
まずい!上のゴーレムに気を取られてしまい過ぎていた!
下から一本の鋭い岩が私めがけて突出してきた。
私の魔法では今の体勢ではこの岩を壊すことができないと判断し、できる限りよけた。
だが岩を避け切ることは出来ず、横腹に刺さってしまった。
「くぅっ!」
刺さってしまったが致命的ではない、まだ動ける、痛みなんて気にしている場合ではない、動けるなら動くのみだ。
アリスの顔からは笑みが消え真剣な目でこちらを見つめてきた。
「イブ、あなたは私のことを完全に敵だと思ってるのかもしれないけど、私はイブのこと敵だと思っていないわ。今からでも遅くない、こちら側に来なさい。」
アリスはあまり見せたことがない真面目な顔をして語りかけてきた。
こんな傷を負ってからこの勧誘、普通の人なら二つ返事で乗ってしまうかもしれないですね。
「確かにこの状況。そっち側についた方が恐らくいいんでしょうね・・・でも私は全力で拒否します!師匠も、マテウスも、ルカも、必死で抗っている、それなのに私だけのうのうと裏切るなんてことできません!」
アリスは少し焦っているように見える、本当に私のことを心配してくれているようだ。
アリスは声を張って説得してきた。
「なんで分からないの!今ここで反発してもイブの力じゃ何も変えられないわ!それにイブがその最初の一歩を進んでくれればヴィクトリアやマテウスとやらも考え直すかもしれない!こっちにつくことで、二つの世界を守る英雄になれるのよ!」
「何を言っても私は変わりません!変えたければ私に勝つことですね!」
そうだ、私一人じゃ何も変えられない。
何もできない。
けれど私は諦めない。
まずは周りにある壁を壊したいのだけど、さっきサンダー・クローでもビクともしなかった。
何回もサンダークローを当てれば壊れるかもしれないけどそんな時間をアリスは許してくれないだろうし魔力が先に切れてしまうだろう・・・。
魔力切れ・・・そうか!
「アリス、この程度で私が倒れると思っていたのですか?さっきのゴーレムもなんか色々と工夫して威力を高めていたようですがまだまだですね。もっと強い技はないんですか?」
私はアリスを煽った。
「そんな傷を負って何をいいだしてるのかしら、いいわ、そんなに見たいのなら見せてあげるわ!」
冷静を保っているつもりだがしっかりと感情が高ぶっている。
アリスは無事誘いに乗ってくれたようだ、ここからはどうにかして耐え抜く!
「安心してね、殺しはしないわ。"鍾乳石の一撃"」
頭上から幾つもの尖った石が降り注いできた。
周りに壁がある以上この魔法も私も魔法を使って相殺させなければいけない。
なるべく魔力消費量が少ない魔法で迎え撃つ!
「"雷電の舞"!!」
前この魔法を使ったときは剣や杖がなかったから威力や射程、命中に不安があったけど今ならこの剣がある。
ボルト・フラッターは複数の雷電が綺麗に円形状に並び、降り注いでくる石に向かって飛んでいく。
だがボルト・フラッターより相手のストライクスピアの石の方が数が多く相殺しきれなかった石が私に向かってきた。
私は剣で石を切り落としたがそれでも全てを切り落とすことは出来ず尖った石が腕を切り裂いてきた。
「くっ!中々やりますね、でもまだ私は立ってますよ、もっともっと強い魔法はないんですか!?」
「そんなに意固地になって何がしたいのかしら、殺しはしないっていってるでしょう?このままストライクスピアで倒れてもらうわ。」
このまま魔力消費量の少ない魔法を使われるのは長期戦になってしまってまずい、なんとかして強い魔法を撃たせなければ。
私の魔力もそう多くはない、少ない魔力量で強い技に見せかけることができそうな魔法を何回も撃ちアリスを動揺させてみよう。
「アリス、貴女には見せたことはないですが、私はこんな魔法も持っているのですよ、閃光せし雷撃<<アーク>>」
私はアークを飛ばし、尖った石を次々と壊していった。
アークは瞬間的に強い光と熱と音を発生させる魔法で、魔力消費量は少なく威力がそこそこにある魔法なのだけれど、この魔法は何よりも魔法の発動時間が一瞬だから対象の位置をXYZ軸全て正確に把握して撃たないと当たらない難しい魔法だ、だから戦闘用に使う魔法としては余りにも使い勝手が悪いから普段使うことはない魔法である。
今回は対象の尖った石が壁の中にいる私だからなんとかアークを百発百中で当てられている。
しばらくの間アリスは尖った石を飛ばしていたが、私が全ての石を壊していることを見て、その魔法を止めた。
助かった、もう少しで私も集中力が切れて外しかねなかった。
アリスは私を上から見下し、けれどもイラついた感情を隠し切れない顔で杖を強く握りしめた。
「ハァ・・・もうイライラする!私はイブを助けたいって言っているのにこの仕打ち、恩を仇で返すってこのことなのかしらね!でももう限界、私もこんな所でアドルフ様に失望させられたくないの、私もまだ生きてたいの、だからイブ、ここでお別れね、最期は極大魔法であの世へ送ってあげるわ。『母なる大地よ、我が身に宿いし魔力を糧に力を!"星降る夜明け"』」
アリスを中心に円形の立体的な魔方陣が大きく生成された。
極大魔法・・・選ばれた才能ある者だけが発動することができる一撃必殺の魔法ですね。
魔力消費量は他の魔法の追随を許さないほどだが範囲は絶大、当たれば一撃、この魔法でアリスの魔力は空っぽでしょう。
私も極大魔法は使える、ただのタイマンなら極大魔法を撃ち合って優劣をつければいいのですが今はタイマンだがその後がある、魔力は少しでも残しておかないと勝っても意味がない。
けれども極大魔法以外は相打ちにすらないだろう、どうする?
そう考えているうちにアリスの頭上に巨大な魔方陣ができ、そこから直径5メートル、いや10メートルはあるのかもしれない大きな岩が姿を見せた。
「ハァ・・・ハァ・・・喜びなさい、埋葬と一緒にお墓まで立ててあげるわ、不格好だけどね!!」
アリスは衰勢している。やはり魔力を全て使い切ってしまったのだろう。
人は魔力を全て使い切ると大幅に身体能力が下がる、魔力は魔法を行使する以外にも日常的に人体の様々な機能を手助けしてくれているからだ。
そして魔力を使い切るともう一つ起こることがある、それは極大魔法以外の魔法で生成されたものが崩壊するということだ。
極大魔法は魔法の構造自体から他の魔法とは異なるから崩壊はされないと言われているが詳しくはよく分からない。
そう、アリスが魔力切れをおこしたおかげで周囲の壁が消えた。
アリスからしたら壁が消えたところでこの大きさの岩は避けることができないから崩壊しても問題ないとふんだのだろう。
だけど私からしたらこの岩をどうにかすることさえできれば勝機は見えるということだ。
そして私はその方法を思いついた。
「正直この大きさのものは試したこともないのでイチかバチかなのですが、当たって砕けろです!"磁気浮上"!!」
周囲に電気を走らせた。
相殺ができない、避けることもできないなら岩を私の所まで来させなければいい。
私は魔力をこっちに向かってくる岩にも注いだ。
岩は中々減速しないでこちらに向かってくる、だが今更ほかに方法はない。
注ぐ魔力量をギリギリまで増やした。
アリスは止まることを危惧したのか最後の力を振り絞り、立ち上がった。
「ハァ・・・・・・いい加減・・・諦めなさい・・・くぅ・・・」
アリスは何か魔法を唱えようとしたがまともな発声もできず、魔力もないため何も出なかった。
岩は少しずつ減速しはじめたがこのままでは間に合わない。
もう私の魔力量もギリギリだ、あとは全集中して岩を止めるしかない。
「止まれええええええぇぇぇぇ!!」
横腹や腕から出血していることなどもう忘れてしまった。
もう何も考えられなくなるくらいに剣を強く握りしめ、周囲と岩に魔力を注ぐ・・・
岩は私との距離およそ1メートルくらいで静止した。
「うおおおおおおぉぉぉ!!」
残りわずかしか残っていない魔力で岩を誰もいない壁の方へ投げつけた。
岩は壁をぶち破り、外へと放り出され、そこから久しぶりに感じた風の音と涼しさがやってきた。
私はすかさずアリスの近くに走り寄り剣を首筋の近くに寄せた。
「今回は私の勝ちのようですね、アリス。」
アリスは久しぶりに友に見せるべき笑顔をした。
「これだけしてなんで死なないのかしらね・・・本当にしぶといわね・・・!」
そして私はアリスとの戦闘に集中していたせいでいままで忘れていたマテウスの方を見た。
「マテウス大丈夫です・・・か・・・」
マテウスは私がアリスとタイマンをしている間一人で三人を相手にしていたはずだった。
だがマテウスの目線の先には二人しかおらず、もう一人はマテウスとルカの間に何故か出来ていた木の壁に複数の剣で突き刺さっていた。




