1 爆発は二度起こる
青い空。白い雲。あれ、もう1週間くらい雨降ってないんじゃないか?
そんなことを思いながら俺は昨日と同じ行動をする。
昨日の俺も今日の俺も頑張って働いたし、少しくらい休憩でもするかと腰を下ろした瞬間
「兄さんまたサボってる・・・早くしないと日が暮れるよ。」
まるでずっと俺のことを観察していたかのようなタイミングで昨日と同じことを言われる。
焦る表情を一切見せず、考えるより先に口から言葉が出た。
「これはサボってる訳じゃない、疲れたから休憩をしているだけさ。それにまだ昼も過ぎてないじゃないか、日が暮れるのはまだまだ先だぜ?」
牛の飼育は重労働だ、ここの牧場は俺と弟の二人だけでやっているから一人辺りの負担がすごく大きい。だから朝から夜まで動き回るのは無理があるんだ。
だけど弟は普通の人とは桁違いの体力を持っているからこの時間で休憩をする俺に対してサボってるとしか思えないんだろう。
まぁ実際のところ、まだ疲れていないから本当はサボってたんだが・・・
「これから草刈りを昼過ぎまでに終わらせなくちゃ、そのあと牛舎の掃除でしょ?あ、南の方の柵に亀裂が入ってたからその補修もしないと。それから・・・」
「あぁもう分かったよ分かりましたよ!」
今日の予定を聞いただけで全身から力が抜けていく気がする。
牛がもう少し可愛かったらやる気も出たんだろうなぁ、いや仔牛は可愛いけどさ。
次からはもう少し見つかりづらいところで休憩をするか・・・
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牛舎の掃除はやった、日用品の買い物もした、柵も不格好だけど直した、草刈りは飽きた、よし!後は牛を牛舎に入れて搾乳するだけだな。
最近は雨が降らなくて本当に助かるなぁと思いながら牛を一ヶ所に集める。
弟は牧場の奥にいる牛を集めてくれているようだ。
これで今日も無事何事もなく一日が終わると安心したその時、牧場の西の柵を越えた森の中からとても大きな爆発音が聴こえた。
「な、なんだ!?」
驚いている暇もなく爆風が来て、俺は歩くことも、目を開けることさえも出来ずにうずくまっていた。
・・・10秒くらい経っただろうか、ようやく風が収まり目を開けると辺り一面緑色の雑草ばかり生い茂っていた牧場は土と倒木と柵で茶色の方が半数を占めるようになっていた。
「これは・・・雑草を抜く手間が省けたな!」
などと周りに人がいないのにも関わらず冗談を言っていたところに弟が帽子を抑えながらこちらに向かって走ってきた。
「兄さん大丈夫!?今の爆発は何!?」
「あぁ俺は大丈夫だ、爆発の事は俺にもわからない・・・あっ!牛は大丈夫か?」
「あっ今の爆発で驚いて逃げ出している!柵が壊れたから牧場の外に行っちゃってるよ!」
「流石にそれはまずいな・・・ルカは牛を追いかけてきてくれ、俺は爆発の原因を調べてくる。」
弟は小さくコクンと頷くと勢いよく走りだした。俺も現場に向かう。
ここまで大きな爆発だと二次災害が起こる可能性があると思うから、バケツに水を張って持っていくことにしよう。
牧場の外は町に通じる一本の道を残し、周りは森で囲まれている。
こういう時「この森は俺の庭みたいなもんだ」と言うところなんだろうけど、あいにく俺は自慢できるほどの方向音痴だから当然家のとなりに森があろうがジャングルがあろうが庭にはならない。(庭だけに)
弟が探しに来てくれない限り俺は森を出られないだろう。
俺が牛を追う側になればよかったと思ったが、疲れるしなにより弟に危ない目にあわせたくないからな。
意を決して森の中に入ったと同時にまた爆発が起きた。
だが、今度の爆発は先程の爆発とは異なり、なんだか体が痺れるような感覚に陥った。
「なんだ今の…ただ事ではないのは確からしいな」
このピリピリと張り詰めた空気は緊張のせいなのか今の爆発のせいなのか分からない。
さっきの爆発から場所は割りと近いことが分かった。
音をたてないようにゆっくりと歩く。
しばらく歩くと視界が広くなった。
さっきの爆発のせいで木が折れていたり根ごと飛ばされていたりしているんだ。
どうやら今いる辺りが爆心地だったのだろう。
「ここ・・・・・どうして・・・・・」
女性の声が聴こえる、誰かいるようだ。
恐る恐る近づく。
「そ、そこにいるのは誰ですか?」
気配を殺していた筈なのに何故かバレてしまった。気配を無くすことには自信があったのに見つかったことに小さなショックを受けつつ、このまま隠れていても仕方がないので女性の声がする方へ歩み寄る。
「待ってくれ、俺はこの近隣の住民だ。爆発が聞こえたから様子を見に来たんだ、敵意はないよ。」
即座に思い付いた言葉を並べていく。両手を挙げながら倒れた木々の間を抜けていくと、そこには18歳くらいの少女が何も着ずに座っていた。
何も着ずに。
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