第4話 ヤバヤバディナーとデスティニー
いろいろと意味不明な話ですね・・・
「うわ、お姉さん?!!」
突然、抱きついちゃいました。
だだだだって・・・!
可愛いんだぜこのコスプレ少年―――!!!
いやいやいや、マジで可愛いというかなんと言うかもう落ち着きを取り戻せてないんだよチクショー!!(落ち着こうね光珠)
だってだって、髪が濡れてまとまってるとことか頬が火照ってたりとかズボンはハーフで白い肌は見えまくり、しかも吊りパンで下は半そでのチェックブラウスで、いやいや可愛すぎますから―――――!(訳が・・・)
っていうかもう、これじゃあたしただのショタコンじゃん。そんなのいやだからねあたし。
で、抱きついちゃったんだけど、白兎君はあんまり動揺しませんでした。そりゃそうか、欧米っ子だもんな。
「お姉さん、どうしたんですか?ディナー誘いに来たんですけど」
「行きます行きます、もうガチでついてきます!!!!」
混乱気味。
「フフ、お姉さんってば可愛いんですから。ほら、行きますよ?」
可愛いのは君のほうだよ白兎君!とか思ってたら、ふいに体が浮いた。
「・・・・・・・?って、うわ、キャァァァァ!!!白兎君、おおお重いからやややめた方が」
気付けば、あたしは姫抱きされてましたとさ☆いや、だから危ないよ!!!年齢差があるんだってばァァ!
「力はありますから。だってお姉さん、離してくれなかったじゃないですか。それなら抱いて連れて行ったほうが早いですから」
「そうゆう問題じゃない!っていうかあたし連れてけるとかマジどんだけだよ!」
「ちょっと遠いですから、お姉さんが迷子になっちゃいけませんし」
「何かが間違ってると思うよ!って、わ、トランプ?!」
急に、声を上げてしまった。
だってだって、道端に(って言うか廊下の端っこに)でっかいトランプがあるんだよ?おかしくね?っていうか、あれ―――――
「でででででかいトランプの上になな生首が乗ってるゥゥゥゥゥ?!」
「まさか、違いますよお姉さん。ちゃんと手も足も生えてるじゃないですか。そんなホラーなものがあったら女王様が気絶しますよ。ちょ、落ち着いてくださいお姉さん。あれはトランプ兵ですから。衛兵ですから」
いや、おかしいだろ、なんでそんな紙を雇ってるんだ?!トランプでしょ?!紙だからね、トランプって!
「あれは、エースです。トランプ兵の中で2番目に強いんです」
「じゃあ一番は?」
「ジャック。トランプ、やったことあるでしょう?11番目ですよ」
「うん」
「ちなみに本名はブラック・ジャックです」
「ゲームだったんだ?!」
あたしと白兎君が話をしていると、そのエースさんが敬礼しながら話しかけてきた。
「白兎様、アリス様。お食事の時間まであと20秒ですがよろしいのですか?」
「マジ?!っていうか様とかいらないから!」
「そうですか・・・今日は生憎と部屋にデスティニー・クロックを忘れてしまいましたから・・・ありがとうございます、エース。トランプカードを1枚あげましょう」
白兎君は軽く会釈をしてポケットからなんかケータイサイズの何かを出してエースさんに投げた。
「ありがとうございます、白兎様」
白兎君はもう振り返らない。代わりにすごいスピードで走り出した。
「廊下走っちゃダメだからァァァァ!!!」
「間に合いませんから。女王様に首斬られるよりいいでしょう」
「首斬んの?!」
「気に入らなければ」
「嘘ォォォ!気違いじゃん女王様!おかしいよ!」
「間違っているものは処刑すべきです」
「だからって殺しちゃダメだし!って言うかこんなに走ってんのに未だにつかないの!?」
「遠いですから」
「遠ッ!!!すごい遠い!」
って言うか、白兎君はずっとお姫様抱っこのまんまなのに疲れないのか?半端ないよ。
っていうか、さっきから疑問に思ってるんだけど、耳があるべきところにうさ耳が生えてるんだよね。これはもしかしてあれか?もしかしなくっても・・・ううん、考えるのはやめよう・・・
「さ、つきました」
白兎君がようやく止まった。っていうか、あんな俊足で走ってたのに息切れひとつしてないんだよね。なんで?人間業じゃないね。っていうか、人間じゃないのかもしれないんだけどさ。
「ねえ、白兎君。その耳、本物?」
あたしってば聞いちゃった――――!?
「え?面白いことを聞きますね。本物に決まってるじゃないですか♪」
・・・・・・・・本物なのかよ。
・・・・・・・・それは、想定外だったよ。絶対コスプレだと思ってたのに・・・
「まさか、お姉さんこれがピン式のうさ耳とか思ってたんですか?!」
はい、思ってました。絶対コスプレだと・・・・
っていうか、こういうショックもたまにはあるよね。うんうん。(現実逃避)
中に入ると、もうほぼ全員が入っていて、食堂はいっぱいだった。っていうか食堂っていっていいものじゃなかったりするのかな。大広間だよ、むしろ。
女王様は入り口から一番遠い、玉座っぽいものに座っていた。その右隣に2つほど席が空いている。
「・・・・・あそこで食べんの?」
「え?そうですよ。お姉さんが一人だと可哀想でしょう?」
「あぁん・・・・・」
悶えながら萌えるあたしに一言、
「というのはほんの冗談で、ただ女王様の計らいです」
「ひど!!そういうのは普通言わないようにしよう!!!」
「で、ですが・・・嘘をつくのは僕のシップに反しますから・・・」
「例外だよこういうときは!」
まあ、白兎君に女の子を口説くネタを教えたいわけじゃないんだけど。
「早く行きましょう。女王様がお待ちですから」
「う、うん」
あたしは白兎君に手を引かれて、玉座に上がる。それで一番右端で夕食を食べ始めた。
でも、出てくるのはもう全部全部豪華絢爛なお食事ばかり。
「わぁ・・・こんなの毎日食べてたら太るだろうに・・・女王様も白兎君もシルエット綺麗で、どうやってるんだろう・・・」
「あ、お姉さん。これは今日はアリス記念祝いの日だから豪華なだけでいつもはレバニラとか普通ですから」
「詐欺?!」
城でレバニラかよ!あたしレバニラ超嫌いなのによくも・・・っていうか、城でレバニラが出てくることがおかしいよね。秋刀魚の塩焼きとかも出るよきっと。
「ん」
そういえば、思い出したことがある。
さっき、エースさんと話してたときに「デスティニークロック」という単語を聞いた。あの「デスティニークロック」ってなんだろう。
デスティニーは運命。クロックは時計。直訳なら運命の時計だよね。
「白兎君」
「なんですか?」
「デスティニークロックって何?」
「あぁ・・・・あの単語を憶えてしまいましたか・・・デスティニークロックっていうのはですね・・別名『白兎とアリスの時計』といわれ、代々我が家に伝わってきたものなんです。あの時計があれば、間違いなく白兎はアリスと出会うことができるという。けれどあの時計は何かとても強い力がありまして、それは僕にもよくわからないんですけど・・・とにかく不思議な時計なんですよ?」
「違和感ないけど?」
「あの時計、変なところに気付きませんでしたか。針が5本あるんですよ。秒針が一本に時間と分針が一本ずつ、あとどの針にもなっていないすごく細い針が2本、ちゃんとついてるんです。まあいつもは時針と分針に隠れてて見えないのも仕方ないですが・・・とにかく、何かあるときにその針は時を刻みだすのだそうですよ」
「へぇ・・・・」
見てなかった。そんなものがあったんだ。でも、なんでそんな針がついてるんだろう?
『白兎とアリスの時計』、そんなもの誰が作ったの?
ちくたく
ちくたく
時計は時を刻む
あなたはその時計を
どうやって使いますか?
☆★☆
そのあとあたしは、その時計のことをすっかり忘れてしまった。
夢の中にこっそりとデスティニークロックが現れたのも知らずに――――――。
えっと、エースさんとかジャックさんは次々回登場あたりに説明したいと思います!