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高速で後ろに過ぎていく景色の中に狼の魔物を発見したので、長剣を抜き走る勢いのまま斬りかかる。

灰色の体毛で、体高が百五十センチはある六匹の狼だ。行動を起こす前に、一番近い狼の首を斬り落とす。


すぐさま剣を斬り上げ、隣の狼の首を刎ね、一歩踏み込んで胴体を深々と斬る。ここで、やっと二匹の狼が横から飛び掛かってくる。それを後ろに跳んで躱し、着地した瞬間に一匹斬り伏せる。もう一匹がまた飛び掛かってきたので、斜め前に潜り込んで躱し、無防備な胴体を斬り上げる。地面に触れる時には煙となって消えていた。


油断なく全ての狼を見ていたが、最後の一匹は襲って来ず離れた所で遠吠えをする。


「アオオォォォォ――――――ン」


遠吠えは良く響き、遠くにいる仲間の耳にまで届く。


「……仲間を呼んでいるのか? 探す暇が省けるからいいか」


何度も遠吠えをする狼を見て、もう十分だろうと思い斬り捨てる。その場で待っていると、次から次へと今までどこにいたのか狼たちが姿を現す。


闘真は道を埋め尽くすほど集まった狼に前後を挟まれてしまった。ざっと見ただけも五十匹以上はいるだろう。しかも、一匹他の狼より遥かに大きな狼がいる。狼の群れの奥にいるのに体高が三メートル超えているので良く見える。


この数に一斉に襲われれば、一分ともたないだろう。そんな状況でも闘真は口元に笑みを浮かべる。


「五十匹いれば、強化値が2で100、3なら150いくな。想像するだけで笑いが止まらんな! 捕らぬ狸の皮算用をするつもりはない。お前ら皆殺しにして手に入れてやるよ! ……つーわけで――」


啖呵を切ってその場で戦うと見せかけて、横へ走り塀の上へと跳び乗ると、体を回転させ狼たちに向き直る。


「誰が正面からやるって言った? 一匹じゃ勝てないくせに、群れた途端いい気になりやがって。てめぇらみたいに図体ばかりでかいくせに、群れなきゃ何もできない犬コロ相手に馬鹿正直に戦うわけないじゃん。まあ、群れたところで所詮は雑魚の集まり、俺に勝てるわけないけどな。掛かって来いよ、犬コロ共?」


高い所から見下し、散々挑発するだけして、闘真の姿が塀の向こうに消える。


止まっていた狼たちが、言葉は理解せずとも、馬鹿にされたことを理解したようだ。怒りに染まった吠え声を上げながら、一斉に闘真を追って塀を跳び越えていく。


追い掛けてくる狼たちをちらりと見て、塀を跳び越えて道路に出て走り、また塀の上に跳び乗る。そのまま細い塀の上を走っていき、一直線に目的の場所へと向かう。最短距離を走る闘真と狼たちとの距離が離れていく。


狼たちが闘真をその牙で、爪で、引き裂き殺す気満々で、怒気を纏い大勢で追ってくる。自分たちが負けるなど思っていないだろうこいつらを返り討ちにする事を考えると、自然と笑みが浮かび、とても楽しい気分になる。


走っているとすぐに目的地に着く。見上げる先にはマンションがある。特に特別な事もない普通のものだが、ここで狼たちを迎え撃つ。


外にある階段の扉を開けようとしたが、当然閉まっている。剣でドアノブを破壊し、扉を開けると、三段飛ばしで階段を駆け上がっていく。五階まで登ったところで止まり、下を覗き見ると、闘真の後を追い階段を駆け上がっていく狼たちがいる。長剣を両手で握り中段に構える。狼たちが上ってくるのを待っていると、すぐに先頭の一匹が姿を現す。


唸り声を上げながら飛び掛かってきた狼を両断する。次々と馬鹿みたいに飛び掛かってくる狼を斬って、斬って、斬りまくる。倒した時に白いピンポン玉みたいのをドロップしているが拾う暇はない。階段の幅的に二匹は通れない。狭いので、剣を大振りしたら壁や天井に当たるので、注意して振るう。一匹ずつ斬り殺すのを五十回くらい繰り返せば終わる。何とも単純な作業だ。


「はははっ! 馬鹿の一つ覚えみたいに、それしかできないのか? つまらん奴らだ」


三十匹ぐらい斬り、次を待っていると、頬に焼けるような熱を感じる――

突然爆発が起こり、爆風に吹き飛ばされ通路を転がっていく。

何が起こったんだ? 爆発するようなものは近くになかったはずだ。


「ぐっ…………」


痛む体で壁に手をつきながら立ち上がり見ると、階段が吹き飛んで無くなっている。周囲を炎が焦がし、破片が周囲に飛び散っている。

誰がやったかなんて、今このような事ができる敵は一体しかいない。


手すりに手をついて身を乗り出すように下を見ると、大狼が闘真を真っすぐ見ている。大狼の周囲に炎の牙がいくつも浮かび、闘真に向かって飛んでくる。


「ちぃ、魔法か!?」


慌ててその場から走って逃げる。背後で爆発が何度も起き、さっきまで闘真がいた所が爆散し大きな穴を開けている。もし、あの場に残っていたら、今頃跡形もなく吹き飛んでいただろうと思い戦慄する。


もう一つの階段へ向かう闘真の目に、階段を駆け上がってきた狼たちが迫りくるのがうつる。迫りくる狼たちを斬り伏せながら前に進もうとするが、次々と死をも恐れずに突進してくる狼に足止めを食らう。


狼たちの相手をしている暇はないというのに、執拗に喰らいついてくる狼にその場で迎撃するしかない。不意に焼けるような熱を感じ、後ろに大きく跳ぶが、一足遅く爆発に巻き込まれ、通路を転げ爆発で空いた穴から階下の通路に落ちた。


「つぅ……! あいつ、仲間ごと攻撃してきやがった」


上体を起こしたところで、上から全身を焼き焦がした狼が襲いかかってきた。まさか、炎の中を突破してくるとは思わず、油断していた。剣を突き刺そうとしたが、いつの間にか手放してようで無くなっている。


闘真の頭を噛み千切るために、鋭い牙の並ぶ口が大きく開かれ目の前に迫る。剣を抜く暇もなく、大きな口を鼻面と下あごを掴み何とか押し止める。臭い息を吐きかける口を押し退けるべく、両腕に力を込め徐々に押し戻していく。


もう少しで体の上から退かせそうなところで、押し潰すように力が加わる。肩に鋭い爪が喰い込み、痛みに呻く中見上げる視界に狼が増えている。しかも、まだ狼が上から落ちてきている。


狼の巨体が降り注ぎ闘真を押し潰す圧力がどんどん増していき、通路一杯に狼が埋め尽くされる。手足を動かして狼たちを退けようとしても、あまりの重さにびくともしない。完全に身動きが取れなくなる。


まずい。このままだと大狼の爆撃を躱すことができない。しかし、闘真にはこの状況を打開する策はない。


まず、狼たちと闘真の考え方がそもそも違う。狼たちは、個として動いているわけでなく、群れとして動いている。群れのために個の命を犠牲にする事を厭わないほどとは思っていなかった。そこが敗因だろう。


大狼の頭上に巨大な炎の牙が形成されていく。周囲の大気を歪め、焼き焦がすような炎の牙を灰色の塊に向かって射出する。


今までと比べようもない大爆発が起き、闘真の意識はそこで途切れる……


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