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敵は斬る

「ん……?」


何か音がした気がして、音がした方を向くが特に何もない。そのまま待っていると、段々と

音が近づいてきているのがわかる。音のする方に走って向かい角から顔を出して覗きこむと、前方に鶏のような頭をもつ、全身に羽毛が生えた二足歩行の魔物が剣を持って、小太りの中年男を追っている。


「おおっ……!」


最初に会った魔物は人に化けていたので、初めて魔物らしい魔物を見て感動する。男と鶏頭の距離がなかなか縮まらないとこを見るに、足の速さは大したことない。


ついでに、本日初めての人を見つけて思うのは、何でかわいい女の子じゃないんだよ! こういうのはお約束だろ? あんなおっさん助けたとこで、何も旨みがない。


見捨てようかなあ、と思い始めて頃に、おっさんがこちらに気付き向かってくる。


「うわー、めんどくせ」


と呟くものの、おっさんを助けるとか関係なく、獲物が一体だけという絶好の機会を見逃すわけがない。


角から出て片手剣を抜き走る。おっさんの横を通り過ぎ、鶏頭と対峙する。攻めずに様子をみていると、鶏頭が剣を振りかぶり斬りつけてくる。闘真は態と剣で受けるが、想像以上に軽い一撃に拍子抜けする。


「軽いな……いや、俺の力が強化されているからか……もういいや」


力任せに鶏頭の剣を大きく跳ね上げ、がら空きの胴を袈裟切りにする。鶏頭は左肩から右腰にかけて斬られ、盛大に黒い煙を出し跡形もなく消え、短剣(鞘付き)をドロップした。


「おいお前! もっと早く助けんか!」

「は……?」


短剣を拾っていると、魔物を倒して結果的に助けてしまったおっさんが文句を言っている。闘真は助けてやったのに感謝もしないおっさんに呆れて言葉も出ない。


面倒な奴と関わっても時間を無駄にするだけなので、さっさとお引き取り願おう。そう決めると、足元に落ちている鶏頭が持っていた剣を拾い、おっさんの足元に投げる。


「その剣やるから、好きにしろ。それじゃ」

「ま、待て! どこに行くつもりだ。私を守らんか!」

「はあ? 何で俺がお前を守らなきゃいけないんだ? 絶対やだね」

「物騒な物を振り回す子供を私が監督してやろうというのだ。子供は黙って大人の言う事を聞いておけばいいんだ」


これは、話していても駄目だな、無視して行こう。

闘真はおっさんに背中を向け、歩いて行く。後ろで何か喚いているおっさんを気にすることなく歩いていると、諦めたのか静かになる。


「止まれ! このクソガキ!」


足音が近づいてきたので振り返ったら、おっさんが怒りに顔を赤くして、剣を闘真に向けてきている。

それを見て闘真の眼が冷ややかな光を放つ。


「おい、お前。これは、どういうつもりだ?」

「黙れ! ガキの分際で私を虚仮にしおって、許さんぞ! 身の程をわきま――」


素早く踏み込み左手に持つ短剣を抜き放ち、おっさんの首を刎ねる。

首から血を噴き出す死体から離れて、道路に倒れた死体を見下ろす。

初めて人を殺したが、何も感じない。やっぱり、赤の他人で、しかも剣を向けてきた相手の命なんて、俺にとっては無価値で一顧だに値しない。


放っておいても魔物に殺されるだけで、別に俺が手を下すまでもなかったかもしれない。だが、人任せに、いやこの場合は魔物任せにするなんて逃げるような事はしたくなかった。


「はあー、無駄な時間を食った。……やっぱり、人は殺してもアイテムを落とさないか」


邪魔されて短剣のステータスを確認していないことを思い出し、ステータス画面を出す。

ついでに、ちゃんと自分のステータスに反映されているかを確かめる。


<下級>

筋力 +5


桐島闘真


筋力 58

敏捷 47

耐久 27

魔力 0


「通り魔に比べて随分と弱かったし、こんなものか。塵も積もれば山となると言うし、弱い装備でも集めれば強くなるか」


一つ懸念事項があるとすれば、たくさん武器を手に入れても、持ちきれなくなったらどうすればいいんだ。まあ、その時になって考えればいいか。


魔物を探して歩いていると、コンビニに目が留まる。

そういえば、朝ご飯を食べていなかったことを思い出す。いつもなら、あまり気にする程の事ではないが、今は食べられる時に食べておかないと。


「それに、腹が減っては戦はできぬと言うし、これから戦っていくんだ。腹ごしらえは大切だよな」


無人のコンビニに入ろうとしたが、自動ドアが開かない。そういえば、電気が使えないんだ。魔物が停電でも起こしたか、それとも発電所を破壊したか、わからないがどっちにしても闘真にはどうしようもない。


手動で扉を開け中に入ると、レジから袋を取り、歩きながらでも食べられるようおにぎりをいくつかとお茶一本を袋に入れてコンビニから出る。


盗みではあるが、いまさらである。秩序の崩壊した世界で、何をしても裁く存在がいないんだ。だから、何物にも縛られず自由を謳歌しなきゃ損だ。


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