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異世界

屋上に行く前に腹が鳴ったので、ご飯を食べてから行くことにした。電気、ガス、水道が止まっている中、ガスコンロやペットボトルの水を使い料理をしたみたいだ。ホワイトシチューに土鍋で炊いたご飯を大変美味しくいただいた。女の子の手料理を食べられるとは生きてきて良かった。


人心地ついてから、東郷と共に階段を上り屋上までやってきた。屋上から見下ろす町は、灯り一つない静寂なる闇に沈み、生命の息吹を感じられない。


「まるで、知らないところみたいだね」

「ああ、そうだな……それしても静かだな」

星々の光で照らされた町並みがあまりにも静かな事を疑問に思い見回してみてわかったが、動くものがない。昼前までは町の至るところに見受けられた魔物の姿が全く見えない。夜になったから寝ているというわけでもないだろう。


「魔物が全くいないが、どこにいったと思う」

「え、うーん……逃げたとか?」

「逃げたか……」


確かに魔物がいなくなったなら、この静かさも納得だが、じゃあなぜ魔物はいなくなった?現状では情報不足でなんとも言えないなあ。

にしても、人工の光がなくても自然の光だけでもそれなりに見えるものだな。夜空に見たこともないほど散りばめられた星々はとても多く……

ホントに見たことがない(・・・・・・・)夜空だ。


「ははっ、なるほど、そういうことになっていたのか……思っていたのとは逆だが、むしろこちらの方がいいな」

突然意味の分からないことを言う闘真に心配そうな視線を向ける。


「なあ、東郷。この魔物の出現はどの程度の範囲で起こっていると思う?」

「……魔物が現れてから半日経っているのに国が動いている様子がないから、日本中……いや世界中かな」

「世界中ってのは、ある意味正しいだろうな」

「……? どういうこと?」

「今は冬だからオリオン座があるだろう? どこにあるか教えてくれないか」


質問に答えず、夜空を指して言ってくる。

何が言いたいのかわからないけど、とりあえず夜空を見上げる。


「オリオン座は目立つからすぐ……あれ? ない……? そんなはずは……」

夜空を見上げてしばらく探していたが、信じられないという表情で闘真の方に顔を向ける。


「オリオン座だけじゃなくて、他の星座も全部ない。……どういうことなの!?」

「そりゃあ、あるわけないじゃないか。……だって、ここ異世界だから」

「…………!? な、なに言っているの? ここは私たちが暮らしている町じゃない。別の世界なはずない……!」


ラノベとか読んでないとこういう反応なのかね? 異世界転移ものをたくさん読んできた俺からすると、別に予想外なことでもない。異世界転移は一人から数十人までが一般的だが、まさか町一つ丸ごと異世界に転移したのは驚いた。どの程度の規模かわからないが、少なくとも周囲を山に囲まれた盆地全ては転移している。

「まあ、落ち着け。むしろ、現状は想定していた中でも良い方だ。もし、世界中がここみたいになっていたら、例え魔物を退けても復興するのに何十年かかるかわからん。それなら、魔物がいるのが当たり前な世界のほうがいいだろう? この世界で普通に暮らしている人がいるだろうし」

「それは……確かにそうかもしれないけど……」


まだ現実を受け入れられないようだが、時間が解決してくるだろう。それよりも、情報収集をしたい。夜だからといってこのまま寝るのは得策とは言えない。町を見て回ったとしても、何か情報を得られるとも思えない。なら、知っている人に聞くのが一番良い。


「東郷、学校なら避難している人がいるかもしれないし、情報収集のためにも行くぞ」

「あ、……うん、そうだね。みんな無事だといいけど」

「ん……? みんな?」

東郷が妙な事を言うので闘真は首を傾げる。


「うん、学校に残っている生徒が無事だといいなって」

「は? 魔物が現れたのは朝早くだから、まだ誰も登校してないだろ?」

「そうじゃなくて、文化祭の準備で学校に泊まっている生徒がそれなりにいるよ」

「あー……」


そういえば、文化祭の時期だったな。泊まってまで準備するなんてご苦労なことだ。それなら、誰かいるだろうし無駄足にはならないな。さっそく、学校へ向けて出発する。


蛇足だが、マンションに生き残っている人たちに聞くという話もあった。しかし、臆病な引きこもりたちが何かを知っているとも思えないし、それに面倒事に態々自分から首を突っ込むこともない。


静かな夜の町を美少女と二人で歩く。でもいい雰囲気になったりはしない。絶対に魔物がいないとも言い切れないから警戒を怠ることができない。なによりもそこら中にある死体の存在がそういう空気を許さない。俺は別に気にしないけど、東郷はそうもいかないようだ。


今が冬で良かったと思う、夏なら死体が腐って異臭を放っていた事だろう。

学校に着くまで少し時間が掛かるので、東郷に魔法の練習をしてもらうことにした。魔法に触れた経験があったからか、早く習得することができた。

火の玉とか出して目立つことをしていたが、特になにも起こらなかった。ホントに魔物はいないみたいだ。

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