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あくまで治療

「まあいい。治療するから足出せ」

差し出してきた足に巻かれた包帯の上から軽く触り、回復魔法を使う。自分に使うより少し手こずったが問題なくできた。


「あの……左肩も怪我していて、治してほしいのだけど」

「ああ、一回も二回もそう変わらない、全部治すから大丈夫だ」

「それじゃあ、少し後ろを向いてくれる」

「? ああ」


首を捻りながら、言われた通り後ろを向く。後ろからチャックを下ろす音がし、続いて衣擦れの音が聞こえてくる。

え? 何してんだ!? 何で服を脱いでいるんだ!?

突然の事態に闘真の頭がパニックを起こすが、聴覚は鋭敏になり衣擦れの音を正確にとらえていた。


「もう……大丈夫よ」

大丈夫!? 見てもいいのか!? いやいや、落ち着け、俺。

冷静になれ、ちょっと動悸が激しいぞ。別に脱いだといっても、裸になったわけじゃないだろう。

大きく深呼吸を一つすると、東郷の方に振り返った。


そこには、後ろを向いて椅子に座るキャミソール姿の東郷がいた。制服やジャージと比べて露出度がとても高い。艶めかしいむき出しの肩、少し見える美しい背筋が目に焼き付く。肩に掛からないように腰まで届く長く綺麗な黒髪を前に持ってくることで、普通では見ることができない光景が目の前にある。

自然と喉が鳴り見入ってしまう。


「あの……桐島君、大丈夫?」

いつまでも動く気配のない闘真を心配して東郷がこちらを窺ってくる。

東郷の身体が傾いたことで、その豊満な胸が闘真の目に飛びこんでくる。

しかも、位置的な関係で深い谷間が少し見え、否が応にでも視線が吸い込まれる。


「! ……あ、ああ、だっ、大丈夫、だ。何も、問題ない」

上擦った声で答える闘真の様子に、なんで慌てたような態度をするかわからず東郷は首を傾げる。


「――――!」

闘真の視線がどこを見ているかわかると、顔を赤くし両腕で胸を隠そうとする。しかしそれは逆効果で、隠しきれない豊かな胸が寄せられて迫力が増す。闘真の視線が胸に釘付けになっているのを感じ、背中を向けて黙る。髪の間から覗く耳は真っ赤に染まっている。


「…………」

「あー、……その、東郷さん?」

「……何か言う事はないの」

「えーと……眼福でした」

「――――っ! ……もういいわ」


なんとか許されたみたいだ。大変良いものを見せてもらったので、叩かれるぐらいは甘んじて受ける覚悟していたのだが、何もなくて肩透かしをくらう。

こういう時は、自分が悪くなくても理不尽な暴力を振るわれるものだと思っていたが、あれは二次元の世界だけか? 剣で斬りかかってこなくて良かった、現実でされたらシャレにならない。


それにしても、大きかった。制服の時はわからなかったが、まさかあんなすごいものを隠し持っていたとは。ホントあれはやばい。頭に焼き付いてさっき見たものが離れない。俺の魅了耐性をあっさり突破してきたよ。女の子と話す機会なんてほぼない俺の防御力、マジで紙装甲だな。


つーか、何やってんだろ、俺? ちょっと前までは生死を賭けた戦いを繰り広げていたというのに、なぜかラブコメ展開になっている? 別に悪くはない、むしろ嬉しいけど、急な展開に追いついていけない。


いつまでも、動かないとまた精神攻撃を食らうかもしれない。むしろそっちの方がいい……いやいや欲望に流されたら駄目だ。東郷は俺を信じて背中を晒しているんだ、その信頼を裏切るわけにはいかない。


深呼吸をして、気持ちを幾分か鎮めて包帯が巻かれた肩に軽く触れる。そして、回復魔法を発動……できなかった。


身体が砕けるような激痛の中でも使うことのできた魔法が使えない。

心臓がさっきから激しい鼓動を打って、全然落ち着いてねぇ。うん、見ているのが駄目なんだ。目を閉じて、そして深呼吸を繰り返す。


これは、治療だ。何もやましいことなんてない、そうこれは治療なのだ。肩の傷を回復魔法で治すだけの非常に簡単な治療だ。こんな簡単な事が出来なくては、この先やっていけないぞ、俺。


俺は欲望に流されそうになるのをなんとか抑えこんで、今度こそ回復魔法を発動する。魔法の発動に成功したことに、大きく安堵し息を吐く。


ジャージに着替えて一息ついたところで、寝ていた間の現状を確認していく。現在午後六時、ドラゴンと戦った時はまだ昼前だったのに、随分と長い間寝ていたものだ。


「俺が寝ている間に何か変わったことはあったか?」

「……その、ごめん。外を見ていなかったからわからない」

「……?」

「桐島君の看病を付きっきりでしていたから……あ、桐島君は悪くないよ。時間があったのに見ていなかった私が悪いの。それに、私寝ちゃってたし……」

「色々あったし、しょうがない……ちょっと屋上に行って様子を見てくる」

「それなら、私も行く」


東郷も行くことに拒否する理由はないので、一緒に行くことにする。一応外に出るのだから装備を着けていく。床に置かれている武具を見て、一つ見覚えのないものがある。闘真が首を傾げていると、東郷が説明してくれる。


「倒れていた桐島君の近くに落ちていたものだよ。ドラゴンのドロップアイテムじゃないかな?」

黒い籠手を手に取り、ステータスを表示する。


<超級>

筋力 45

敏捷 35

耐久 33

魔力 62

スキル

雷撃魔法


さすが、ドラゴンのドロップアイテムだけあって性能が高い。性能的におそらく、上級の上が超級なのだろう。ホント、ドロップして良かった。


東郷に武具をあげるのだが、どれを渡そうな。俺はこの籠手と一本剣があればいいかな。戦力バランスを考えないといけないのだが、他全部東郷にやってもつりあいがとれないがしょうがない。

ということで、片手剣と短剣、盾、マントを東郷にやることにした。


東郷冬華

筋力 48 (+33)

敏捷 41 (+17)

耐久 81 (+64)

魔力 72  (+72)

スキル

回復魔法

炎熱魔法


桐島闘真

筋力 138 (+65)

敏捷 113 (+55)

耐久 84 (+53)

魔力 82 (+82)

スキル

雷撃魔法

竜殺し


スキルに竜殺しがある。ドラゴン倒したし、あっても不思議ではないが、これスキルというより称号じゃないか。ステータスが高いのは、竜殺しのおかげだろう。全ステータスが+20されている。なにこれ、無茶苦茶いいじゃないか、竜殺し。


東郷と耐久と魔力は同じくらいだからいいが、筋力と敏捷が倍以上違うな。しばらくは東郷の強化を優先するか。

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