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第5話 上弦の月
数日前、外に出た時は、上弦の月だった。
私は上弦の月が好き。
速水御舟という日本画家がいるが、「紅梅・白梅」の絵の中には上弦の月が描かれている。
月が梅の花の遠くに見える。
月が絵の中の主役である梅をより美しくさせている。
早春の花と月の組み合わせは、少し妖艶で「色」があるのに、梅の木の枝のシャープな筆使いが気高さをも表していた。
あの絵の月が満月や下弦の月であったなら、また違う絵になっていたでしょう。
現実の上弦の月を見たい。
月に触れてみたい。
触れたくても触れられないもどかしさがあるとは、知っているのに。