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「お願いとは?」

高校戻りて~~~~




「あ……影山くん」


体育館に移動するまでの空き時間、自己紹介が事故紹介になった原因の片方が声をかけてきた。確かに、友達になりたいとは思ったけど、まさか向こうから声をかけてきてくれるなんて思いも寄らなかった。

 整った知的な顔立ちで、綺麗に斜めに分けられている髪。近くで見ると自己紹介の時には思わなかった印象も抱く。そう、彼もまたかっこいいと呼ばれる部類の顔立ちなのだ。とはいっても、深山君とは違って賢そうというか……深山君は全体からイケメンオーラが溢れているが、影山くんの場合は穏やかなかっこよさで、ゆったりした雰囲気があるのだ。って、なんでイケメンを考察してるんだろう。



「ごめんごめん、さっきのキラーパスだなとは思ったんだけど……まぁ彼に乗ったら盛り上がるだろうなって思ってさぁ」


そう言い、彼はノノの方に視線を向けた。確実にさっきの事故紹介の元凶は、目の前に座ってゲームをしている男"野々原 空"なわけで。二人の策士にしてやられた気分だ。



「野々原くんと波多野くんは同じ中学?仲良さそうだけど」

「いや、1年の時同じクラスだったんだ」

「あ、そういうことね。まぁさっきの事は置いといて、これから二年間よろしく。反応見るにいじりやすくていいねぇ」

「全然置いてないじゃん!?ほら、ノノもよろしく言っとけよ」



身体を机とほぼ同化させてポチポチとスマホをいじるノノに声をかける。

どうせやってるのはソシャゲだ、人と話しててもずっと画面を見てることだってある。この引きこもりめ。



「よろしく、野々原くん。君とは気が合いそうだよ」

「あ~よろしくお願いします、僕もあなたとは気が合いそうです」



怪しげな笑みを浮かべながら話す二人。初対面のくせになんだか仲が良さそうだ、何か通じるところがあったのだろうか。

あんまり似通ってるところはないと思うけどなぁ……。



「俺もノノって呼んでいい?

「え?まぁ良いですけど、ずいぶん奇特な方ですね」

「それはどうして?」

「ノノって1年の時に波多野さんが急に言い出したんですけど、クラス誰一人定着しないで終わったんですよ。だから奇特だなぁって」



そう、距離自体がすごく近いわけでもなかったから、下の名前でも呼べず、かと言って野々原って呼ぶのはちょっと距離感を感じて嫌だったからあだ名をつけようってなってついたのがノノ。

呼びやすいしどことなくかわいらしいから親しみも含めて言ってるんだけど、誰も使ってくれなかったんだよなぁ……浸透力の薄さがつらい。



「じゃあさ、はたっちゃん、俺にもなんかあだ名つけてよ」

「え、そんな、急に!?てか、はたっちゃんって何!?」

「仲良くなりたいからあだ名つけるっていうことなら、俺もなんかつけてもらいたいし。はたっちゃんはなんとなく呼んだ」

「まぁ良いけど、うーーーん……なんだろうなぁ……」

「そわそわして待ってまぁーーーーす」



ニコニコ、いや、ニヤニヤしながらこちらを見てくる影山くん。

期待の眼差しなのか、面白半分の眼差しなのかは一目見たらすぐ分かる。ここで少しノノと気が合うって言ったことが分かった気がする。



「うぅん、でも呼びやすい方が良いだろうし……裕ちゃんは?」

「ぶはっ、まじかよそれ!母親にも呼ばれたことねぇよ!」



途端、吹き出してお腹を抱えゲラゲラ笑っている影山裕。前を見るとノノも肩が揺れていた。

え、そんなに変?呼びやすいと思ったんだけどなぁ。



「波多野さんそれもう、金持ちのお母さんが息子呼ぶやつじゃないですか」

「ええ、呼びやすくない?いいと思うけどなぁ、裕ちゃん!」



納得いかなそうに一人でブーブー言ってたら、やっと笑いが収まった影山くんが一瞬考えるような表情をした。



「うーん、まぁでも俺下の名前で呼ばれたことないし、それで良いよ。裕ちゃんで」

「ほんとに!?ほらノノ別に変じゃないじゃん!」

「まぁ変じゃないことはないけど、変化球もたまにはありかなって」



結構唐突だったけど、このクラスになって初めての友達ができた。

しかし、この二人と関わるのは完全いじられキャラへ身を埋める覚悟が必要かもしれない。

いや、その状態はすでに始まっているのかもしれない。



「いやぁ、でも裕ちゃんの自己紹介もなかなかパンチあったよね」

「そう?いやいや、そちらには敵わない敵わない」

「それは二人が持ち上げたからでしょうが!」

「そんなことないですよ、青春したいって言ったから一言添えてあげただけです」



シレーっと言ってくるノノ、そんなちょっとお高めのフレンチのメニューみたいな心掛け要らないから!なんでも添えればいいと思ったら大間違いだからな!



「にしても、あの転校生もパンチあったよなぁ」

「あ、そうだよね。びっくりしちゃった」

「まさかの高校生活で結婚相手探します発言だからなぁ……まぁ危ないことに巻き込まれないといいけどさ」

「危ないこと?」

「ほら、あんだけ宣言したら絶対校内にすぐ広まるだろ?そしたらやっぱ不良諸君も見逃さないと思うんだよなぁ」



言われて気付いた。たしかにあんなこと言ったら間違いなく一週間も経たずに広まるだろう。

多種多様の人物に声をかけられる可能性だったあるわけだ。それに加えて、日本人離れした見た目がある。そうそう見逃すはずもない。



「結構な勝負に出たってことだよね」

「まぁでも流石にあの人もそれを踏まえた上で言ってるんじゃないですかね、ハイリスクなことは誰もが分かることですし」

「いやぁ、俺だったらできねぇよ!あの美貌で言うならいいけど、俺らが2年間で奥さん見つけるからよろしくちゃん!ってやばいっしょ」



裕ちゃんの言うとおりだ。俺らがもしあれを高校生活初日とかで言ったら、その後3年間の高校生活は暗く、また卒業後も果てしない闇が訪れるに違いない。世知辛い話だ。



そして、話に花を咲かせていたせいか、俺らの後ろに話の種である彼女がいるとは誰も思っておらず――――



「もし私がそういう目にあったら、あなた達は助けてくれますか?」

「あー助ける助ける……ってえ!?マジかよ誰!?」


裕ちゃんが最早意味の分からないリアクションをとってしまった。

しかし、驚いたのはノノも俺も一緒で。

自己紹介の時に感じていたオーラが、今目の前にいる。平均より少し高めな身長、スラリとした手足、端正な顔立ち、誰もが目を奪われるような優しい金色。

そう、話に入ってきたのは橘莉音さんだった。



「い、いつからいたの?」

「あの転校生もパンチあったよなぁくらいから聞いてました、いや、盗み聞きはあれですけど、私のこと話してそうだったんで……」

「……最初からやないかいっ」


よくわからないノリのまま裕ちゃんが突っ込んでて、なぜかノノがクスッと笑っていた。

ノノにとって裕ちゃんはツボなのかもしれない。そしてそれは逆も然り。



「あ、一応名前言ったほうが良いかな?俺は――」

「大丈夫よ、あれだけ盛大な自己紹介をしたのだから、ちゃんと覚えてます」



盛大、その表現があってるのか分からないが、印象的な掴みはあったらしい。

一発で名前を覚えてもらえたことに関しては、ノノと裕ちゃんに感謝するべきかもしれない。



「他の二人も覚えましたよ、影山裕さんに、野々原空さん。二人とも印象的だったので」

「わお、俺はたっちゃんほどインパクトなかったけどなぁー……あ、タメ口でいいですよ、橘さんも」

「ではお言葉に甘えて……程よく敬語崩していきますね」



言葉遣いが綺麗だな、と思った。

なんというか、敬語の中でも丁寧というか……心に染み渡る感じ?こんなこと口に出したら二人にいじられるだろうから絶対言わない。

でも、なんとなくそんな感じ。聞いてて心地いいというか、温かい。



「で、会話の内容を聞いて一つお願いがあるんです」

「ちょっと待ってくれよ、いきなり恋人はきついって。ほら、もっと段取り踏んでからにしよう?」



早とちりした裕ちゃんが早口で言い訳を並べる、完全に的外れだということに気付いてほしい。



「いえ、そうではなくて……あの、私まだこの土地とかよくわかっていなくて、それに言った側だけど……こ、怖い人には捕まりたくないの!」

「うん、それは俺らとしても心配だよね」





「だからその――――慣れるまで私のボディーガードになっていただけませんか!」




――高校2年、1日目。これは今まで通りに過ごせそうにない。

明日から旅行行くから更新5日間ありません!

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