「青春とは?」
初めまして。できるだけコンスタントに。
高校生に戻って青春して~~~~!知識だけそのままでかっこつけて~~!
よろしくお願いします。
「青春」という言葉を聞いて、皆さんはどういう感想を抱くだろうか。「あぁ、懐かしいなぁ……」「そんなもん知らん!」「おいしいやつだ!!」……等々、各種様々な感想を持つのだと思う。
青い春と書いて、青春。どうしようもなく恋い焦がれてしまうのが青春。彼女と二人で下校し、家まで送り届けるのが青春。部活動に励み、学校生活を全力で何かに注ぎ込むのが青春。昼休みに友達と何となしに集まって、他愛のない話に花を咲かせるのが青春。家にまっすぐ帰り、即座に制服を脱ぎベッドに飛び込みゲームをするのが青春。勉強に打ち込み、馬車馬の如く勉学に励むのがせいしゅ……?これは違う。そんなものは青春と認めてはいけない。
青春とは、常に清らかで輝いているものなのだ。
青春、青春……青春…………
「ああぁぁぁ!!青春こないんだけど!!!!」
「うるさいわね、口動かしてないで手動かしなさい!」
朝ご飯中に衝動が抑えられなくなったじゃんか、冷静に青春について考えていたのに……と、何処にぶつければいいのかも分からないもやっと感を心にしまい、俺は口を動かす。
お母さんが作ってくれたご飯を食べてる最中ね。何故こんなに青春と頭ごなしに考えまくっているかというと、今日から俺は高校二年生になる。去年は期待に胸を膨らませて登校したのに、一年間まるで変化なし!え!?こんなもの!?と叫び倒したくなるくらいには、青春のせの字もなかった。
しかし、この高校は2年生に上がるとクラス替えがある。しかも2年から3年になるときにはない。つまり……今日が決戦の日ってこと!今日のクラス替えで、俺にも青春の青春っていう字がすべて見えるかもしれないってこと。
だから、朝から頭には青春の二文字しかないわけで。え?なんでそんな青春ってうるさいんだって、青春は今しか楽しめないからだよ。大人になってから青春って言わないでしょ?学生時代に経験したことが、後々の青春っていう言葉になるわけだから。つまり!俺はそんな花のような学園生活がしたいんだよ。だから二度目のセリフだけど……
「決戦は今日!」
「ハル!遅刻するわよ!」
「うわ、ほんとだ!お母さん行ってきます!」
こうして俺、波多野春は青春への一歩を踏み出したのだ。多分。
俺の通ってる幸ヶ原高校は街中の方にあるから、少し距離の離れているところに住んでいる俺は電車通学。大体近くから来てる人が多くて、電車通学の人は殆ど見たことがない。まぁ一人で通学するのはもう一年も経験したから慣れたけどね、やっぱり若干寂しい部分あるよね。
でも、通学時間がすごい長いわけじゃないから、結構楽しんでる自分もいたりして……というか、一応一人通学仲間いるんだけどね。学校の最寄りの一つ前で乗ってくる奴、1年の時クラスが一緒だったからたまに一緒に帰ってたりしてたんだけど、キャラがすごいのよ。俺会話成立しないもん。
「四ヶ浦~四ヶ浦~」
電車内にアナウンスが流れる、そして電車の扉が開くと同時に……きた――――
「ノノ!おはよう!」
猫背でのろのろと乗ってきた彼に、俺は声をかけた。
「おはようございます、波多野さん」
「二年になってもその呼び方変わんないの?!」
病気か、と言いたくなるほど白い肌にクマ。『THE引きこもり』を体現している彼こそ、俺が一年の時同じクラスだった『野々原空』だ。
「変えませんよ、てか学年上がって早々うるさいんですね」
「そりゃ青春という名の学校に今から飛び込むんだからお前!テンション上がるだろ!?」
「上がりませんよ、そもそも青春なんてゲームでじゅーーーーぶん」
引きこもりと表した理由はここ。ノノは基本的に家にこもってゲームをしてたりで、極度のインドアなのだ。
外に連れ出そうとして家の前に行っても、鍵越しに「僕今日忙しいんで、じゃ」と言い、さよならされてしまう。
正真正銘どこの誰が見ても認めざるを得ない引きこもりなのだ。まぁ学校に来てるだけマシか。
「幸ヶ原~幸ヶ原~」
「お、着いたね。ノノ!」
「波多野さんみたいにおつむ弱くないから分かりますよ」
「また人のことバカにして!この!」
ノノは隙あらば俺をからかってくる。因みにノノっていうのは野々原って名字から俺が勝手につけたあだ名。
呼んでるのは俺だけ……べ、別に浸透力ないとかそういうことじゃないから!気にしなくていいから!
多少のじゃれ合いを入れつつも登校する、今更だけど、これって小さい青春って言ってもいいのかもしれないね、まぁさらに大きい青春を求めにこれから行くわけだけどさ!
「クラス替えの紙、玄関に張られてるって」
「あ、そうなんだ。ノノも一緒に見に行こうよ」
「まぁ、見に行かなきゃクラスわかんないからなぁ」
基本敬語のノノもたまにため口になる。俺は普段からため口にしてって言ってるんだけどね、本人的にこっちが楽っていうから……まぁ良いんだけどね!さて、運命のクラス分けを――――
「あ!!ノノ!同じくらいだよほら!!」
「うわうるさ……言われなくても見てますから」
「他は……知らない人でいっぱいだ!」
「当たり前じゃないですか、クラス替えなんだと思ってるんだよ」
「あ、そっか……当然だよね」
ノノと同じクラスということに舞い上がり意味の分からないことを言っちゃった。
ざっと見て、前と同じクラスの人を探すけど……ノノを合わせて3人みたいだ。
A組からF組まであるなかで同じになれる確率はそう高くないのかもなぁ……まぁ!その分知らない人とクラスになることで俺の青春確率も上がるってことだよね!詰まるところはそれを大切にしていきたい。
今年の目標は、青春!!
「ノノ俺の前の席じゃん!ふぅ!」
「最悪だ……後ろにこんなうるさいのがいるなんてたまったもんじゃない……」
「うるさいとかやめろよ!静かだろ?」
「存在がうるさいって分かります??」
「どこがだよ!」
「あ、ちょっと今からゲリライベ始まるんで。声かけないでください」
人のことはお構いなしと、飄々とした雰囲気で携帯を触るノノ。一年の時から度々絡むけど、常にこんな感じだ。まぁ、俺自身嫌いじゃないし同じクラスになれて良かったかな。
生徒が集まり、担任となる先生が教室に入ってきたが……話が始まらない。
「なぁ、ノノ。この時間何?」
「何って、HRって書いてるじゃないですか」
「いや、先生もいるのに何も始まらないじゃんか」
「まぁ……あの人の顔見る限りまだ揃ってないって感じじゃないですかね」
そういって担任のほうに視線を向けた。
確かに時計を何度も確認したり、教室の外を見たり、明らかに何かを待っている感じだった。
そういえば、右斜め前の席が一席空いている、始業式の日に体調不良とかで休むことなんてとんでもなく珍しいわけでもないし、特に気にもしていなかったけど……先生が気にしているのはこの席の人……?そんなことを薄っすらと頭に思い浮かべていると、廊下から騒々しい駆け足の音が聞こえてきた。
ガラッ!!っと勢いよく扉があき――――
「す、すみません!遅刻ですか!?」
「い、いえ……あなたのことは事前に聞いているので、大丈夫ですよ。それじゃあ、これで全員そろったかな」
ドアの先にいたのは細身で長身のスタイルに、透けてしまいそうなほどの白い肌、そして……目を見張るほどの綺麗で長い金髪だった。
「え、ノノ……去年あんな人いたっけ?」
「いや、見たことないですよ……てかなんだあれ、どこのゲーム出身だよ」
ノノが言うのも頷ける。その人は本当にゲームから飛び出してきたかのような……どこか浮世離れした姿をしていたからだ。
なんだか心がざわついた、残りの高校生活、もしかしたら何かあるのかもしれないという期待が俺の胸を抜けていった。
「――じゃあこれから二年間このクラスでやっていくので、よろしくお願いします」
先生の自己紹介が終わった。そして、勝負はここからだ。この二年間の始点にして、高校生活の分岐点。ここで収束するのではない、これから分岐が始まるんだ。要約するところの――――自己紹介
自己紹介は上手く滑れば、いじられキャラになれるが、微妙に滑れば痕が残る。悔恨の情が広がらないようにしなければいけない。
それを踏まえて考えると、ボケを狙うのはあまり得策ではない。普通の自己紹介をし、この人普通に話せる人だ!と思わせることが重要。だから俺は普通の自己紹介をする。この計算に間違いはない、物理学者もびっくりな綿密な計算だからな。
「じゃあ、とりあえず自己紹介からしましょうか。席順に立って始めてください」
――――青春の航路に舵を切る時間が、ついに来た。
読了ありがとうございました。