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桜の花びらのように
桜の舞う季節に彼女と出会った。
儚げなその横顔からなぜか目が離せなかった。
眩しさに目を細めているようにも、泣きそうな顔にも見えて、胸がきゅっと締め付けられた。
ふいに目元が光ったように思えて無意識で手を伸ばしかけていた。
彼女はそんな僕に気付くと儚げに微笑んだ。
その目には涙は浮かんでいなかったが、笑っているのに泣いてるようにも見えた。
僕なら悲しい顔させないのにー・・
ふとそんなことが頭をよぎった。
(僕なら?……どういうことだろう
彼女は初めて会った人なのに…)
自分の中にふと浮かんだ疑問に気をとられている間に彼女は僕に背を向けて歩いていた。
僕は彼女の儚げで凛としたその後ろ姿がまぶたの裏から離れなかった。
もしかすると一目惚れをしてしまったのだろうか。
そんなことを考えてももう遅いようだ。
まもなく桜の時期は終わる。
儚げな彼女は僕の手が触れる前にそっとすり抜けていく。
きっともう会うことはないのだろう。
まるで桜の花びらのように。




