走れ私!
…………。
…………。
…………。
「…………はっ!」
ふと時計を見る。
「!」
いけない!もうこんな時間!
「急がないと!」
私は急いで服装を整える。
「まだ一時間以上も時間あるから大丈夫」と油断して微睡んでいた自分が馬鹿であった。
なんとしても予定の時間に間に合わなければいけない。
ただ一つ、数学オリンピックに出場したことただそれだけしか取り柄の無い私が手に入れることが出来た、いわばこれが私の最後の仕事といえるだろう。
今まで色んな塾や教室を転々としてきた。私は数学しか出来なかったし、度重なる寝坊や遅刻などで次々と仕事場から飛ばされていった。挙げ句のはてに個人で開講する事にしたのだが、中々生徒が来てくれなかったしその上経費も払えなくなり、私は途方に暮れていた。
そんな中、仕事が入って来てくれたのだ!教えるのは数学だけで良いという……。これは神様が私のために与えて下さった、最後の仕事といえるだろう……。そうに違いない……。
私は急ぐ。なんとしても、なんとしても間に合わねばならぬ。生徒が待っているのだ。私を、私の授業を待っているのだ。なんとしても間に合わねばならぬ。…………走れ私!夕日はまだ沈んではいない!走れ私!走れ私!
この後「おいメロス……、君はほとんど裸じゃないか…………。早くマントを着たまえ。」とかいう展開には一切ならないのでご安心下さい。
次回はそろそろ教師と生徒のご対面ですかね?
早くなるよう頑張ります!