第98話
翌日の昼前。すでにルイスの準備は整っていた。胸鎧を身に着け、刀剣を佩用し、部下を周りで待たせてる。正午の少し前、古式に従った隊長が、丘の幕屋の中から現れた。隊長は、鎧、武器としての刀、さらにはスペア武器としての槍を持ち、ルイスに立ち向かおうとしていた。いわゆるプレートアーマーと呼ばれるものであり、ただ、胸部と頭部を保護するための簡易なものだった。
「時は来たっ」
ルイスは座っていた椅子から立ち上がり、相手が来たことを知らせる。相手は剣の柄をルイスへと差し出し、ルイスも自身の剣を相手に渡す。そして隅々まで確認してから、互いに再び渡した。
「今回の決闘の見届け人は、ここにいる全員である。また、式に従い、証人を立てることとなる。互いに2人ずつを証人とせよ。我が証人はここに控えたる両名である」
ルイスの後ろに立っていたのは、団長補佐と団員代表の2人だった。彼らがこの決闘のルイス側の証人となり、仮にルイスが負けた場合にマウンダイス公爵へと結果を報告する義務がある。一方で隊長側の証人は同じく2人。それぞれどうやら副隊長らしい。一礼し、証人らは四角くなるようにコーナーを作る。この四角形の中で闘うことになる。また、その外側には立会人としてそれぞれの隊員らが結果を見守ることになっていた。証人は3人以上の判定で勝敗を決定し、立会人が決闘エリアに入ることを防ぎ、場合によっては自ら武器を取り相手へと戦いを挑むという役回りになっていた。ただ、通常はそこまではなく、事の成り行きを静かに見守るくらいの仕事だけだった。
「証人はそろった、立会人はそろった。時は満ちた!」
ルイスが最後に宣言をした。この宣言こそ、決闘が始まった合図となる。
「この度の決闘、誠にありがたく思う。いざ」
剣をかまえる隊長に、ルイスも応えた。同じように剣を構えたのだ。




