第92話
ルイスらはすでに出遅れていた。しかし、それ以上に問題が山積していることに、集合してから気づくこととなる。
マウンダイス公爵を頂点とし、その傘下に入った者のうち、主だった者らを集めた幹部集会において、その統一のなさがルイスには目についていた。
「……では、この通りに」
公爵が最終的に会議を主催していたが、その取りまとめをしているのは騎士団長であり、ルイスであった。最も近くにいる騎士団長は当然として、その補佐としての役割を期待され、今後を担っていくこととなるルイスの勉学のために、この会議は行われているといっても過言ではない。騎士団長は会議の直前に、ルイスへと2、3アドバイスをしていた。その通りに、ルイスは、会場全体を眺め、会場に集まっている個人を見つめ、そしてこれが正しい事かどうかを考えていた。
「では、次の課題として、紋章を統一するかどうか。これについては、私の紋章を中心としてもらいたいと思っている。国王となった際にも、私の紋章がその旗になびくことだろう」
公爵の提案は、すでに根回しも完了している。それがために、反対票は一切なかった。
他の課題についても、同じように決していき、話し合いは終わる。それから、マウンダイス公爵はホーンラル公爵がすでに王都のそばに来ていることを知らされた。
「それは本当かっ」
思わずの声に、数人が振り返る。ルイスもそのうちの一人だった。
「いかがいたしましたか、公爵閣下」
「ああ、挙兵する時機を逸しつつあるようだ。すぐにでも出ていかなければならないところではあるが……」
公爵はちらりと会場に残っている面子を観る。その一人一人は闘志にあふれているし、一応の訓練によって最低限の集団行動はできるようになっていた。それでも不安はなお残る。
「お言葉ではございますが、統一性が足りないように思います」
ルイスはあえて、そのことを指摘する。ただ、小声で公爵に耳打ちする形をした。聞こえているのはすぐそばにいる騎士団長と、話し相手の公爵だけだろう。
「統一性、だと」
「はい、我々が、我々の仲間だという標識がないのです。これでは、いつまでも閣下についていくという気概がないも同然。そのために、集団としての全体意識に欠け、ひいては個々が独立して動くということになりかねないと思います」
「……つまりは、負けると」
「そのように解釈していただいても結構です」
騎士団長の指摘に、ルイスは静かに答える。それは、どうも騎士団長も、公爵も考えていたことのようで、ルイスからの話に少し手を加えて、翌日に発表することとなった。
それは、共通の服装をし、共通の武器を用いて、共通の兵装をするということだった。仲間意識を強めるには、制服を整えるということは、古今東西行われていることであり、それを公爵はしたに過ぎない。それでも、その影響は大きく、これまで以上に集団としての動きに磨きがかかった。
この会議から1週間後、いよいよルイスらは王都を目指して行動をすることとなるが、実は、それには少し遅かった。




