第8話
ルイスは、出てくる人を、基本的に見逃すことなく切り捨てる。ただ、どう見ても兵士ではない人については、そのまま何もせずに見逃した。その分の体力を、別の方面に振り分けるためだ。
「領主はどこだ!」
その叫び声は、全てを震わせた。この戦乱の音にまみれた中でも、遠くまではっきりと響いた。
領主は何処に居るか、その答えを、誰もが欲していた。この戦争を終えるためには領主の首をはねるか、負けたことを認めさせるか、そのどちらかが必要だからだ。だが、領主はこの時は返事をしなかった。
兵士は、徐々に数を減らしていた。それは、ルイス一人の働きのおかげという面もあったが、ルイスの働きぶりを見て、一層士気をあげているおかげでもあった。敵兵は、この動きをみて、散り散りに逃げだしている。ルイスたちは、そんな兵士たちをとらえるようなことはせず、ただ、一刀に切り捨てた。
そして、その時がやってきた。
「ここが城か……」
石造りの、堅牢な城の足元まで来たところで、頭上から弓矢が射かけられる。だが、ルイスは兜をかぶっていたおかげで、衝撃こそはあったが、傷は一つも負わなかった。
ルイスは、その射かけられている頭上を見上げることなく、目の前にある城の侵入経路を探っていた。
「ここだな」
そこは、鉄でできた大きな扉だ。
「破城槌を、ここへ」
用意していた巨大な丸太を、近くの兵に行って持ってこさせると、それを使って、扉の突破を図る。
ズシーン、ズシーンと巨大な音を立て、槌が扉へ突進を繰り返す。鉄でできていると言っても、その扉を支えるところはもろい。そのため、幾度と突撃をかけていると、自然と扉は外れた。
「突撃っ」
ルイス自身も、扉が向こう側へと倒れるとほぼ同時に、中へと入る。
入ったはいいが、敵の城の構造は謎だらけだ。右も左も分からない。だが、警備兵は徐々に増えていることだけは分かる。ルイスがそこまで考えると、その場にいる全員に問いかけた。
「領主は何処に在りや」
「ここだ」
領主は、すでに完全武装で大広間らしきところに突入してきたルイスを待ち構えていた。彼が持っている長細い刀。そのすらりとした刀身は、だれもが見てもほれぼれとするだろう。
だが、ここでは、誰もそんなこと気にしない。気にするのは、生きるか死ぬか、それだけである。