第87話
副団長就任式が終わると、ルイスは名誉団長であるマウンダイス公爵の私室へと呼ばれた。公爵の他には、騎士団長、妻であるランゲルス、そしてルイス本人だけだ。
「まずは、君の副団長就任を祝って」
お酒は飲めるよね、と公爵がルイスとランゲルスに尋ねる。彼らは、飲めます、とだけ答えて、細長いワイングラスのような杯を受け取る。すでに半透明の黄色い液体が注がれており、それが手から手へと移るにつれてわずかに揺れる。それが白ワインだと、ルイスはすぐにわかった。当然、ランゲルスにもその知識はある。4人が杯を持ち、目の高さほどまで上げて乾杯をすると、すぐに一口飲む。それから近くのサイドテーブルへと杯を置き、本題へと移った。
「君らはすでに知っているだろうが、我々には幾人かの仲間がいる。その中でも、君は最も心強い仲間だ」
「お褒めのお言葉、ありがたく存じます」
ルイスが公爵の言葉に少し頭を下げる。しかし、と言葉を継いで、公爵が話しを続けた。
「我々以外にも、王位簒奪を狙う者は多い。いまだ強国であるダッケンバル王国、公爵であるサザール公爵、ホーンラル公爵。ホーンラル公爵は公爵当人ではなく、騎士団長が強いのだがな」
これらは後の列強と呼ばれることとなる。ダッケンバル王国、サザール公爵国、マウンダイス公爵国、ホーンラル公爵騎士団領の4つである。これらのうち、誰が王位簒奪をしてもおかしくはないとされた。無論、ダッケンバル王国が生き残れば、簒奪とはならないが。




