第84話
1か月後、ルイスが町から旅立つ日。3人が見送りに来ていた。それに、ここに住む人たちも。ルイスと一緒に、妻であるランゲルスも行くことになっていた。通常は妻帯者は、妻を残して出立するが、ルイスは副団長という高位の職に就くこととなったため、特別待遇となったことが影響している。特別に改造された部屋が用意されており、そこにこれからは騎士団副団長として居住することになる。
「それじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
みんなが見ているということで、エルラ、シュトール、クリスの3人は敬語で接している。ただ、誰もが5人が大の親友であることを知っている。ただ、TPOをわきまえた結果、このような形となったというだけだ。
「道中は、我々が護衛します」
騎兵が4人、役場の前の広場で待機している。彼らは、騎士団長から派遣された班で、ルイスとランゲルスを保護し、護衛するために派遣されてきた。乱戦の時代となった今、子供らだけで長旅をするということはあり得ず、大人が束になったとしても敵わないような山賊が跋扈している。そのため、ルイスとランゲルスだけで移動することは極めて危険だ。おそらくは、半分たどり着けずに襲われることだろう。それもあって、団長の命によってルイスらの護衛部隊が編成され、それがこの4人である。選抜された中での精鋭なので、腕に自信がある者ばかりだ。
「よろしくお願いいたします。ルイスは、この町に必要な人材ですが、その留守中は、私たちが守ります」
「しっかりと頼むよ、何かあれば手紙を飛ばせばいい。すぐに返信を出すか、駆けつけるかするさ」
「了解しました、騎士団副団長殿」
敬礼を受けるルイスは、そんな堅苦しい肩書で呼ばれることとなる。騎士団員の一人ということで、すでに敬称は殿となった。そして、大声援を受けつつ、渓谷を二人は馬に乗って後にした。