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我が帝国は、成れり。  作者: 尚文産商堂
第4部「戦国時代」:第1章「大抜擢」
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第83話

 ルイスへと騎士団副団長職への就任通知が届いたのは、わずか5日後のことであった。敢闘団員役場でその話を聞いたルイスは、使者である騎士団団長補佐へと首を垂れた。

「謹んでお受けいたします。今後とも、どうぞご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」

 定型文ではあるが、ルイスは口上を述べ、騎士団の副団長職へと就くこととなった。これに喜んだのは、領民である。少し前までは想像もできなかったような生活をしていて、今では騎士団の領民を名乗ることもできるというのは、喜ばしいことのようだ。

 騎士団の説明を受けるために、ルイスは警備班長である4人とともに執務室へと案内した。

「現在、ここは騎士団支部とされておりますが、これはどのようになるのですか」

 ここはルイスの所領である。そのため、ルイスが上座である執務机へと座り、その向かい合う形で団長補佐が一人用の椅子に座った。他のメンバーは、左右に机に対して垂直になるように置かれているソファに座る。

「敢闘団領である以上は、それを変更することはできません。一方で、騎士団長たる公爵閣下は、新たに騎士団領を編入する権限をお持ちです。よって、今は敢闘団領かつ騎士団領となります。公爵閣下が後々、さらに所領の名義替えを行われるでしょう」

「その点、承りました。私としましては、公爵閣下にしたがうと明言しましたので、公爵閣下のご判断を信頼します」

「わかりました、そのことを公爵閣下へとお伝えします。それで……」

 と、団長補佐はちらりとランゲルスを見る。ルイスの妻であるランゲルスは、まだ子を宿しておらず、それゆえに、自由に動くことができた。しかし、ルイスの、すなわち敢闘団員兼公爵騎士団副団長の妻という身分もあり、公式行事や表立って動くということは少ない。

「妻は連れていきたいと思っております。そのことも公爵閣下へと」

「わかりました、それもお伝えしましょう。最終判断は、全て公爵閣下が行われますので、その後判断を待ってから、ということになります。また、適当な時期にご連絡を行い、副団長の就任式典を開きたいと考えておられるようですので、そのことも併せてお伝えします」

「式典の件、了解しました。服については……」

「ああ、忘れるところでした」

 団長補佐は、懐から別の書状を取り出す。こちらも、公爵の紋章で封印がなされている。それが開けられていないことをルイスが確認すると、団長補佐が封を切った。

「服装についての指定です。数多くの事柄がありますが、公爵閣下の行きつけとなっております団服専門の店があります。そちらへとお越しになられることを期待しております。そこでしたら、団費から引かれますので、費用はかかりません。その他の店に行かれる場合は、その費用は副団長が直接支払わなければなりません。この場合の費用弁償は一切ありません。なお、指定された店を利用したとしても、こまごまとした手回り品を新たに作る場合には、これらの費用は自腹となることをお忘れなきように」

「その点、しかと承りました」

 ルイスは、これら以外にも、連絡手段の方法や、騎士団の本庁となる建物の位置などを聞いて、団長補佐と別れた。見送りが終わり、再び執務室へと戻ると、他の4人と話し合う。

「どうだろう、これでいいのだろうか」

「いいんじゃないかな」

 エルラがルイスへと言った。

「そうだよ、これ以上ないと思うよ。あのときに言ってたじゃないか、吟遊詩人にずっと歌い続けられるような人になりたいって」

 クリスがエルラに続いて話す。クリスの横では、シュトールが力強くうなづいていた。

「分かった分かった。僕はこの道が正しいと思って、行き続けるだけさ。あの時の傷は、まだ治りそうにないしな」

 太ももの裏側、木登りで落ちた時にできた傷だ。結局あの後、ルイスの両親には木の実をとっていたという言い訳をして、ごまかしきれていた。あの時の話は、ここにいる5人以外誰も知らない。

「ともかく、そういうことで。公爵閣下につくと決めたんだ。後戻りなんてできないよ」

 ゆっくりと馬で帰っていく団長補佐を、執務室の窓からみていたルイスが、ぽつりとつぶやいた。

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