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我が帝国は、成れり。  作者: 尚文産商堂
第3章「反乱」
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第80話

「それで、ルイスは」

 エンディケールは、ルイスへと尋ねる。質問が意図するところは二つある。一つは、ルイスとエンディケールの先輩後輩という関係が壊れることがあるのか。そして、戦場に立った時、殺しあう関係になるのか。

「私は、先ほど確認をしました。私たちはマウンダイス公爵閣下につき、戦乱の世を駆け抜けていくつもりです」

「……そうか」

 大きく息を吸い、エンディケールはルイスへと告げる。

「僕は、男爵という地位を承継することとなっている。陛下を裏切ることはできない。どうだろう、翻意してくれないか。今ならば、まだ僕らは戦わなくてもすむ。どうだろう」

 エンディケールは落ち着いた口調で、しかし必死さを顔に滲みさせつつルイスを説得しようとする。しかし、ルイスは周りにいる4人に目配せのような視線を送りつつ、エンディケールへと語りかける。

「私が今、ここにいるのは、公爵閣下のおかげなのです。陛下から確かに私は恩を受けました。しかしながらそれ以上に大恩を、公爵閣下から受けました。どうして公爵閣下を裏切ることができましょう。それに、私には優秀な親友がおります。彼らを説得した上で、ならば私は先輩とともに戦えましょう」

「わかった、決意は固いのだな」

「ええ、残念ながら」

 エンディケールは、周りにいるルイスの親友らを見回す。そして、懐から書状を取り出した。封印がされていて、それはダッケンバル5世陛下からのものだということがわかる。

「これは」

 ルイスは一応恭しく両手でその書状を受け取った。ただ、封印の紋章を見ると、封を開けようとしない。

「詔勅だ。反逆者への、な。今なら間に合うから、戻れっていうことが書かれている。一応届けて欲しいということだったから、ここへやってきて届けたわけだ。だが、返事はいらないな」

「ええ、誠に申し訳ありませんが」

 ルイスは手紙を見ることなく、机の上へと置いた。

「ならば仕方ないな」

 ため息のような息を吐き、エンディケールは部屋を出ようとする。扉に手をかけて、ルイスを見た。

「次会った時はきっと戦場だろうな」

「ええ、おそらくは」

「だろうな」

 エンディケール生きてこうして会うことはないだろう。そう思いつつ双方はここでは何も争いをしなかった。それをしても意味がないことぐらい、互いに知っていた。

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