第78話
国王の元には、次々と国王の臣下から離脱したという知らせが入っていた。
「何がいけないというのだ。私は、私の生きたいようにしているだけだぞ」
「左様です。して、離れた者には何を?」
審議院と呼ばれる組織が、国王の直属の機関としてあった。元は公爵会議と呼ばれたものであったが、離脱していく公爵らによってその機能は停止寸前となっていた。そのための代替の組織である。いまだにダッケンバル国王の元にいる爵位者のうち、国王が指名したものが審議委員として会議を行っている。国王に質問をしている者は、審議院院長だ。無爵位者ではあるが、今となってはもっとも国王に近い人物の一人である。
「昔から反乱者はどうなっているかは決まっているだろう。当たり前のことだ」
「では、首魁は斬首ということになりますが、それでよろしいでしょうか」
「ああ、構わぬ」
審議院院長が国王の裁可を受けて、命令書を作成していく。羊皮紙に羽ペンを走らせていった。
「ふぅ」
一息つくころには、すでに命令書は仕上がっていた。命令書はすぐに国王の元へと院長が直々に持っていく。
「陛下、少々お時間よろしいでしょうか」
「なんだ」
「命令書ができました」
「読み上げてみろ」
「はい。『国王陛下は、ご自身に拠る権限に基づき、審議院院長に命じてこの命令書を作成させた。第一に、この度起こった反乱は、国家に対する反逆であり、国王に対する大逆である。第二に、大逆と問われる者は、別に定めるものとするが、国王及び審議院院長によって変更することができる。第三に、大逆と問われる者については、斬首の刑とする』。これでいかがでしょうか」
「構わぬ。今のところ、大逆となるべきものは、ホーンラル公爵だな」
「ええ、ただ、他の公爵も順次指定することとなるでしょう」
「それほどに切迫しているのか」
「ええ、残念ながら」
「……ならば仕方あるまい」
国王は、静かに、とても静かにそう呟いた。




