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我が帝国は、成れり。  作者: 尚文産商堂
第3部「王国の凋落」:第1章「相談事」
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第72話

「みなさま、宴もたけなわですが……」

 しばらくして、ルイスがこの祭りの終わりを知らせる。残念そうな顔をしている領民に対して、ルイスはさらに続ける。

「私たちは、これにて引き上げさせていただきます。ただ、皆様方は、今日一日はお楽しみください」

 皆の顔を見た時、ルイスはこれで終わらせない方がいいと判断した。それゆえ、ルイスは、先に帰る公爵を見送ってから、ランゲルス、エルラ、シュトール、そしてクリスを役所へと引き入れた。


 執務室へと4人を通すと、先ほど公爵から聞いた話を全員に話す。

「……それで、どう思う」

 ルイスの問いかけにすぐに反応したのは、ランゲルスだった。

「私は賛成ね。今のままだと、重税過ぎて国が瓦解するのは目に見えてるわ。現に、私たちも、このままだといけないと考えているぐらいだしね。だから、どこかのタイミングかは分からないけど、この国に別れを告げることがあると思う」

 それに賛同するのが、シュトールだ。

「僕も賛成。公爵閣下はとても強いお方だ。閣下にちていけば、この町ももっともっと大きくできる。それに、僕らはまだまだ弱い。誰かの後ろ盾が必要な時でもあると思う。閣下は昔から目にかけてくださっているから、後ろ盾としては最適だと思う」

「ふむ……」

 それらを聞いてから、さらに別の二人へとルイスは聞いた。

「君らはどう思う」

「うちは反対」

 エルラがはっきりと言った。

「今はまだ王国はあるし、この町の維持や警備にも力を割かないといけない。このまま戦争に入るのは、かなりきついと思う」

「自分も反対。今はね」

 クリスはそう話す。

「現状、国王はいる。重税は課されているが運営は成り立っている。人もたくさんくる。この状態がいつまで続くかはわからない。いずれは破裂することだろう。ただ、それまでは、このままが一番いいと思う」

 4人の意見を聞き終えたルイスは、少し悩んだ。今すぐ返事をするべきか、それともせぬべきか。

「みんな意見をありがとう。また明日、この件についての話をしよう。公爵へは、手紙を送ればいいと思うし、それほど急いでいるようにも見えなかった」

「了解。それでは」

 ルイスが伝えると、少しだけ間が空いてから、4人は執務室から出た。

「さて、どうしたものか……」

 厄介だ、ルイスは思っていた。だが、先王ならともかく、今の国王であるダッケンバル5世に義理立てする必要性はない。単なる国王であり、先王から勇士団員にしてもらった、そういう間柄だ。今王からは準爵と敢闘団員の称号を受けた。しかし、このままだと出世することは到底ないだろう。

 執務机からゆっくりと立ち上がり、そして外の景色を眺める。この景色ができたのは、今王のおかげではない。むしろ、マウンダイス公爵のおかげだ。そう考えると、つくべき者も自ずと見えた。だが、その時期ではないということも。


 翌日朝8時、ルイスは4人を集め、定例会と称した会合を開いていた。

「昨日話したことだが、1日かけてようやく結論を出したよ」

「その結論は?」

 ランゲルスがさらっと尋ねる。

「思うに、公爵へとつくべきだと思う。あのお方は、思う以上に僕らの中に影響力がある。国王に対する反乱をするかどうかは別問題だが、それまでは表立っての行動は避けるべきだろうな」

「つまり、このままってこと?」

 エルラが言う。

「今のまま、何にも波風立たない状態が続くことを切に願っているだけさ。人が死ぬのは勘弁して欲しいからな。ただ、言われた通り、どこかで破綻することは目に見えている。このままの状況が、国王の浪費が終わらない限りは、絶対反乱は起こる。その時は、公爵へつくつもりだ」

「てことは、結論は」

 クリスはルイスへと結論を聞いた。

「保留だな。公爵へは、今は時期ではないが、いずれは。という内容を手紙で送る」

 みんなありがとうとルイスは礼を言い、それから朝の業務をはじめた。

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