第71話
ゆっくりとではあるが、公爵、ケルトン、そしてルイスの3人は立食パーティのところから離れる。ただ、怪しまれないように、パーティが行われている庭から出ることはなかった。誰もが食べること、話すことに集中していて、警備員が目を光らしているので、なにか騒ぎが起こるというのも、どうやらないようだ。そんな雰囲気だったので、ルイスたちも、これからの話に集中することができた。
「……最近、雲行きが怪しいと思わないか」
「ええ、今にも雨が降りだしそうに」
周りから見れば、天気の話をしていると思うだろう。だが、そうではない。
「税金は、また重くなりました。これで今年だけでも3回目です。民が疲弊しては、国が維持できるはずはないでしょう」
ルイスが小声でいう。少しずつ離れている足が、壁際で止まった。ちょうど、建物を背にしている形になっている。ただ、建物の中は倉庫だ。この時間は誰もいないことはすでにルイスは知っていた。
「……一つ、教えておこう」
ルイスへと公爵は耳打ちする。
「私は、王国は終わりだと思う。まもなく、ではあるがね」
ルイスが何か言う前に、公爵は手に持っていたワインのグラスを軽く上にあげ、微笑んでいた。