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我が帝国は、成れり。  作者: 尚文産商堂
第2章「才能の開花」
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第5話

 ルイスが次々と倒していくのを見てか、敵は徐々におされだした。

「おうっ!」

 ルイスの一振りで、敵は首を切られ、腕を刻まれ、地に倒れていった。必要なのは、力と勇気と思いきりである。ルイスは、そのすべてを兼ね備えていた。

 その勢いを見てか、ルイスの周りが徐々に人が少なくなってきた。後に鬼神と評されるルイスの初陣である。

「矢を射かけよ!」

 ルイスの周りに人がいないということは、すなわち、遮蔽物が少なくなるということだ。それゆえ、すきを突いて、敵の司令官は命じた。特にルイスめがけて、ヒョウと矢が飛んでくる。

 だが、不思議とルイスには当たる矢はなかった。ルイスに当りそうな矢は、知らぬ間にあさっての方向へと飛んで行く。まさに、神がルイスを守っているかのようにも思えるほどだ。

「何をしている、俺はここだぞ!」

 その時、ルイスは叫んでいた。そして、笑っていた。怖くて笑っているのではない、楽しくて笑っているのだ。戦争が、戦いが、殺し合いが楽しいのだ。闘争本能をかきたて、血沸き肉踊るこの争いが楽しいのだ。それゆえに、ルイスは笑っている。


 だが、楽しみは、すぐに終りを迎える。遠くから、楽団の音が聞こえてきた。

「撤退だ!」

 すぐに敵指揮官が命令を出す。その声が聴こえることはなかったが、敵の陣地へとどっと雪崩れ込むきっかけとなった。それは、敵も味方も関係なく、ルイス側から見れば敵の陣地、敵から見れば味方の陣地へと、いっきに人がなだれ込んだ。

「司令官は、どこだ!」

 すでに声も枯れ、何人の敵を切り倒したかわからないほどになっていた。最初は一緒にいたルイスの幼なじみたちも、どこにいるのかわからない。生きているか、死んでいるかもわからない。だが、ルイスはそのことを考えなかった。考えたのはただひとつ、この戦闘を終わらせるために、敵の司令官の首を掻き切ること、それだけだった。

 司令官は、すぐに見つかった。一人騎馬で移動しようとしていたが、兵士たちにもまれ、馬の上で踊らざるをえない状況になっていたからだ。だから、遠くからでもよく見えた。

「そこだなっ」

 襲いかかる兵士はすでにいない。ルイスは一人で、恐ろしい形相をしつつも、司令官に向かって突き進んでいた。たまにくる敵兵は、問答無用で切り捨て、襲いかからない兵については見逃した。

 そして、ついに、司令官の元へとたどり着いた。

「覚悟っ」

「た、助けてくれぇ」

 情けない声を出しながら、司令官は馬上から引きずり降ろされた。そして、ルイスの一刀のもと、首が宙を飛んだ。天高く、その首は飛び跳ねた。

「首、取ったぞ!」

 司令官の首に深々と剣を突き立て、それを目立つように右手で誰にも見えるように掲げる。それを見て、敵方は恐慌状態となり、もはや収集がつかないところまできた。

 そこへ、マウンダイス公爵率いる騎士団兵がやってきて、方方へと敵兵を散らした。


 敵兵がいなくなった敵の陣営で、生き残った者たちを集めた上で、その全員の前でマウンダイス公爵はルイスを見つけて近寄った。

「おぬしか、敵司令の首を討ち取ったという者は」

「そうです」

 声をかけられたから、ルイスはマウンダイス公爵の前へと歩み出る。

「うむ、褒美をやろう」

「いえ、褒美はいりませぬ。ただ、この戦争に参加させていただきたい」

「ふむ、ならばお主を公爵による権限によって、ここに勇士見習いとし、隊長に任命しよう。これで、最前線でお主は戦える」

「ありがたいです」

 一応の礼として、ルイスは軽く頭を下げた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 敬語の概念があるんだね、農民なのに使えるんだ
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