第55話
侍女、フルリオ、ルイスの順番でダイニングへと入ると、ほぼ同時に別の扉から公爵が入ってきた。
「おはよう」
「おはようございます」
立ったまま、二人は公爵を迎えた。
「まあ、座ってくれ。立ったままだと侍女も給仕が難しいだろう」
「はい」
ルイスがまず座る。それからフルリオだ。侍女が若干椅子を引いてくれ、そして押す。侍女は一礼してから部屋の隅に侍した。
「では、朝食を取りつつ、今日の議事進行について話しておこう」
そばに立っていた別の侍女に目配せをして、公爵が朝食を持ってくるように言った。はい、ただいま。と侍女がいうと、すぐに朝食用のプレートを持ってくる。今日は昼食が食べられるかわからないため、朝食を多くとるようだ。
炒り卵、ソーセージ、紅茶、あとは豆を煮たスープが出てくる。それらを適量取っていくと、侍女が公爵らの前に置く。それを見つめつつ、公爵が話していた。
「国王陛下の国葬の場合、全爵位持ちが集合する。それ以外にも、隣国のイザアワ王国から来られるはずだ。先王の従弟であられるからな」
「爵位って、どれだけの方がお持ちなのですか」
「公爵は4人だ、私を入れてな。そして、公爵相当伯爵位が1人。合計5人だ。それぞれ、紋章を持っているから、分かるようになればすぐに見当がつくことであろう」
「公爵閣下はよく分かるのですが、公爵相当伯爵位とは……」
ルイスが尋ねる。
「ホルリー伯爵だ。国葬儀、即位儀のどちらにも登場するぞ。我々が信仰しているホルリー教の神都である都市を護っている。また、ホルリー教の教祖の末裔でもある」
ちなみに、これらの爵位以外にも、公爵、伯爵、子爵、男爵、準爵が爵位としてある。準爵は敢闘団員となると同時に叙爵されることになっていて、ルイスはまだ授かっていない。また、これら以外にも、騎士団があり、公設の勲爵騎士団、私設の国王騎士団、公爵騎士団、そしてホルリー伯爵警備隊がある。勲爵といっても、実際には勲章を授かったものだけが入れる騎士団だ。また、これらの下に、敢闘団と勇士団がある。
「今回は、これら全員がやってくることになる。それは見ものだぞ。ただ国葬儀であるから、華美衣装ではないだろうがな」
そう言って公爵はスープにスプーンを差し入れた。