第54話
勇士団員向けの国葬の説明などがありつつ、また服装についての諸注意があったりしたが、国葬の期日を迎えた。公爵の家でその当日を迎えると、侍女がやってきてくれる。
「おはようございます、勇士団員様」
「おはよう」
ベッドの中で目覚めると、部屋にある大きな窓から外を眺める。灰色に、さらに黒を半分ほど混ぜたような雷雲が、空一面を覆っていた。
「……雨が降りそうだね」
ベッドから出ると、すぐに侍女が着替えを用意してくれる。ルイスがそれから着替えをしてもらい、再び空を眺めると、今度はホトリ、ホトリと雨が降り始めていたところであった。
「雨が降ってきたか」
「先王陛下は、賢王でございました」
普段は言わないようなことを、侍女が話す。ルイスはそれに耳を傾けつつ、さらに威儀を整えた。
コンコンコンと3回ノックの音がする。
「入ってくれ」
ルイスがその客人に告げると、フルリオだった。公爵はすでに起きていて、まもなく朝食の場へと向かうという伝令役であった。ついでにルイスの様子も見に来たのだろう。
ここに来た時点で、すでにフルリオは準備を整えていた。勇士団員付人として今回の国葬に参加するフルリオは、帽子をかぶらず、全身黒一色である。詰襟の服を着ていると、その顔と相まって学生のように見える。一方のルイスは、ベレー帽のような形の黒の帽子をかぶり、そこに敢闘団員、勇士団員共通の黒のマントを着る。中は団員礼服と呼ばれる、裏地が白、表地が黒の服だ。
「いかがでしょうか、そろそろ……」
フルリオが言うと、ルイスはコクンとうなづく。
「すまないが、案内してくれないか」
「かしこまりました、こちらへ」
侍女に告げると、スッと立ち上がって案内してくれた。