第51話
早馬を飛ばすと、不眠不休で2日でついた。途中、馬を変える時間や、食事の時間を含めてそれである。フルリオが温泉街へと駆け込んできた頃には、ルイスは準備を整えていた。役場において、フルリオはルイスや他のメンバーに対して、受け取った書状や口告人としての役目を果たした。
「相分かった。それではこれから向かうとしよう」
ルイスが執務机の向こう側で座ったままそういうと、周りを見回し、ランゲルスに目を向ける。
「すまないが、居ない間の手続きをしてもらえるかな」
「ええ、いいわよ」
今は、幼馴染同士しかいない。本来ならば怒られるような口調であったとしても、彼らだけは許されていた。
ランゲルスは、ルイスの妻として、ここで名代となり、一定の権限を行使することが認められていた。その権限は、全てが領地内に限られていた。そして女には、他の領地へ行く際の名代となることができなかった。今回、フルリオが行ったのも、それが理由だ。
「では頼む。布告は後で出すことにしよう。1ヶ月後に国葬であったな」
「そうだ。布告から1か月後。今日から数えると28日後だ」
フルリオの言葉に、ならばもう少しゆっくりできるな、とルイスはつぶやいた。今すぐ行くとなると、準備していたかのように取られかねず、後後不利になると踏んだのだ。
「よし」
ルイスは何か決めたようだ。
「1週間後、出発する。僕とあとは随行員としてフルリオの2人でだ。馬をそれまでに準備していてほしい。フルリオの分の2人分だ」
「了解」
シュトールが返事をする。すぐ横にはエルラもいた。この温泉街を作り上げてきたのは、設計士のエルラと建築現場監督として活動しているシュトールである。ゆえに、ルイスはさらに二人に対して話した。
「シュトールとエルラには、別の依頼をしたい」
「なになに?」
エルラがきく。
「今の源泉では、この町全域の湯量が足りなくなる。現に、今のままの拡張計画では、どうにも足りなくなるという予想があっただろ。それを回避するために、新しい源泉を探してほしい。国葬儀とおそらく即位儀をまとめてするだろうから、時間はある」
「了解したよ」
エルラが答え、シュトールがうなづいた。