第49話
朝食を食べ終わる頃、食堂にいた全員にその場で待機するようにという布告が出された。ラウンジや受付などにいた勇士や勇士名代も、全員、食堂に集められた。いよいよ、来るべき時がやってきたのだと、全員が身構えている。フルリオは横にいるエンディケールも、これから初めて体験するということを知って、おそらく食堂の中で一番緊張していた。
食堂の最も前のところに、赤色のマントを翻し、剣を佩用した人がやってくる。口告人と呼ばれる、王命を通知する係の人だ。国王が親任し、最も重要な事項について通知することになる。公爵位を持つような貴族には、各公爵専用の口告人がいるのだが、こういうところでは、まとめて話すことが多い。ちなみに、それぞれの領地にいる勇士団員や敢闘団員への通知は、通知人と呼ばれる者が行う。
「国王陛下より、命が下った。みな、心して聞くがよい」
これは定型文だ。本文は次からだと、エンディケールがこっそりとフルリオに教える。
「国王陛下の命は以下の通りである。すなわち、昨日、乗馬を為されている際、落馬をいたし、本日、崩御為された。よって公爵会議により国王陛下の命を代行することを命じられた。また、勇士団はその団員をして国葬に参列することを命じられた」
死んでいる者がどうやって命ずるのかということは、もはやどうでもいい問題である。国王が崩御されたということは、これ以上ないほどの衝撃だからだ。賢王を失ったダッケンバル王国は、これからどうなるのか。それが最大の問題であった。
そのうえで、さらに口告人は言葉を続ける。
「ゆえに公爵会議より以下の事柄が命じられた。すなわち、国王崩御に伴う国葬を1か月後実施すること。2週間以内に全勇士団員に通知を行うこと。現在名代としてここにいる者については、通知人として指定された勇士団員に通知を行うこと。現在ここにいる勇士団員はそのまま国葬に至るまでこの地にとどまること。勇士団領へと通知については、口告人が指名する通知人によって実施される。その際に領地への通知がある場合は、2日後までに口告人まで申請を行わなければならない。以上。なお、これらの事柄については、全て公爵会議において承認された事項である。これらに対して提案がある者は、公爵会議へ申請を行い、全会議員に対してその意見を述べることができる」
どうやらこれらを言いたかったようで、口告人はそれ以上何も言わず、スタスタと食堂から出て行ってしまった。あとに残されたのは、騒がしくなっている勇士団員だった。




