第4話
武器は10cmぐらいの幅がある幅広剣、それに鎧ともいえないが革製の鎧を着て、それ以外は私服だ。
「これじゃ負けるのもよく分かるわぁ」
誰にも聞こえないようにグチっているのはエルラだ。彼女も同じ出で立ちで、この国がかなり危機的な状況であることは、これだけでも十分理解していた。だが、ここまで来たのだから、逃げる以外には死ぬか勝つしかない。逃げても周りは敵だらけだから結局殺されるだろう。だから、彼らは戦って勝つしかなかった。
そんな状況下で、誰から見ても明らかに楽しそうにしている人がいた。ルイスだ。
「なんで、そんなに楽しそうなの」
げんなりとした声で、ランゲルスが聞く。
「だって、戦争なんだから。楽しく行かないと」
「その心境、よく分かんねーなー」
シュトールがエルラの後ろから声をかける。
「暴れたい年頃なんだろ」
クリスがシュトールの横からみんなに言う。
「静かにっ」
進撃の足が止まる。同時に、話声も聞こえなくなり、風の音だけが騒がしくなった。
谷のようなところだ。向こうとこちらの高さは同じ。ゆるい斜面を下ると、そこは枯れた川になっている。木もまばらだし、遮る物は何もないに等しい。対岸の峰には、こちらに狙いを定めている弓兵や、突撃をしようとしている歩兵がいる。
その中でも、ひときわ目立つ甲冑姿が見えた。馬上の彼が向こうの指揮官だろう。ルイスは、そこまで見抜いていた。
「突撃!」
マウンダイス公爵が剣によって突撃を命ずると、鬨の声を上げつつ一斉に斜面を下りだした。それは、対岸も同様で、あたりは砂埃が立ち込める。敵と味方なのか、かろうじて服装で判断できる程度だ。
まずは弓兵がこちらに弓を放ってくる。先頭にいた何人かは、かわすこともできずにそのまま射ち抜かれて絶命する。生き延びた兵も、後ろから押し寄せる人の波にもまれ、圧死した。
そして、肉体と肉体がまじりあう瞬間がやってきた。その時も、風は吹き続けていた。ひときわ激しい風が吹き、砂埃は吹き飛ばされた。その瞬間を、ルイスは見逃さなかった。
「あそこだなっ」
歯を食いしばり、目の前の敵の首を刎ね飛ばしてから、駆けだそうとする。
「邪魔だっ」
ルイスの後を追って、他の4人も追いかけていった。ルイスが開けた通路はすぐに閉じようとしていたが、そのわずかな時間で駆け抜けていった。